
最近、心筋梗塞になった患者さんを担当することが多いんだけど…みんな『もう運動していいの?』『怖くて動けない』って不安そうなんだよね。

すごく分かる!命に関わる病気だったからこそ、どこまで動いていいか悩みますよね。 今回は専門用語なしで、『退院後に何をすればいいか』を具体的に解説しましょう!
- 心筋梗塞のあとにリハビリが必要な「本当の理由」
- 入院中~退院後のスケジュールの目安
- 自宅でできる「安全な運動」の具体的メニュー
急性心筋梗塞って何?どうしてリハビリが必要なの?
リハビリを始める前に、まずは敵(病気)の正体を少しだけ知っておきましょう。

血管が「かさぶた」で詰まってしまう病気
心臓は全身に血液を送るポンプですが、心臓自身も酸素を必要としています。その酸素を運ぶパイプ(冠動脈)が、血管の中にできた「血栓(血のかたまり)」で突然詰まってしまうのが急性心筋梗塞です。
パイプが詰まると、その先の筋肉に栄養が届かなくなり、心臓の一部が動かなくなってしまいます(壊死)。そのため、治療直後の体は「交通事故に遭ったのと同じくらいダメージを受けている」と思ってください。
なぜ「リハビリ」が必要なの?
「心臓が弱っているなら、寝ていたほうがいいのでは?」と思うかもしれません。 しかし、現在の医療では「動ける範囲で、早く動く」ことが推奨されています。理由は大きく2つあります。
| 心臓リハビリを行う「2つの大きな目的」 |
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① 体力の低下(寝たきり)を防ぐため 1日ベッドで寝たきりでいるだけで、足腰の筋力は数%も落ちてしまうと言われます。日常生活に戻るための筋力を維持します。 |
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② 再発を防ぐため(★最重要!) 適切な運動は、血管を広げ、動脈硬化(血管の老化)の進行を抑える「薬」のような強力な効果があります。 |
リハビリの流れ:無理のない3ステップ
「いつから、何をすればいいの?」という疑問にお答えします。リハビリは大きく分けて3つのステップで進みます。
発症して最初の2~3日は、不整脈などが起きやすいデリケートな時期です。ICU(集中治療室)などで医師や看護師が常にチェックしている安全な環境で、少しずつ体を動かし始めます。
- 最初の数日: ベッドの端に座る、トイレまで歩く。
- 1週間後~: 病棟の廊下を歩く、階段の上り下りをする。
国立循環器病研究センターなどでは、約2週間の入院プランの中で、退院後の生活に困らない体力を戻していきます。
退院してからが「本当のリハビリ」のスタートです。外来(通院)での心臓リハビリに通いながら、専門のスタッフと一緒に運動メニューを決めていきます。
この時期に「心肺運動負荷試験(CPX)」という精密な検査を受けるのがおすすめです。
これは「マスクをつけて自転車をこぐ検査」で、「今のあなたの心臓にとって、一番安全で効果的な運動の強さ」を正確に測定することができます。
仕事や家事に戻り、リハビリで学んだことを生活の中で続けていく時期です。地域のスポーツジムや、患者会(NPO団体など)を利用して、楽しみながら運動を続ける方が増えています。
▼ CPXってどんな検査?詳しく知りたい方はこちら
【実践編】自宅でどんな運動をすればいい?
退院後の患者さんに推奨されている、具体的な運動メニューをご紹介します。
※主治医から個別の運動制限が出ている場合は、必ずそちらの指示に従ってください。
有酸素運動(ウォーキングなど)
心臓の血管を丈夫にするために最も効果的な運動です。
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● 頻度(どれくらい?)
週に3〜5回(負担が軽ければ毎日でもOK) -
● 時間(何分?)
最初は1回10分からでOK!慣れてきたら、1回20分〜60分を目指しましょう。 -
● 強さ(ペースは?)
ここが一番重要です!「ニコニコペース」が合言葉です。
隣の人と笑顔でおしゃべりできるけれど、少し汗ばむくらいの速さ。
※息がゼーゼーと切れるのは「やりすぎ(心臓への負担)」です。
筋力トレーニング(スクワットなど)
足腰の筋肉を維持することで、心臓への負担を減らします。
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● 頻度
週に2〜3回(筋肉を休めて回復させるため、1日おきに行いましょう) -
● 内容
・椅子の立ち座り(スクワット)
・かかと上げ(カーフレイズ)
・軽いダンベル(水入りペットボトル)運動 など -
● 回数・強さ
1セット 10回程度 × 1〜3セット
「ちょっとキツイかな?」と感じる、または「あと数回はできる余裕がある」程度の重さで行います。
運動以外も大切!心のケアと生活習慣
リハビリは運動だけではありません。以下の3つもセットで行うことで、再発リスクをグッと下げることができます。
| 運動以外の重要な指導内容(生活習慣) |
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💊 1. 食事と薬の徹底管理 塩分を控えること、そして「処方された薬を自分の判断で勝手にやめないこと」が命綱になります。 |
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🧘♀️ 2. ストレッチと深呼吸 体が硬いと血管も硬くなりやすいと言われています。運動前後のストレッチや、深呼吸で心身をリラックスさせる時間を作りましょう。 |
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💬 3. 心(メンタル)のケア 心筋梗塞の後は、不安で気分が落ち込むことがよくあります。「怖いな」「動くのが不安だな」と思ったら、我慢せずにリハビリスタッフや看護師に相談してください。話すだけで楽になることもあります。 |
リハビリを続けるとこんないいことが!
最後に、リハビリを頑張るとどんなメリットがあるのかまとめました。
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血管が若返る
血管の柔軟性が増し、全身の血流が良くなる -
疲れにくくなる
同じ動きでも心臓がドキドキしなくなる・息切れが減る -
再発リスクが下がる
※これが一番のメリットです! 命を守ることに直結します。 -
気持ちが前向きになる
「動いても大丈夫なんだ」という安心感と自信がつく -
検査データの改善
血圧、血糖値、コレステロール値などが安定する
さいごに


ここまでご覧いただきありがとうございます。
心筋梗塞のリハビリは、「歯を食いしばって根性で頑張るもの」ではありません。 今の自分の心臓の体力に合わせて、「安全な範囲(ニコニコペース)で、長く続けるもの」です。
最初は「また痛くなったらどうしよう」と不安かもしれませんが、私たち専門スタッフが必ずそばについてサポートします。
「今日はいつもより調子がいいな」「先週より少し長く歩けたな」という小さな変化や成功体験を楽しみながら、焦らず、自分のペースで一緒に進んでいきましょう!
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参考文献
- 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン, 2021.



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