【保存版】心リハにおける身体機能評価について解説

基礎知識
ゆ~き
ゆ~き

今回は、心リハにおける標準的な身体機能評価について解説していきます。

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はじめに

身体機能評価」は、単に筋力や歩行距離を測るだけでなく、患者の能力・社会参加(社会復帰)・運動継続・QOL向上を支える重要な手段です。 特に心臓リハビリテーション(心リハ)では、循環器疾患による運動制限・筋力低下・バランス障害が予後や活動制限に直結するため、体系的な評価が求められます。

本稿では、まず評価の概要・方法を整理し、次にエビデンスをもとに“なぜ評価が必要か”を解説します。

身体機能評価の概要・方法

身体計測

身体測定は、体格・筋量・脂肪率など基礎となる身体構成を把握する目的で測定します。筋量低下は運動耐容能・予後低下のリスクを示す指標となるため、筋力評価の前提として必須となります。

心疾患患者さんにおける体重、特にBody Mass IndexBMI)は、予後との関連が指摘されています。心不全患者さんにおいては、「obesity paradox(肥満のパラドックス)」といって、痩せている人よりも、軽度肥満者(体重が多い人)の方が予後が良いことが示されています。

他にも上腕や下腿の周囲長は、簡便な骨格筋の評価指標として、筋肉量や予後との関連が示されています。

骨格筋量では、慢性心不全患者の約20%で減少(サルコペニア)が認められており、それが運動機能の低下や生命予後に影響を及ぼすといわれています。

  • 身長
  • 体重
  • BMI(体格指数)
    • BMI=体重/身長2(kg/m2
  • 体脂肪率
  • 骨格筋量:生体電気インピーダンス分析(BIA)

骨格筋量や体脂肪率は、「InBody(インボディ)」などで測定するのが一般的です。InBodyに関しては株式会社インボディ・ジャパンのYouTubeに測定方法などの解説がありますので、そちらもご参照ください。

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筋力検査

筋力検査は、上肢・下肢の筋力を簡便・定量的に把握する目的で測定します。

握力

臨床的意義

複数の研究で、握力や膝伸展筋力が運動耐容能・再入院リスクと関連することが示されています。 心臓外科術後3か月後の患者さんでは、「握力が低い患者群ほどPeak VO₂も低い」という報告もあるため、初回および最終評価において測定する意義は大きいです。 また、心不全を有した症例では、握力および6分間歩行試験(6MWD)が共に低値の場合、心臓関連イベントのリスクが4倍高かったことが示されています。

臨床現場では、サルコペニアの診断基準AWGS 2019)に基づき、以下の数値を筋力低下の目安とします。

  • 女性:18kg未満
  • 男性:28kg未満
測定方法

測定回数は左右2回ずつ行い、それぞれの最大値を採用します。

ジャマ―型油圧握力計(国際基準)
・端座位
・肩内転0°・内外旋中間位、肘90°屈曲位、前腕回内外中間位、手関節背屈0-30°・尺屈0-15°
・握り幅は第2指のMP関節(中手指節関節)が直角になるように調整し、3秒間最大努力で握ります。
スメドレー型(日本で一般的)
・立位(または端坐位)
・肘伸展位、腕を体側に自然に垂らして測定します
(※施設によってプロトコールが異なりますが、統一することが重要です)。

等尺性膝伸展筋力

臨床的意義

等尺性膝伸展筋力は、歩行速度や歩行自立度、歩幅など、下肢の支持性を示す重要な指標です。

心疾患患者における膝伸展筋力は、運動耐容能や予後を評価するための重要な指標であり、特に心不全患者の骨格筋評価における位置づけは非常に重要とされています。高齢の心血管疾患患者では、入院期の心臓リハの到達目標である「4METs相当の運動耐容能」まで改善するために、等尺性膝伸展筋力が 0.51kgf/kg(体重比約50%)必要であるという目標値が報告されています。

ハンドヘルドダイナモメーター(HHD)による測定は、高い信頼性と妥当性を持つことが示されています。

測定方法
HHD(ミュータスやモービィなど)
・端坐位
・股関節90°屈曲位かつ膝関節90°屈曲位
・大腿遠位部と座面の間にタオルを挟み、大腿部を座面と平行にします。
 このとき足部は床面から浮かせる(設置しない)。
・機器のセンサーがずれないように下肢遠位部(下腿前面)に固定しベルト等で固定します。
・「蹴ってください」と指示し、体幹・上肢の代償(手で座面を押すなど)が働かないように注意します。
・左右2~3回測定して最大値を採用し体重比(測定値 ÷ 体重 × 100 = %)を算出します。

バランス検査

バランス検査は、①静的バランス検査②動的バランス検査に分類できます。 バランス機能が低下していると運動継続・歩行活動・社会参加が制限されるため、早期発見・介入が望ましいです。

静的バランス検査(片足立位検査)

支持基底面が狭い状態で立位を保持できる時間を測定し、静的姿勢保持能力を確認します。転倒リスクやADLへの影響を把握する目的で測定します。

  • 安全の確保: 転倒予防としての介助(手など)がすぐ出せる位置に立ちます。
  • 方法: 開眼で支持脚(片脚)で立ち、もう一方の脚を床から浮かせます。手は腰に軽くあてます。
  • 計測: ストップウォッチで、浮かせた脚が床に着く・手が腰から離れる・バランスを崩して足が動くまでの時間を計測します(上限60秒など)。
  • 基準: 一般的に、屋内歩行自立には5秒以上、靴下の着脱などの動作には20秒以上などが必要と言われています。

動的バランス検査(TUG: Timed Up and Go test)

歩行・転倒リスク・動的バランス・移動能力を統合的に評価します。

  • 準備: 高さ約40-46cmの背もたれのある椅子を用意します。3m地点にコーンを置きます。
  • 方法:
  • 被験者は椅子に深く座り、背もたれに背をつけ、手は大腿部の上に置きます。
  • 「用意、スタート」の合図で立ち上がり、3m先のコーンを回って、再び椅子に座るまでの時間を計測します。
  • 通常歩行速度と最大歩行速度で測定することもありますが、一般的には「快適な速さ」または「できるだけ速く」の指示で行います(施設基準に合わせます)。
  • 基準: 13.5秒以上で転倒リスクが高いとされています(地域在住高齢者の場合)。

包括的下肢機能評価(SPPB: Short Physical Performance Battery)

以下の3項目で構成され、各項目0〜4点の計12点満点で評価されます。心疾患患者においては、SPPB低スコアが運動耐容能低下・転倒リスク・予後不良と関連する報告があります。

欧州の基準では、SPPBスコア≦8点 はサルコペニアの診断基準の一つとして採用されています。

バランス検査(閉脚立位、セミタンデム立位、タンデム立位)
・検査者がバランス検査を行い、被験者に見せる。
・開眼で閉脚立位→セミタンデム立位→タンデム立位の順番で各10秒ずつ保持します。
・セミタンデム立位は母趾と踵が設置させる肢位で行います。
・左右どちらの足を前にするかは被験者が自由に決めていいです。
4m歩行検査
・4mの快適歩行速度を測定します。
(助走区間を設けず、静止立位からスタートする場合が多いですが、プロトコールによります)
・静止立位からスタートしてゴールは止まらず4m地点を歩いて通過します。
・測定回数は2回で、速い方を採用します。
椅子5回立ち上がり検査
・40cm高の椅子を使用します。
・被験者は胸の前で両上肢を組み、練習として1回椅子から立ち上がる。
・1回椅子から立ち上がることができたら、椅子から立ち上がり→座る→立ち上がりを5回行います(5回立ち上がり終わった時点のタイム)。
・測定回数は2回で、速い方を採用します。

    

運動耐容能

6分間歩行試験(6MWD)

6MWDの結果はPeak VO2と高い相関があり、運動耐容能や予後を評価するために広く用いられます。心不全患者において、距離の低下は予後不良と関連し、約300m未満では死亡や再入院のリスクが高まることが示唆されています。一般健康成人では400~700m程度歩行可能です。

測定方法
  • 場所: 30m以上の平坦な直線廊下。両端にコーンを置きます。
  • 準備: テスト前に10分程度の安静を確保し、バイタル(HR, BP, SpO₂, RPE)を測定します。
  • 実施: 「できるだけ長い距離を歩いてください」と指示し、スタートします。1分ごとに「あと〇分です」と声をかけます(励ましは行いません)。
  • 終了: 6分経過で「その場で止まってください」と指示し、距離を測定します。終了直後のバイタルを記録します。

心肺運動負荷試験(CPX)

心肺運動負荷試験(CPX)に関しては、以前の投稿記事をご参照ください。

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さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。

身体機能評価は、筋力・バランス・歩行という動きの土台を可視化し、心リハにおける運動処方・活動復帰・介入効果判定に不可欠なツールです。 初期介入から退院後フォローまで、評価を習慣化することで、患者さんの状態変化(フレイルの進行など)を早期に捉え、適切な支援を継続できます。

理学療法士・心リハチームの皆さんには、これら評価を単なる数値化(「握力が〇kgだった」)で終わらせるのではなく、「だから、この患者さんにはこの運動が必要だ」という指導設計に活かしていただきたいと思います。

参考文献

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