
CPXって患者さんを限界まで追い込むよね? 正直、途中で倒れたりしないか毎回ドキドキするよね…。

その『怖がる感覚』はすごく大事だよ! でも、実はCPXの事故率は極めて低いことがデータで証明されているんだ。
今回は、漠然とした不安を解消するために、具体的な「事故率」と「もしもの時の対応」について解説するね!
はじめに
心肺運動負荷試験(CPX)は、患者さんに最大努力(All-out)を求める検査ですが、「適切に管理すれば極めて安全な検査」として知られています。とはいえ、万が一のリスクはゼロではありません。
今回は、関連文献や「CPX・運動療法ハンドブック」に基づき、具体的な事故発生率(エビデンス)と、緊急時のタイムラインについて整理しました。
CPXの危険性と事故率
結論から言うと、重篤なイベント発生率は極めて低いです。死亡率は0.01 ~ 0.1%程度と報告されており、一般的な運動療法のリスクと比較しても高いわけではありません。
実際の事故発生率
以下は、大規模調査に基づくイベント発症率の目安です。
| イベント | 発症率(推定/1000試験) | 主な関連因子 |
|---|---|---|
| 死亡 | 0.1-1.0 | 重症心不全、不安定虚血 |
| 除細動器使用(VF/VT) | 0.5-2.0 | 基礎不整脈、心筋虚血 |
| 心筋梗塞 | 0.3-1.0 | 冠動脈狭窄、多血管病変 |
| 冠動脈血栓閉塞 | <0.5 | 急性冠症候群既往 |
| その他 (持続性不整脈/心不全増悪) | 1.0-5.0 | 低EF、高負荷時 |
数値を見ると、1000回実施しても死亡事故は「最大で1件あるかないか」です。
つまり、「事前にリスクの高い患者さんを除外(スクリーニング)」し、「適切な監視」を行えば、過度に恐れる必要はありません。
なぜ安全なのか?
CPXが安全な理由は、以下の「2重のロック」がかかっているからです。
モニタリング体制
- リアルタイム監視:心電図・血圧・SpO2を常時監視し、ST変化や不整脈を瞬時に検知します。
- 自覚症状の数値化:Borgスケールや「もう無理」という合図で、生理的限界の手前で止めることができます。
実施基準
不安定狭心症や重症心不全など、リスクの高い患者さんは「禁忌」として事前に除外されます。また、いきなり高負荷をかけず、リスク分類(低・中・高)に合わせて負荷を徐々に上げる(ランプ負荷など)ため、急変リスクを抑えられます。
以下の記事で禁忌やプロトコールについて解説してますので、よかったらご覧ください。
👉 CPXの基礎(禁忌やプロトコール)はこちら:
発生頻度の背景

これらの率は大規模コホート研究に基づき、監視体制の整った施設で見られます。心不全患者の試験では非致死的イベントが主で、死亡は予期せぬ心停止によるものが大半となっています。
| 主なリスク |
|---|
| 1.心筋虚血や心筋梗塞の誘発 運動負荷で酸素需要が増大し、冠動脈狭窄患者で発生しやすい。 |
| 2.不整脈(特に心室性) 高負荷時に頻発し、持続性の場合重篤化する可能性あり。 |
| 3.急性心不全や低血圧 左室機能低下患者で血圧低下や肺水腫を起こす。 |
【マニュアル】緊急時対応と安全管理
万が一、検査中に心停止や意識消失が起きた場合、「最初の10分」が勝負です。
CPXの緊急時対応

CPX施行中の急変時(心停止、不整脈、急性心不全など)の救命処置は、BLS(基本的心肺蘇生法)とACLS(高度心肺蘇生法)を基盤とした迅速な対応が求められます。
チームで役割分担し、原因特定と同時処置を実施します。日本循環器学会や日本蘇生協議会のガイドラインに基づき、監視機器を活用した早期介入が標準です。
- 0-1分初動対応
- 即時中止:運動を止め患者を仰臥位にし「反応確認」「呼吸・脈確認」
- 心停止疑い時:胸骨圧迫(100-120回/分、深さ5-6cm)を開始し、AED準備
- 不整脈時:ECG確認後、脱水・低酸素除外し、酸素投与・血圧測定
- 1-10分ACLSプロトコル
- 気道確保:バッグバルブマスク換気、必要時気管挿管
- 電気的除細動:VF/VTでAED/デフィブリレータ(200J初回、双相)
- 薬剤投与:アドレナリン1mg静注(3-5分毎)、アミオダロン300mg(不応性不整脈)
また、「CPX・運動療法ハンドブック」は、緊急時の対応として以下の内容を示しています。
緊急時に備え、検査室のレイアウトはスタッフの動線や患者の搬送を考慮し、負荷装置の数編には緊急処置のできるスペースを確保する
CPX・運動療法ハンドブック 改訂5版 心臓リハビリテーションのリアルワールドより引用
現場での備え(安達先生のハンドブックより)
「CPX・運動療法ハンドブック」では、以下の準備が推奨されています。
🚨 緊急時への備え
- レイアウト: 患者搬送の動線を確保し、負荷装置の周りに救急処置スペースを空けておく。
- シミュレーション: 「誰が心マをするか」「誰が人を呼ぶか」など、定期的にスタッフ間で訓練を行う。
- 機器チェック: 除細動器や薬剤の期限を定期確認する。
「胸が痛くなったり、変な感じがしたら、我慢せずにすぐに教えてください」
と事前に伝えておくことが、早期発見の最大のリスク管理になります。
さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回は、主にCPXの危険性や、安全性、緊急時の対応について解説しました。
CPXは「患者さんを追い込む」検査ですが、それは「安全のネットが張られている」からこそできることです。客観的な事故率の低さを知りつつ、慢心せずに「もしも」の準備をしておく。この両輪が揃って初めて、プロの検査と言えます。
ぜひ、施設内でのシミュレーションや安全確認に、この記事を役立ててくださいね!
参考文献
- 安達 仁, 他. CPX・運動療法ハンドブック 改訂5版 心臓リハビリテーションのリアルワールド, 中外医学社, p36ー38, 2023.
- Keteyian SJ, et al. HF-ACTION Investigators. Safety of symptom-limited cardiopulmonary exercise testing in patients with chronic heart failure due to severe left ventricular systolic dysfunction. Am Heart J. 2009 Oct;158(4 Suppl):S72-7.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2762951/
- Forman DE, et al. Cardiopulmonary exercise testing: relevant but underused. Postgrad Med. 2010 Nov;122(6):68-86. doi: 10.3810/pgm.2010.11.2225.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9445315/
- Keteyian SJ, et al. HF-ACTION Investigators. Variables Measured During Cardiopulmonary Exercise Testing as Predictors of Mortality in Chronic Systolic Heart Failure. J Am Coll Cardiol. 2016 Feb 23;67(7):780-9.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4761107/
- Niu S, et al. Predictive value of cardiopulmonary fitness parameters in the prognosis of patients with acute coronary syndrome after percutaneous coronary intervention. J Int Med Res. 2020 Aug;48(8):300060520949081.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7450457/
- Kroesen, SH. et al. Comparison of Cardiopulmonary Exercise Test Variables to Predict Adverse Events in Patients with Heart Failure. Medicine & Science in Sports & Exercise 56(12):p 2394-2403, December 2024.



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