
今回は、心リハ指導士試験の必須問題である「CPX(心肺運動負荷試験)」について、【前編】として基礎知識(適応・禁忌・プロトコール)を解説します!
例題付きなので、ぜひ最後までご覧ください!
はじめに
心肺運動負荷試験(CPX)は、心リハ指導士試験の最重要項目です。
目的や適応はもちろん、実施の流れや数値の意味など覚えるべき事項は多岐にわたります。 そこで今回は、CPXについて「前編:基礎・実施編」と「後編:データ解読編」の2回に分けて、試験に必要な部分を抽出して解説します。
主に参考にした図書は、「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」と、安達仁先生著の「CPX・運動療法ハンドブック」です。
また他の参考書に手を出すよりも、この「必携」を徹底的に読み込むことが合格への近道です。
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心肺運動負荷試験(CPX)とは?
CPXの全体像や実施の流れについては以前の記事でも解説していますので、基礎から復習したい方はご参照ください。
投稿記事の一部を以下に解説したいと思います。
運動負荷試験の実際|試験室の要件
意外と見落としがちですが、運動負荷試験室の「環境要件」も試験に出ることがあります。
心肺運動負荷試験を行う検査室は、採光が十分で清潔かつ換気がよく、温度は25℃前後、湿度は60%程度が望ましい。部屋の広さは最低4m×4m程度で、下肢挙上可能なベッド、データ処理用の机が必要である。
-指導士認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携 増補改訂版より引用
「4m×4m」「25℃前後」という数字は、選択肢のひっかけで出ることがあるので覚えておきましょう。
運動負荷試験の適応と禁忌
運動負荷試験には、CPXだけでなく「6分間歩行テスト」なども含まれます。
原則として、200m程度の歩行が可能な運動耐容能を有している場合は、運動負荷試験が可能です。
運動負荷試験全般に該当する禁忌についても簡単に解説します。
| 絶対禁忌 |
|---|
| ・急性心筋梗塞:発症3日以内 ・不安定狭心症 ・症候性のコントロール不良の不整脈 ・症候性重症大動脈弁狭窄症 ・コントロール不良の症候性心不全 ・急性肺塞栓・肺梗塞 ・運動機能に影響を及ぼすか、増悪の恐れがある急性の非心臓性疾患 (例:感染症、腎不全、運動器疾患) ・急性心筋炎・心膜炎 ・適正な試験の実施を妨げる身体障害 ・下肢の血栓症 |
| 相対禁忌 |
|---|
| ・左冠動脈主幹部の狭窄 ・中等度狭窄性弁膜症、無症候性大動脈弁狭窄症 ・電解質異常 ・著明な高血圧・肺高血圧 ・頻脈性不整脈・徐脈性不整脈 ・肥大型心筋症 ・試験協力不能を招く精神的障害 ・高度房室ブロック |
※「左冠動脈主幹部(LMT)狭窄」が相対禁忌である点は、よく狙われるポイントです(絶対禁忌と間違えやすいため)。
CPXの目的・適応
CPXが用いられる目的として以下が挙げられます。
- 運動耐容能の評価
- 労作時呼吸困難や動悸などの鑑別診断
- 心血管疾患の評価
- 呼吸器疾患の評価
- 術前や肺、心移植のための評価
- 運動処方(ATレベルの決定)
- 治療効果の判定
CPXの実施時期に関しては主治医と相談しながら決定しますが、おおよそ時期の目安が決まっています。以下に虚血性心疾患に関するCPXの実施時期の目安についてまとめておきます。
| 実施時期の目安(虚血性心疾患) |
|---|
| ・心筋梗塞後 4~6日目: 準最大負荷検査 ・心筋梗塞後 14~21日目: 症状限定検査 ・術後: 7~10日目以降 ・外来心リハ: 治療経過に合わせて定期評価 |
CPXの運動負荷プロトコール
CPXを行うにあたってどのような運動負荷で行うかになります。
運動負荷プロトコールには
- 一段階負荷試験:一定の負荷をかけ続ける
- 多段階漸増負荷試験:階段状に負荷を上げる。虚血(狭心症)の誘発に適している。
- ramp負荷試験(直線的漸増負荷法)
の3つがありますが、基本的にはramp負荷試験が用いられます。
多段階漸増負荷試験は虚血誘発目的で行われることがあります。
ramp負荷試験
自転車エルゴメーターを使用して、1分ごとに10~20W程度(患者の体力に合わせて設定)のペースで、滑らかに負荷を増加させる方法です。
※アスリートなどでは30-40W/分で行うこともありますが、心疾患患者では10W/分などの低負荷設定が一般的です。
ramp負荷から得られる指標
【図:換気指標の時系列データ】

【図:9パネル】

疾患の鑑別や運動処方に応用できる指標として以下が挙げられます。
- 最大酸素摂取量(VO2 max)、最高酸素摂取量(Peak VO2)
- 嫌気性代謝閾値(AT)
- 酸素脈(VO2/HR, O2 Pulse)
- VE vs VCO2 slope
- ΔVO2/ΔWR
- 呼吸性代償開始点(RC point)
主にこれら指標が得られます。
例題
問題①
運動負荷試験の絶対禁忌の説明で正しいものを2つ選びなさい。
- 肥大型心筋症またはその他流出路狭窄
- 不安定狭心症
- コントロールされていない症候性心不全
- 重症高血圧
- 高度房室ブロック
●解答
クリックで開閉(詳細を表示)
- b, c.
問題②
心肺運動負荷試験について正しいものを選びなさい。
- VE vs VCO2 slopeは換気効率を反映しており、RC pointで傾きが急峻になる。
- VE/VO2はATで最も大きくなる。
- ramp負荷では運動時間が長くなると最高酸素摂取量が高くなる。
- HRは運動強度ともに上昇するが、VO2/HRは減少する。
- 多段階漸増負荷試験は虚血誘発目的で行われる。
●解答
クリックで開閉(詳細を表示)
- e.
問題③
心肺運動負荷試験について誤っているものはどれか。
- 運動処方を目的とする場合には、ramp負荷を用いるとよい。
- 心肺運動負荷試験では、虚血判定ができる。
- VE vs VC02 slopeが45だったので、換気効率が不良であることが推測される。
- エルゴメーターでは運動強度を定量化できるが、トレッドミルではできない。
- 運動室の室温を20度以上にする。
●解答
クリックで開閉(詳細を表示)
- e.
さいごに
最後までご覧いただきありがとうございました。
今回は【前編】として、CPXの適応や禁忌、プロトコールの基礎知識を解説しました。 特に「絶対禁忌と相対禁忌の違い」や「Ramp負荷と多段階負荷の使い分け」はポイントですので、しっかり整理しておきましょう。
次回の記事では、いよいよ試験の山場である『ATの決定方法』や『9パネルの読み方』を、実践的な例題を使って解説します! 「グラフを見るのが苦手…」という方は必見です!
👉 次回の記事はこちら: 【後編】AT決定・データ解読編へ
今日の学びが明日の臨床の一助になれば幸いです。
参考文献
- 日本心臓リハビリテーション学会(2022).「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版. pp190ー214.
- 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会(2021).「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」.https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.




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