【保存版】心リハ指導士が教える心不全の呼吸困難感のメカニズムとは?

基礎知識
ゆ~き
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今回は心不全の呼吸困難感についてメカニズムについて網羅的に解説していきます。

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はじめに

心不全における呼吸困難感(息切れ)は、労作時の過度な換気増大となって症状に現れる、一般的かつ重度の症状です。この症状の根底には、心臓ポンプ機能の低下に起因する複雑な病態生理学的メカニズムが存在します。

今回は、心不全の呼吸困難感の主な要因と機序を以下に解説したいと思います。

心不全の呼吸困難感の概要

心不全による呼吸困難感は、まるで「詰まったスポンジ(肺)を、効率の悪いポンプ(心臓)で循環させているために、無理に速く呼吸しなければならない状態」に例えられます。

心臓のポンプ機能が弱いために肺に水が溜まり(うっ血)、肺が硬くなる(コンプライアンス低下)。その結果、必要な酸素を取り込み、CO2を排出するために、浅く速い呼吸(換気効率の悪い呼吸パターン)を強いられることが、息苦しさの主な感覚を引き起こします。さらに、運動時に筋肉が酸欠になりやすく(代謝性アシドーシス)、これも呼吸ドライブを加速させます。

心不全の呼吸困難感の要因として主に①心肺・血行動態的要因②換気異常と呼吸パターン③神経・代謝的要因の3つが考えられます。それぞれ解説していきたいと思います。

心肺・血行動態的要因

肺うっ血とJ受容器の刺激

心不全の症状として、左房圧の上昇による肺うっ血が労作時の息切れを引き起こします。

特に、左室充満圧が増加し、その結果として肺毛細管楔入圧(PCWP)が上昇すると、肺間質液が貯留します。これにより肺コンプライアンスが低下し、求心性の迷走神経末端に位置する傍毛細管受容器(J受容器、J-receptors)が刺激されます。この刺激は頻呼吸や息切れを誘発すると考えられています。J受容器は心不全によって興奮し、神経性の呼吸出力を高め、呼吸困難感の強度を増大させるといわれています。

拡張障害とPCWP上昇

左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を含む心不全患者で拡張障害(拡張不全)がある場合、運動時の伸展能が低下すると、左室拡張末期圧が急速に上昇し、PCWPが上昇します。その結果、換気の異常が惹起され、息切れが生じます。

換気異常と呼吸パターン

慢性期で状態が安定した心不全の場合、労作時の心ポンプ機能低下から引き起こされる換気血流不均衡換気異常が主たる要因であるといわれています。

換気血流不均衡と死腔の増大

心不全患者において、労作時の過度な分時換気量(VE)の増大は、換気血流不均衡から生じる死腔の増大を伴います。 運動生理学的に、VEを増加させている主な要因は死腔換気量(VD)であり、これは心不全における換気血流不均衡の増加と運動中のVDの増大により、二酸化炭素排泄量に対するVEが増加します(換気効率の悪化)。この換気効率の悪さは、換気ドライブ増大(呼吸困難や息切れ)の主要因とされています。

肺コンプライアンスと浅速呼吸

運動中の肺毛細管圧の上昇や肺胞壁・間質の浮腫などは、肺コンプライアンスの低下を招き、一回換気量(VT)の増加を妨げます。そのため、VEを増加させるために呼吸数(fR)が増加するという、「浅く速い呼吸」のパターンとなり、解剖学的死腔に起因するVDが増加します。

気道抵抗の上昇

慢性的な肺静脈圧の上昇による肺血管障害と、気管支の過反応は、気道抵抗の上昇を引き起こしてしまいます。その結果、息切れが生じます。

神経・代謝的要因

化学受容器の機能亢進

末梢化学受容器(頸動脈小体など)は低酸素(Hypoxia)を感知し、中枢化学受容器は二酸化炭素(CO2)の変化(高炭酸ガス血症)を感知します。これらの刺激は、神経性の呼吸出力を興奮させ、換気量を増やし、呼吸困難の強度を増大させます。

代謝性アシドーシス

心不全患者は負荷量が低くても相対的な酸素不足のため嫌気性代謝が亢進し、乳酸が過剰に産生されることで代謝性アシドーシスが発生しやすいです。重炭酸イオンによる緩衝の結果、二酸化炭素が増加し、換気が増大します。これも慢性心不全患者の運動時の呼吸困難につながる要因の一つです。

骨格筋・呼吸筋の機能異常

心不全患者には、骨格筋量の減少や組織の変化、末梢血管の拡張反応の低下、神経体液性因子の異常が認められ、これらが総合的に運動耐容能低下を招いています。

さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。

心不全の呼吸困難感には心肺機能の問題のみならず、換気異常・呼吸パターンや、神経・代謝機能の要因も強く関係していることが分かったかと思われます。これら病態を理解して安全かつ効果的な心臓リハビリを提供できるようにしていきたいですね。

明日の心臓リハビリに活用することができるのであれば幸いです。

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参考文献

  • 牧田 茂 : 心不全の息切れの機序とそれに対するリハビリテーション, The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine, 54(12), 947-951, 2017.
  • Isato FUKUSHI、Yasumasa OKADA : Mechanism of dyspnea sensation: A comprehensive review for better practice of pulmonary rehabilitation, ournal of Rehabilitation Neurosciences, 19(1), 22-32, 2019.
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