
心リハ指導士試験を受けるなら、絶対に避けて通れないのが『虚血性心疾患』です。患者数も多く、試験での出題頻度もナンバーワン!まさに本丸と言える分野ですね。
今回は、病態生理から最新の治療ガイドライン、そして具体的な運動処方までを『試験に出るポイント』に絞って解説します。最後に確認問題もあるので、ぜひ力試ししてみてください!
虚血性心疾患とは?(定義と分類)
虚血性心疾患とは、冠動脈の狭窄や閉塞によって心筋への血流が不足し、心筋が壊死したり機能不全に陥る疾患の総称です。
試験に出る!分類の全体像
| 虚血性心疾患の分類 |
|---|
| 1. 急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS) ①急性心筋梗塞(AMI) ②不安定狭心症(UAP) ③心臓突然死 |
| 2. 陳旧性心筋梗塞(old myocardial infarction:OMI) |
| 3. 梗塞後狭心症(post infarct angina:PIA) |
| 4. 労作性狭心症(effort angina pectoris:EAP) |
| 5. 無症候性心筋虚血(silent myocardial ischemia:SMI) |
| 6.冠攣縮性狭心症(coronary spastic angina:CSA) |
ACSの初期対応分類(STEMI vs NSTE-ACS)
救急外来での心電図所見によって、治療方針(カテーテルを急ぐかどうか)が決まります。

| 虚血性心疾患の分類 |
|---|
| 1. STEMI(ST上昇型心筋梗塞) ・持続的なST上昇、または新規の左脚ブロック。 ・緊急PCI(再灌流療法)の絶対適応!(発症12時間以内、来院90分以内が目標) |
| 2.NSTE-ACS(非ST上昇型急性冠症候群) ・ST上昇を認めないもの。 ・心筋トロポニンが上昇していればNSTEMI、なければUAPと診断。 |
治療の選択(PCI vs CABG)
薬物療法でコントロールできない場合、血行再建術が選択されます。
- PCI(経皮的冠動脈形成術): カテーテル治療。低侵襲。
- CABG(冠動脈バイパス術): 外科手術。
ガイドラインでは、以下の場合はPCIよりもCABGが推奨される傾向にあります。
- 左主幹部病変(LMT)
- 多枝病変(3枝病変など)
- 糖尿病合併例
- 心機能低下例
治療概要と合併症への注意
治療概要

初期治療(MONA):
- Morphine(モルヒネなどの鎮痛薬)
- Oxygen(酸素吸入:低酸素血症がある場合)
- Nitrates(硝酸薬:ニトログリセリン)
- Aspirin(アスピリン:抗血小板薬)
再灌流療法:
- PCI(経皮的冠動脈インターベンション): バルーン拡張(percutaneous old balloon angioplasty:POBA)や冠動脈ステント留置術(DES)を行います。来院後90分以内(発症12時間以内)の再灌流が推奨されます。
- 血栓溶解療法(t-PA静脈投与): PCIができない施設や搬送に時間がかかる場合に行われます。
よくみられる合併症と対象法

これら合併症は心筋壊死の程度や部位によってみられます。特に機械的合併症は発症後2~3日以内に生じやすいため、バイタルサインや自覚症状を観察しながらこれら合併症に注意して心臓リハビリを行っていきます。
急性心筋梗塞(AMI)のリハビリ
AMIのリハビリは、時期によって「急性期」「回復期」「維持期」に分かれます。

| AMIのリハビリ |
|---|
| 1.急性期(発症〜退院) ・目的: 早期離床、廃用症候群(deconditioning)の予防、合併症の早期発見。 ・MONA: 初期治療の覚え方(Morphine, Oxygen, Nitrates, Aspirin)。 ・注意点: 発症後2〜3日は機械的合併症(心室中隔穿孔、乳頭筋断裂、心破裂)のリスクが高いため、バイタル変動に厳重注意! |
| 2.回復期(退院〜3ヶ月) ・目的: 運動耐容能の向上、危険因子の管理、社会復帰。 ・運動処方: 心肺運動負荷試験(CPX)を実施し、科学的な運動処方を行います。 |
有酸素運動の処方例

CPXを実施している場合は、AT(嫌気性代謝閾値)の心拍数や、ATの1分前のワット数を基準に負荷量を調整します。
レジスタンストレーニングの処方例

ウエイトマシンやダンベルを使用できない高齢者の場合は、ゴムチューブを使用することで比較的安全に行うことができます。頻度は毎日行わず、日を空けて行うことが望ましいとされています。
狭心症のリハビリ
狭心症・PCI後の運動療法に関して、Hambrechtらの研究(COURAGE試験など)から、「PCI単独よりも、PCI+継続的な運動療法の方が予後改善効果が優れている」ことや、再入院予防効果があることが示されており、非常に有効性が高いです。
有酸素運動の処方例
有酸素運動の具体的なプログラムを紹介しましたが、レジスタンストレーニングも同様の運動強度を指標に実施していきます。

日本心臓リハビリテーション学会によると、低心機能、心不全症状、低運動閾値、高度残存虚血などを有する例では、監視下の運動プログラム実施が望ましいとされています。
虚血性心疾患に対するリハビリの効果
ここも試験頻出です。「何が改善して、何が変わらないか」を整理しましょう。
- 冠危険因子の改善: 脂質異常症、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙率の低下。
- 運動耐容能の向上: 最高酸素摂取量(Peak VO2)の増加。
- 冠循環の改善: 血管内皮機能の改善、側副血行路の発達。
- 自律神経機能の改善: 交感神経の抑制、副交感神経の亢進(心拍変動の改善)。
- 予後の改善: 心血管死の減少、再入院の抑制。
※注意:かつては「動脈硬化そのもの(狭窄度)は改善しない」と言われていましたが、近年は積極的な脂質管理と運動によりプラークの退縮(退化)も期待できるとされています。
理解度チェック!例題
実際の試験を想定した問題です。解説までしっかり読んで知識を定着させましょう。
問題①
虚血性心疾患の治療において誤っているものを2つ選びなさい。
- 長期予後改善として、冠動脈新規病変出現の抑制、不安定プラークマネジメントが重要である
- 狭心症に対して継続的な運動療法よりPCIの方が予後改善効果は高い。
- 再狭窄を繰り返すものに対してはPCIを施行する。
- 一般的治療として、静脈路の確保、酸素投与、ニトログリセリンの舌下、鎮痛剤投与などがある。
- 心電図上、NSTEMIと不安定狭心症の鑑別は困難なためトロポニンT上昇の有無で鑑別する。
●解答
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- b, c.
問題②
虚血性心疾患への心リハ効果について誤っているものを選びなさい。
- 血小板凝集能や血液凝固能の促進がある。
- 主に冠動脈硬化・冠循環、冠危険因子、自律神経機能に及ぼす効果の3つがある。
- 減量に関する効果はないとされている。
- 心臓交感神経機能の低下や心臓副交感神経機能の亢進がある。
- 冠動脈内皮機能障害の改善や、冠微小循環の改善が得られる。
●解答
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- c.
問題③
心筋梗塞の合併症とその対応について誤っているものを選びなさい。
- 持続性心室頻拍-アミオダロン静脈投与
- 心室中隔穿孔-パッチ閉鎖術
- 完全房室ブロック-永続ペーシング
- 右室梗塞-十分な捕液と強心薬投与
- 乳頭筋断裂-僧房弁形成術
●解答
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- c.
問題④
心筋梗塞の治療について正しいものを2つ選びなさい。
- 一般的治療として酸素投与、静脈路の確保、ニトログリセリンの舌下投与、塩酸モルヒネなどの鎮痛薬投与、アスピリンの咀嚼服用がある。
- 発症90時間以内のSTEMIでは、PCIが適応とされている。
- 来院後120分以内に冠血流を再開することが望ましいとされる。
- PCIが速やかに行えない場合は、t-PA静脈投与による血栓溶解療法を行うことがある。
- STEMIの心電図では持続的ST低下と新規左脚ブロックを示すものが含まれる。
●解答
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- a, d.
さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回は、心リハ指導士の試験対策として虚血性心疾患の病態から診断方法、そして心リハにおける運動処方まで解説しました。
虚血性心疾患は、病態(ACSか安定狭心症か)、治療法(PCIかCABGか)、そして合併症リスクを総合的に判断してリハビリを進める必要があります。
試験では「右室梗塞に利尿薬はNG」「安定狭心症にはPCIより運動療法」といった、少し引っ掛けのような知識も問われます。今回の記事で整理したポイントを、ぜひ「必携」と照らし合わせながら復習してみてください!
参考文献
- 日本心臓リハビリテーション学会(2022).「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版. pp76-91, 244-246, 267-273.
- 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会(2021).「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」.https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.


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