【保存版】心リハにおける身体機能評価について解説

基礎知識
ゆ~き
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今回は、心リハにおける標準的な身体機能評価について、エビデンスと実践方法をセットで解説していきます。

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はじめに

「身体機能評価」は、単に数値を測る作業ではありません。

患者さんの「社会復帰」や「予後(寿命)」を予測し、最適なリハビリを提供するための羅針盤です。

特に心不全などの循環器疾患では、筋力低下(サルコペニア)やバランス障害がそのまま再入院リスクに直結します。本稿では、心リハ指導士の視点から、「明日から使える標準的な評価バッテリー」を体系的に解説します。

身体機能評価の概要・方法

身体計測

まずは基礎となる身体構成の評価です。

【測定項目】

  • 身長、体重、BMI
  • 体脂肪率、骨格筋量(InBodyなど)
  • 上腕・下腿周囲長

💡 ゆ~きの一口メモ:Obesity Paradox(肥満のパラドックス)

一般的には肥満はリスクですが、心不全患者においては「痩せている人よりも、軽度肥満(ぽっちゃり)の方が予後が良い」という現象が報告されています。これを「Obesity Paradox」と呼びます。逆に言えば、「痩せ(低体重・筋量減少)」は強力な予後不良因子となるため、体重減少には特に注意が必要です。

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筋力検査(サルコペニア評価)

筋力は「予後」を映す鏡です。以下の2つは必ず測定しましょう。

骨格筋量や体脂肪率は、「InBody(インボディ)」などで測定するのが一般的です。InBodyに関しては株式会社インボディ・ジャパンのYouTubeに測定方法などの解説がありますので、そちらもご参照ください。

握力

全身の筋力を反映する指標として最も簡便です。

心不全患者において、握力低下は心イベントリスクの増大(約4倍!)と関連します。

【サルコペニア診断基準(AWGS 2019)】

  • 男性: 28kg 未満
  • 女性: 18kg 未満

※これ以下の場合は「筋力低下あり」と判断します。

【測定のポイント】

  • 左右2回ずつ測定し、最大値を採用します。
  • ジャマー型(座位)またはスメドレー型(立位・座位)を用いますが、施設内でプロトコール(姿勢)を統一することが重要です。
ジャマ―型油圧握力計(国際基準)
・端座位
・肩内転0°・内外旋中間位、肘90°屈曲位、前腕回内外中間位、手関節背屈0-30°・尺屈0-15°
・握り幅は第2指のMP関節(中手指節関節)が直角になるように調整し、3秒間最大努力で握ります。
スメドレー型(日本で一般的)
・立位(または端坐位)
・肘伸展位、腕を体側に自然に垂らして測定します
(※施設によってプロトコールが異なりますが、統一することが重要です)。

等尺性膝伸展筋力

歩行能力や「4METs(日常生活自立レベル)」獲得のために重要な指標です。高齢心疾患患者では、体重比 50%(0.50 kgf/kg)以上がひとつの目標値とされています。

HHD(ミュータスやモービィなど)
・測定方法(HHD:端坐位)
・代償動作(手で座面を押すなど)が入らないように注意。
・股関節・膝関節90°屈曲位。
・足部は床から浮かせ、大腿部を座面と平行にする(タオルで調整)。
・センサーを下腿遠位部に固定し、「蹴ってください」と指示。

バランス検査(転倒リスク)

転倒骨折は、心不全患者のADLを一気に低下させるため、早期発見がカギです。

片脚立位検査(静的バランス)

  • 基準目安: 屋内歩行自立には5秒以上、靴下の着脱には20秒以上が必要と言われています。
  • 測定: 上限(60秒など)を決めて計測します。転倒に十分注意して介助できる位置に立ちましょう。

TUG(Timed Up and Go test)

「座る→立つ→3m歩く→座る」の一連の動作時間を測ります。

  • カットオフ値: 13.5秒以上で転倒リスクが高いとされています(地域在住高齢者)。

SPPB(Short Physical Performance Battery)

「バランス」「歩行」「立ち上がり」の3つを組み合わせた、世界的に使用される評価バッテリーです。 12点満点で評価し、8点以下はサルコペニアやフレイルの可能性が高いと判断されます。

【SPPBの3項目】

  1. バランス検査: 閉脚立位 → セミタンデム → タンデム(各10秒)
  2. 4m歩行検査: 通常歩行速度(2回測定し速い方)
  3. 椅子5回立ち上がり: できるだけ速く5回繰り返すタイム

運動耐容能

6分間歩行試験(6MWT)

「6分間でどれだけ歩けるか」を測定します。Peak VO2と高い相関があり、予後予測に有用です。 心不全患者では、300m未満で予後不良リスクが高まると言われています。

【実施のポイント】

  • 30m以上の平坦な廊下を使用。
  • 1分ごとに「あと〇分です」と残り時間を伝えます(「頑張れ」などの励ましは行わないのがルールです)。
  • 終了直後のバイタル(HR, BP, SpO2, Borg)を必ず記録します。

心肺運動負荷試験(CPX)

より精密な評価を行うための「CPX」については、以下の記事で詳しく解説しています。

👉 あわせて読みたい:【CPX入門】心肺運動負荷試験の適応・禁忌からプロトコールまで徹底解説!

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さいごに

ゆ~き
ゆ~き

ここまでご覧いただきありがとうございます。

今回は、心リハにおける標準的な身体機能評価について、エビデンスと実践方法に関して解説しました。

身体機能評価は、単にデータを集めることが目的ではありません。 握力が低いなら「栄養指導も必要かな?」、TUGが遅いなら「転倒予防の環境調整がいるな」と、具体的な支援につなげるためのツールです。

ぜひ、これらの評価をルーチン化し、患者さんの小さな変化(フレイルの兆候など)を見逃さない、質の高いリハビリテーションを提供していきましょう!

参考文献

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