【後編】徐脈性不整脈のリハビリはどこまで安全?運動中止基準やリスク管理を徹底解説。変時性不全(CI)に対するBorg指数の活用法や、ペースメーカー患者の運動処方など、臨床で迷わないための実践知識まとめ。

前編で「波形の正体」は見極められましたか? まだの方は、まず【前編】心電図波形の見分け方から復習することをおすすめします!
さて、ここからが臨床家の腕の見せ所です。「この徐脈、リハビリしていいの?」 「ペースメーカーが入っているけど、負荷はどこまで上げていい?」
今回は、心リハ指導士試験でも頻出の「リスク管理」と「具体的な運動処方」について解説します。
- 徐脈が危険な理由(アダムス・ストークス発作)
- 試験に絶対出る!「変時性不全(CI)」への運動処方
- 絶対に見逃せない運動療法の中止基準(JCS)
- ペースメーカーの「レートレスポンス機能」とは?
なぜ徐脈がリハビリで危険なのか?
前編で『波形の正体(Wenckebach型やMobitz Ⅱ型)』は見極められましたか?まだの方は、まず【前編】の心電図波形の見分け方から復習することをおすすめします!
👉 前編はこちら:【心リハ指導士試験】徐脈性不整脈(SSS・房室ブロック)の心電図波形の見分け方|基礎から徹底解説
「脈が遅い=リラックスしている」ではありません。心拍数が極端に低下し、心拍出量が維持できなくなると、脳や全身に血液が送れなくなります。
- アダムス・ストークス発作: 脳への血流低下(脳虚血)により、めまい、失神、けいれんなどを引き起こします。リハビリ中の転倒・外傷に直結します。
- 心不全の増悪: 全身に血液が回らず、うっ血(肺や体への水溜まり)が進行します。
リハビリ中の重大な事故を防ぐためにも、次の「リスク管理」は確実に暗記が必要です。理」は暗記が必要です。
心リハ指導士試験で問われる「リスク管理」
徐脈性不整脈のリスク管理で最も重要な判断基準は、「症候性(Symptomatic)」か「無症候性(Asymptomatic)」かです。
無症候性の場合
自覚症状(めまいやふらつき)がなく、ホルター心電図等で長い心停止(Pause)が見られない場合は、厳重な監視下(心電図モニター装着)での運動療法が可能です。
ただし、以下の「変時性不全」への配慮が不可欠となります。
変時性不全(Chronotropic Incompetence: CI)への対応
洞不全症候群(SSS)の患者さんでは、運動をして体に負荷をかけても、それに合わせて心拍数が適切に上がらない「変時性不全(Chronotropic Incompetence: CI)」を合併していることが非常に多いです。
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❌ Karvonen(カルボーネン)法は不適応
心拍数がそもそも上がらないため、予備心拍数(HRR)を用いて計算すると「目標心拍数」が高くなりすぎます。到達しようと無理に負荷をかければ極めて危険です。 -
⭕ Borg指数(自覚的運動強度)の活用
心拍数に依存しない指標として、Borg scale 11~13(楽である~ややきつい)を目安に負荷を設定します。 -
⭕ AT(嫌気性代謝閾値)の活用
CPX(心肺運動負荷試験)が実施可能であれば、ATレベルの「ワット数(仕事量)」を基準にするのが最も安全で確実です。
運動療法の中止基準(JCSガイドライン)
運動中に以下のサインや状態が確認された場合は、直ちにリハビリを中止、または開始を見合わせます。
- 未治療の重篤な徐脈は「禁忌」。
- アダムス・ストークス発作(失神、めまい)の既往や誘発がある場合は、リハビリよりも治療(ペースメーカー植え込み)が最優先。
- 安静時HRが 50 bpm以下の高度徐脈や、運動中に心拍数が低下(上がらないのではなく、逆に落ちる)する場合は、直ちに中止し主治医へ報告する。
ペースメーカー植込み後のリハビリ
SSSや房室ブロックでペースメーカー(PM)が入っている患者さんの注意点です。
レートレスポンス(Rate Response: RR)機能
PMに内蔵されたセンサーが「体の振動」や「呼吸」を感知して、運動時に自動でペーシングレート(心拍数)を上げてくれる機能です。
カルテやPM手帳で、この「RR機能」がONになっているか確認しましょう。OFFのままだと、運動しても脈が上がらず、すぐに息切れして運動耐容能が上がりません。
上限レート(Upper Rate)の理解
PMには「これ以上速くペーシングしない」という上限設定(Upper Tracking Rateなど)があります。
運動中に患者さんの自己心拍(または心房のレート)がこの上限に達すると、PMが安全装置として働き、急激な血圧低下や動悸が出現することがあります(Wenckebach作動など)。
リハビリ前には必ず設定値(例:120bpmなど)を確認し、その手前で負荷をコントロールしましょう。
模擬問題に挑戦!(全2問)
実際の試験を想定した問題です。「解答と解説を見る」をタップして答え合わせをしましょう!
さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。
前後編にわたり、徐脈性不整脈について解説しました。
- 前編: 波形を見分ける(Mobitz II型は危険!)
- 後編: CIがあるならKarvonen法は使わない!
この2つのポイントをしっかり押さえておけば、試験はもちろん、明日からの臨床現場も怖くありません。特に『心拍数が当てにならない時は、Borg指数(自覚症状)やATワット数で管理する』というのは、すぐに使える必須の知識です。ぜひ実践してみてくださいね!
今日の学びが、皆さんの試験合格と明日の臨床の一助になれば幸いです。
急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。
CPXや循環器リハビリ、医療×AIに関する情報など、明日からの臨床の疑問を解決するヒントを日々ポストしています。
ブログ『ゆ~きのリハラボ』の最新の更新情報も発信していますので、ぜひフォローして一緒に学びましょう!
参考文献
- 日本心臓リハビリテーション学会(2022).「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版. p50ー75.
- 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会(2021).「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」.https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.




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