
CPXしてるけど何をみてどう解釈すればいいかわからないな・・・。

確かにみる項目が多くてどこがどう悪いのか中々わかりづらいよね。
今回はCPXの主要指標の解釈と実践について解説していくよ!

助かります~!早速お願いします!
はじめに
心臓リハビリテーションで行う心肺運動負荷試験(CPX / CPET)は、呼吸・循環・代謝・運動系の総合的応答を測定し、運動耐容能を定量化して運動処方や予後評価に用いる検査です。以下では、医学文献に基づいてCPXの主要な測定項目と解釈を整理します。
以前投稿しました記事の続きとなります。もしよろしければ参照ください。
CPXで測定される主要指標の定義と臨床的意義
【図:換気指標の時系列データ】

酸素摂取量 (VO₂)とPeak VO₂
VO₂は単位時間当たりの酸素消費量で、運動負荷の増加とともに上昇します。 Peak VO₂は運動中に達した最高酸素摂取量で、運動耐容能と心機能の指標です。
最高酸素摂取量による心不全重症度(Weber分類など)において、%Peak VO2による区分は以下の通りです。
- 正常: 80%以上
- 軽症: 60%以上 80%未満
- 中等症: 40%以上 60%未満
- 重症: 40%未満
また2015年のレビューでは、%Peak VO₂ < 85%で有意な運動制限とされ、心臓移植適応ではPeak VO2 14mL/kg/min以下(β遮断薬服用下では12 mL/kg/min以下)が重症例の目安と示されています。
嫌気性代謝閾値 (AT)
運動中に有気的代謝に無気的代謝が加わる直前の点をATと呼びます。
V-slope法(VO₂とVCO₂の関係)、VE/VO₂とVE/VCO₂の変化などを組み合わせて判定し、複数の指標が一致した点を採用する方法(Trend法)が推奨されています。
%AT VO2(標準値における実測値の割合)では、40ー80%以上が正常範囲の目安として挙げられています。
換気効率(VE vs VCO2 slope)
分時換気量(VE)と二酸化炭素排出量(VCO2)の関係を表したものが VE vs VCO2 slopeであり、心拍出量や換気能力を強く反映するとともに、換気血流不均衡分布の程度を示します。つまり心不全時の労作時の呼吸困難感を表す指標であるとされています。
この数値は加齢とともに上昇しますが、一般的に30以下は正常とされており、34(または35)以上は予後不良と報告されています。
換気当量(VE/VO2、VE/VCO2・minimum VE/VCO2)
酸素摂取量や二酸化炭素排出量1mL当たりに必要な分時換気量を表しています。換気効率を表す指標であり、解剖学的死腔と生理学的死腔に依存するとされています。
VE/VCO2はVE vs VCO2 slopeと似たような経過を見せますが、VE/VO2はそれと異なりATで最低値を取るとされています。minimum VE/VCO2はVE/VCO2の最低値を表しており、28以下が正常とされています。
酸素脈:O2Pulse(VO2/HR)
酸素摂取量を心拍数で割った値であり、運動時の一回心拍出量の指標です。通常であれば負荷とともに直線的あるいは上に凸のパターンで増加しますが、心不全や重症の心筋虚血がある場合は、平坦化(フラット)がみられます。
最大運動時に標準値の80%以上が正常とされます。
終末呼気二酸化炭素分圧 (PETCO₂)・終末呼気酸素分圧 (PETO₂)
安静時PETCO₂は36〜42mmHgで、運動開始時は指数関数的に増加し、その後プラトーが続きます。 PETCO₂が低値、あるいは運動中に増加しない場合は、換気血流比不均衡や心拍出量の低下を示します。また心拍出量や骨格筋血流の指標でもあります。
maxETCO₂は、運動中に記録されるPETCO₂の最大値を指します。通常はATを越えて呼吸代償期に入る頃の値であり、この時点のPETCO₂は運動中に発揮される肺血流量(=心拍出量)に比例します。
ガス交換比(RER、R)
呼気ガス分析におけるVCO2/VO2の割合で、運動による努力の指標として使用します。
信頼できるPeak VO2値を得るためには、CPX終了時のRERは1.10以上(できれば1.15以上)であることが望ましいとされます。
ΔVO2/ΔWR
運動負荷量1ワット(WR)当たりの酸素消費量の増加量を表す指標となります。
通常は9〜11 mL/min/WRの範囲で、低値または上昇不良は酸素供給障害や虚血を示す可能性があることが知られています。
CPXで測定される主要指標の解釈
1.CPXの換気指標の各項目

Peak VO2、AT、Peak WR(最高負荷量)、Peak O2pulseにおいては基準値に対する実測値の割合(%予測値)で比較することが一般的です。ただし、VE vs VCO2 slopeとminimum VE/VCO2に関しては実測値そのもので評価します。
2.9パネル

9パネルもCPXの主要指標の解釈に活用します。
- 肺機能の評価: パネル1・8
- 運動耐容能の評価: パネル3・5・6・9
- ガス交換効率(換気血流比不均衡)の評価: パネル6・8・9
- 心機能の評価: パネル2・3・5
総合的な解釈

全体的な数値の正常値や評価について解説したので、最後にどのような手順で運動耐容能を評価・解釈するか解説したいと思います。
運動耐容能の評価・解釈
CPXの結果に関する表から%Peakと%ATを見て正常範囲かどうか確認するとともに各数値の大小を比較します。ここでは正常である%Peak≧%ATとなっていますが、場合によっては%Peak<%ATとなっている場合があります。運動耐容能の評価はこの異常を把握するところから始まります。
【手順1】%Peakと%ATの比較
最初に%Peakと%ATを見比べ、正常(%Peak≧%AT)か異常(%Peak<%AT)かを判断します。
【手順2】努力の程度の判断
Peak RER≧1.10以上(できれば1.15以上)なら十分努力したと判断し、Peak RERが低ければ努力不足の可能性を示します。
【手順3】筋力低下か心機能低下かを鑑別
| 1.筋力低下の疑い |
|---|
| ・ΔVO2/ΔWRがAT以降も低下しない(直線のまま) ・Peak WR < 80%(脚力が弱い) ・%Peak VO2/HR(酸素脈)は比較的保たれている |
| 2.心機能低下(狭心症、弁膜症、心不全など)の疑い |
|---|
| ・ΔVO2/ΔWRがAT以降に低下する(フラットになる) ・Peak WR ≧ 80%(脚力はある程度あるが心臓がついてこない) ・%Peak VO2/HR(酸素脈)が低い |
運動療法への応用

運動耐容能・筋力低下
%Peak<%ATかつ%Peak<80%、さらにSPPBや握力測定で筋力低下が確認できる場合は、有酸素運動にレジスタンストレーニングを加えたリハビリを提案します。
換気・心機能低下
VE vs VCO₂ slopeとminimum VE/VCO2高値+TV/RR低値または上昇不良や、心拍応答の急峻化が認められる場合は、換気効率と心機能の両方が低下している可能性が高いので、まず低負荷の筋トレからゆっくりと始め、有酸素運動を段階的に追加するなど、安全かつ効果的なプログラムを紹介します。
さいごに
ここまでご覧いただきありがとうございます。
CPXは心リハビリテーションにおいて、患者の運動能力や循環・呼吸系の状態を客観的に評価し、個別化された運動処方や予後予測に不可欠な検査です。
Peak VO₂やAT、VE vs VCO₂ slopeなどの各指標を総合的に解釈し、患者の背景や薬物療法も考慮して運動プログラムに反映することが重要です。各指標の正常値や異常パターンを理解するとともに、定期的なCPXを通じてリハビリ効果を評価し、二次予防の質を高めていくことが望まれます。
今回、主に参考にした図書は、「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」と、安達仁先生著の「CPX・運動療法ハンドブック」です。
特に、「CPX・運動療法ハンドブック」に関してはCPXについて網羅性が非常に高い良書ですので、CPXを行っている施設のスタッフや、これから学ぶ方はぜひ持っておきたい1冊です。
参考文献
- 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン, 2021.
- Sathish Parasuraman et al.: Healthcare professional’s guide to cardiopulmonary exercise testing, 2015.
- 日本心臓リハビリテーション学会: 「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版, p198-214, 2022.
- 大宮 一人: 心肺運動負荷試験によって得られる指標とその応用について, 2021.
- 安達 仁, 他: CPX・運動療法ハンドブック, 中外医学社, 2023.



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