【必見】心リハ指導士が教える ATの判別法:CPXにおける実践ガイド

CPX
こ~だい
こ~だい

CPXし始めたけどATの判定に自信がないな・・・

ゆ~き
ゆ~き

なら今回は初心者でも簡単!ATの判別方法について解説するね。

こ~だい
こ~だい

本当に?助かります!

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はじめに

嫌気性代謝閾値(AT)とは

嫌気性代謝閾値は、有酸素代謝から無酸素代謝に移行する直前の運動強度のことを指します。

英語では Anaerobic Threshold (AT)、Ventilatory Threshold (VT)、Lactate Threshold (LT) などと表され、日本語では嫌気性代謝閾値、換気閾値、乳酸閾値など、さまざまな呼ばれ方をします。

ここでは一般的な呼び方である「嫌気性代謝閾値(AT)」として表記します。

心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインから見ても、臨床現場において「運動処方」「安全な運動強度設定」「予後評価」の観点からAT判定の意義が高くなっていることがわかります。ATは心疾患患者の運動処方においてとても重要な値となっているため、適切に判定する必要があります。

AT・CPXの基礎知識

ATの生理的意義

運動時のエネルギー代謝として、通常、酸素供給が十分な環境下(有酸素運動)においては、解糖系にてグルコースから産生されたピルビン酸はアセチルCoAとなり、これがTCA回路から電子伝達系を経由してH2OとCO2に分解され、ATPが産生されます。

運動強度が高くなると、有気的代謝のみではエネルギー源であるATPの産生が不十分になります。すると筋肉内の解糖系が亢進し、無気的代謝(嫌気性代謝)によるエネルギーが加わります。

この時、ピルビン酸の代謝産物として乳酸が産生されます。産生された乳酸は血液中の重炭酸イオン(HCO3-)によって緩衝され、その結果として過剰なCO2(二酸化炭素)が発生します。

ゆえに、この「有気的代謝に無気的代謝(嫌気性代謝)が加わる直前の運動強度」をATと定義されています。

CPXにおけるATの位置づけ

ATは、健常者のみならず心疾患患者さんの運動耐容能や生命予後の指標として重要です。

運動処方を提案する際には、ATの心拍数やMETsなどを指標にすることで安全かつ効果的な運動療法を提供することができます。そのため、ATの定量的評価は、生命予後の判定のみならず治療戦略の立案やリハビリ効果判定に不可欠となっています。

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AT判定法

主要な判定基準

ガス分析法によるAT決定には、以下のような判定基準が一般的に用いられています。

  1. VCO2に対するVO2の上昇点
  2. VO2に対するVEの上昇点
  3. 運動強度に対するR(ガス交換点)の上昇点
  4. VE/VCO2は増加しないがVE/VO2は増加する点
  5. PETCO2は増加しないがPETO2は増加する点

1.における判定基準を「V-slope法といい、これら項目を複合的に指標を把握して各項目の経過からATを判定する方法を「Trend法といいます。

メカニズムとしては、乳酸の緩衝によりCO2が過剰に産生されると、それを排出しようとして換気が亢進(Hyperventilation)するため、VEやVCO2の挙動からATを判定することができます。

運動耐容能が極端に低い患者さんや、呼吸パターンの乱れがある場合はATを判定できないことがあります。特に心不全患者に見られるocscillatory ventilation(周期性呼吸)と呼ばれる、運動中に換気量が波打つように変動する異常な呼吸パターンが出現した場合は、AT決定が困難になることがあります。

臨床応用 — 心臓リハビリテーションにおけるATの活用

運動処方・心リハプログラム設計への応用

心リハの運動療法において運動処方をする際は、「FITT」をもとに行う。

  • F:Frequency、頻度
  • I:Intensty、強度
  • T:Time、時間
  • T:Type、種類

ATを活用する方法について解説するので、「T:種類」を自転車エルゴメーターとして「I:強度」に関して進めていきます。

運動負荷試験に基づく運動処方決定の方法として、ATレベルでの処方が推奨されます。 ATレベルの運動強度は、持続的な運動が可能な強度であり、進行的な代謝性アシドーシス(血液が酸性に傾くこと)が伴わないため、安全性が担保された強度とされています。

さらにガイドラインにおいても、中等度持久性トレーニング(ATレベル)「推奨クラスⅠ」かつ「エビデンスレベルA」とされているため、最も重視すべき指標です。

AT処方のメリット

AT以下の運動では以下の特徴があり、医学的安全性が高いことがわかります。

  1. 乳酸の持続的上昇がない
  2. アシドーシスが起こらない
  3. 血中カテコラミンの著明な上昇がない
  4. 運動強度の増加に対する心拍応答が保たれている

これらにより、不整脈の誘発、著明な頻脈への移行、過度な血圧上昇による循環機能の破綻を防ぐことができます。

具体的な処方指標

運動処方する際に指標とすべき数値としては、以下があります。

  1. AT HR(心拍数)
  2. AT 1分前のWatts(仕事率)
  3. AT METs

不整脈などで心拍応答が不正確な場合を除き、基本的には「① AT HR」を基準として運動処方することが多いです。また、生理学的な反応の遅れ(Lag)を考慮し、負荷量としては「② ATの1分前のワット数」を採用することも実践的です。

予後評価・リスク層別化へのインプリケーション

ATは、Peak VO2と並び生命予後(死亡率や心血管イベント発生率)の強力な予測因子として知られています。Gittらは、ATが11 ml/kg/min未満の場合、死亡や心イベント発生率が有意に高くなることを示しました。AT単独、または換気効率(VE vs VCO2 Slope)との組み合わせによるリスク層別化は、多変量調整後でも強力な予後評価ことも示しています。

したがって、「ATが低値であればあるほど、予後が不良である可能性が高い」とされており、「早期死亡リスクも非常に高くなる」ことが示唆されています。

そのためATが心疾患患者の運動耐容能や生命予後の層別化に有用であるとし、日常的な臨床現場でも積極的な利用が薦められています。

注意すべき点・限界

ATは1回測定で決定される点ですが、患者の状態(体調・服薬・合併症)によって変動しますので定期的な再測定が望まれます。

測定機器・プロトコール・マスク漏れ・被験者協力度など物理的・技術的な影響を受けやすいため、測定条件の統一とデータの信頼性確保が不可欠となります。

非CPX施設・高齢・重症例ではAT以外の代替指標(例:トークテスト、Borgスケール、簡易心拍数法)を併用することも検討されます。

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さいごに

最後までご覧いただきありがとうございます。

AT判定は心リハ・理学療法において「運動処方×安全性×予後改善」を支える重要なキーです。 呼気ガス分析による精緻な判定が可能であれば、より個別化された効率的な運動療法設計ができるようになります。

ただし、「測定体制」「被検者の協力」「正確なデータ解釈」「継続支援体制」がそろって初めてその価値を発揮します。 実臨床において、各施設・各チームでAT判定を“測るだけ”から“活かす”段階へ移行していくことが、今後の心リハの質向上に繋がるといえます。

今回、主に参考にした図書は、「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」と、安達仁先生著の「CPX・運動療法ハンドブック」です。

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今回の解説で、ATの判定基準がより深く理解できれば幸いです。

参考文献

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