
CPXしてるけど、項目が多すぎて何をどう解釈すればいいかわからないな・・・。

確かに、アルファベットや数字ばかりで、どこが悪いのかパッと見では分かりづらいよね。今回は、「ここだけは押さえておきたい主要指標」の解釈と、臨床での実践的な読み方について解説していくよ!

助かります~!早速お願いします!
- 絶対に押さえるべき「主要指標」とは?
- 9パネルの正しい見方について
- データ解釈の「3ステップ」と臨床への応用
はじめに
心臓リハビリテーションで行う心肺運動負荷試験(CPX / CPET)は、運動耐容能を定量化し、予後を予測するための強力なツールです。しかし、レポートには多くの数値が並び、「結局、この患者さんは何が悪いの?」と迷うことも少なくありません。
本記事では、ガイドラインや専門書に基づき、「主要な測定項目の基準値」と「データを読み解くための3ステップ」を整理しました。この記事をブックマークしておけば、レポート作成時や運動処方の際にすぐに役立ちますよ!
👉 CPXの基礎(禁忌やプロトコール)はこちら:
CPXで測定される主要指標の定義と臨床的意義
【図:換気指標の時系列データ】

運動耐容能の指標(VO2, AT)
VO₂は単位時間当たりの酸素消費量で、運動負荷の増加とともに上昇します。 Peak VO₂は運動中に達した最高酸素摂取量で、運動耐容能と心機能の指標です。
| 指標 | 定義・臨床的意義 | 基準値・重症度目安 |
|---|---|---|
| Peak VO₂ (最高酸素摂取量) | 運動中に達成できた酸素摂取の最大値。 予後予測の最強因子。 | 【%Peak VO₂による分類】 ・正常:≧80% ・軽症:60~79% ・中等症:40~59% ・重症:<40% ※心臓移植検討:14mL/kg/min以下 |
| AT (嫌気性代謝閾値) | 有酸素運動から無酸素運動へ切り替わる転換点。 安全な運動処方の基準となる。 | 【%AT VO₂】 ・正常範囲:40~80% ※基準値に対する実測値の割合 |
V-slope法(VO₂とVCO₂の関係)、VE/VO₂とVE/VCO₂の変化などを組み合わせて判定し、複数の指標が一致した点を採用する方法(Trend法)が推奨されています。
換気効率の指標(息切れの原因)
VE vs VCO2 slopeは、心拍出量や換気能力を強く反映するとともに、換気血流不均衡分布の程度を示します。つまり、心不全時の労作時の呼吸困難感を表す指標であるとされています。
VE/VCO2は、二酸化炭素排出量1mL当たりに必要な分時換気量を表しています。換気効率を表す指標であり、解剖学的死腔と生理学的死腔に依存するとされています。
| 指標 | 定義・臨床的意義 | 基準値・重症度目安 |
|---|---|---|
| VE vs VCO₂ slope | 換気効率や、換気血流不均衡(ミスマッチ)を表す。 心不全の重症度や予後を強く反映する。 | 【予後不良の目安】 ・正常:< 30 ・予後不良:≧ 34(または35) ※加齢とともに上昇します。 |
| minimum VE/VCO₂ | VE/VCO2の最低値。 VE vs VCO2 slopeと同様の動向を示す。 | ・正常:≦ 28 |
心機能・循環の指標
O2 Pulseは、運動時の一回心拍出量の指標です。
通常であれば負荷とともに直線的あるいは上に凸のパターンで増加しますが、心不全や重症の心筋虚血がある場合は、平坦化(フラット)がみられます。
| 指標 | 定義・臨床的意義 | 基準値・重症度目安 |
|---|---|---|
| O₂ Pulse (酸素脈 = VO2/HR) | 1拍あたりの酸素摂取量。 「1回拍出量」を反映する。 ※心虚血で平坦化(フラット)しやすい。 | ・正常:最大運動時に標準値の80%以上 |
| ΔVO₂/ΔWR | 1ワットあたりの酸素摂取量の増加率。 酸素の運搬能力(心ポンプ機能)を見る。 | ・正常:9~11 mL/min/WR ※低値は心不全や虚血を示唆。 |
その他の重要指標
- RER(ガス交換比): 1.10以上(できれば1.15以上)あれば、十分に追い込めた(最大努力)と判断します。
- PETCO₂: 運動中に上昇しない場合は、心拍出量低下や換気血流不均衡を疑います。
安静時PETCO₂は36〜42mmHgで、運動開始時は指数関数的に増加し、その後プラトーが続きます。 PETCO₂が低値、あるいは運動中に増加しない場合は、換気血流比不均衡や心拍出量の低下を示します。また心拍出量や骨格筋血流の指標でもあります。
maxETCO₂は、運動中に記録されるPETCO₂の最大値を指します。通常はATを越えて呼吸代償期に入る頃の値であり、この時点のPETCO₂は運動中に発揮される肺血流量(=心拍出量)に比例します。
CPXで測定される主要指標の解釈
CPXの換気指標の各項目

Peak VO2、AT、Peak WR(最高負荷量)、Peak O2pulseにおいては基準値に対する実測値の割合(%予測値)で比較することが一般的です。ただし、VE vs VCO2 slopeとminimum VE/VCO2に関しては実測値そのもので評価します。
「9パネル」をどう見るか?

CPXの結果用紙にある「9つのグラフ(9パネル)」は、以下の視点でグルーピングすると理解しやすくなります。
- 肺機能の評価: パネル1・8
- 運動耐容能の評価: パネル3・5・6・9
- ガス交換効率(換気血流比不均衡)の評価: パネル6・8・9
- 心機能の評価: パネル2・3・5
実践!データ解釈の「3ステップ」
数値の意味がわかったところで、実際に目の前の患者さんのデータをどう解釈するか、手順を解説します。

【Step 1】 正常か異常か?
まずは、年齢や性別を考慮した標準値(予測値)に対して、どれくらい動けたかを見ます。
- 異常パターン: %Peak < %AT (AT前後で運動が止まってしまった=早期疲労)
- 正常パターン: %Peak ≧ %AT (ATを超えてもしっかり運動できた)
【Step 2】 なぜ運動を止めたのか?
「なぜPeakが低かったのか?」の原因を探ります。RERが1.10以上あがっていれば「十分な努力」があったとみなします。その上で、以下のパターンを鑑別します。
A. 脚が先に疲れた(筋力低下・デコンディショニング)
- ΔVO₂/ΔWR: AT以降も直線的に上昇している(心臓は元気)。
- Peak WR: 予測値の80%未満(脚力が弱い)。
- O₂ Pulse: 保たれている。
B. 心臓が限界だった(心機能低下・虚血)
- ΔVO₂/ΔWR: AT以降に寝てしまう(フラットになる=心拍出が増えない)。
- O₂ Pulse: 頭打ち、または低下する。
- Peak WR: 80%以上ある場合も(脚はあるが心臓がついてこない)。
【Step 3】 運動処方への応用
解釈ができたら、リハビリメニューに落とし込みます。

筋力低下タイプ(A)の場合
- 有酸素運動に加え、レジスタンストレーニングを積極的に取り入れる。
- SPPBや握力も合わせて評価し、サルコペニア対策を行う。
心機能/換気低下タイプ(B)の場合
- VE vs VCO₂ slopeが高値、心拍応答が過敏なケース。
- いきなり高負荷は危険。低負荷の筋トレから始め、有酸素運動はインターバルトレーニングなどを検討し、慎重に進める。
さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回は、ガイドラインや専門書に基づいた「主要な測定項目の基準値」と「データを読み解くための3ステップ」について解説しました。
CPXは「Peak VO2が〇〇だった」という結果だけでなく、「なぜ低かったのか?(心臓のせい?筋肉のせい?)」を突き止めることができる最強の検査です。
数値を総合的に解釈し、患者さんの背景(薬や合併症)も考慮して、オーダーメイドの運動プログラムを作成していきましょう。定期的に評価することで、リハビリの効果(「息切れが減ったのは心機能が良くなったからだ!」など)が目に見えてわかるようになりますよ。
今回、主に参考にした図書は、「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」と、安達仁先生著の「CPX・運動療法ハンドブック」です。
特に安達仁先生のハンドブックは、CPXに関わるスタッフなら「必携のバイブル」です!
さらに詳しく学びたい方へ
概要から適応・実施プロトコールや、ATの決定方法などの実践的な内容は、以下の記事で深掘りして解説しています。ぜひ合わせてご覧ください!
▼AT(嫌気性代謝閾値)の詳しい決定方法はこちら
▼心不全の「息切れ」原因(Ergoreflex)についてはこちら
参考文献
- 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン, 2021.
- Sathish Parasuraman et al.: Healthcare professional’s guide to cardiopulmonary exercise testing, 2015.
- 日本心臓リハビリテーション学会: 「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版, p198-214, 2022.
- 大宮 一人: 心肺運動負荷試験によって得られる指標とその応用について, 2021.
- 安達 仁, 他: CPX・運動療法ハンドブック, 中外医学社, 2023.





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