
「エネルギー代謝」と聞いただけで、アレルギー反応が出てしまう…そんな経験ありませんか? ATPだの解糖系だの、カタカナばかりで頭が痛くなりますよね。
ですが、ここを理解すると心肺運動負荷試験(CPX)のデータ解釈が劇的に面白くなりますし、心リハ指導士試験でも「絶対に落とせない得点源」になります。
今回は、複雑な代謝の仕組みを理学療法士・心リハ指導士の視点から、図解と要点を絞って「どこよりもわかりやすく」解説します。 教科書を読む前に、まずはこの記事で全体像を掴んでください!
はじめに
今回は、大事な部分を重点的に、図解を併せてできるだけわかりやすくまとめましたので、ぜひ見てください。
- 無気的代謝:酸素を使わず「瞬発力」を生む(ATP-PCr系、解糖系)
- 有気的代謝:酸素を使って「持久力」を生む(TCA回路、電子伝達系)
- 実際の運動では、どちらか一方ではなく「常に両方が働いている」のが重要!
今回、主に参考にした図書は、「内部障害理学療法学 循環・代謝(15レクチャーシリーズ理学療法テキスト)」と、日本心臓リハビリテーション学会が出版している「-指導士認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携 増補改訂版」です。
試験勉強に必須となるテキスト「心臓リハビリテーション必携」は、Amazon等の一般書店では取り扱われていません。 以下の学会公式サイトからのみ購入可能です。
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エネルギー代謝の全体像(無気的 vs 有気的)
人間が体を動かすには、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー通貨が必要です。 このATPを「どうやって作るか?」によって、大きく2つのシステムに分かれます。

無気的代謝(Anaerobic)
- 特徴: 酸素を使わないでATPを作る。
- メリット: すぐにエネルギーを出せる(瞬発力)。
- デメリット: 持続時間が短い。作れるATPが少ない。
- システム: ATP-PCr系、解糖系
有気的代謝(Aerobic)
- 特徴: 酸素を使用してATPを作る。
- メリット: 大量のエネルギーを作れる(持久力)。
- デメリット: エンジンがかかるまで時間がかかる。
- システム: TCA回路(クエン酸回路)、電子伝達系
【第1段階】ATP-PCr系(~数秒)
~ロケットスタートの予備電源~

運動を開始した直後(0秒〜数秒)は、酸素の供給が全く間に合いません。 そこで、筋肉の中にすでに備蓄されている「クレアチンリン酸(PCr)」を分解して、瞬時にエネルギーを取り出します。
| ATP-PCr系 |
|---|
| 場所:筋線維の細胞質 |
| 持続時間:7~8秒程度(非常に短い) |
| 仕組み: ・PCr(クレアチンリン酸)を、CK(クレアチンキナーゼ)という酵素が分解。 ・PCr → クレアチン + リン酸(Pi) + エネルギー(ATP) |
- 「酸素は不要」です。
- 「最も早く」立ち上がりますが、すぐに枯渇します。
- 100m走や重量挙げのような「一瞬のパワー」で活躍します。
【第2段階】解糖系(数十秒~)
~つなぎの主力エンジン&分岐点~
運動が続いてATP-PCr系が切れ始めると(約10秒〜)、次に主役になるのが「解糖系」です。 食事から摂った糖分(グルコース)を分解してエネルギーを作ります。

| ATP-PCr系 |
|---|
| 場所:細胞質 |
| 生成ATP数:グルコース1分子あたり、正味2分子のATP |
運命の分かれ道:「ピルビン酸」の行方
解糖系でグルコースが分解されると、最終的に「ピルビン酸」という物質になります。ここでの酸素の状態によって、ピルビン酸の運命が変わります。これが試験の頻出ポイントです!
| ピルビン酸の行方 |
|---|
| 運動強度が低い時(酸素が十分にある) ピルビン酸は「ミトコンドリア」の中に入り、後述する「有気的代謝(TCA回路)」の燃料として使われます。 |
| 運動強度が高い時(酸素が足りない) ピルビン酸はミトコンドリアに入れず溢れてしまい、細胞質で「乳酸」に変換されます。 |
💡 臨床のポイント
「解糖系=悪者(乳酸が溜まる)」ではありません! 解糖系は、有酸素運動のための「燃料供給ルート」でもあり、処理しきれない時の「バイパスルート(乳酸生成)」でもあるという二面性を持っています。
【第3段階】有気的代謝(長時間)
~高燃費のメインエンジン~
運動開始から数分が経ち、呼吸循環応答が整って酸素が細胞に届き始めると、いよいよ「有気的代謝」が本領を発揮します。 これが私たちの活動のメインエネルギー源です

| 有気的代謝 |
|---|
| 場所: ミトコンドリア内(ここ重要!) |
| 仕組み: TCA回路(クエン酸回路): 燃料を分解し、水素を取り出す。 電子伝達系: 水素と酸素を反応させ、大量のATPを作る。 |
| 生成ATP数: グルコース1分子から最大38分子(※諸説あり) |
解糖系(2分子)に比べて、約19倍ものエネルギー効率があります。だからこそ、私たちは長時間動き続けることができるのです。
【重要】臨床や試験における注意点
以上が基本の解説ですが、心リハ指導士試験や臨床で重要なのは以下の視点です。
実際の運動に関しては、無気的代謝と有気的代謝が密接に関連しており、純粋な無酸素運動や有酸素運動は存在しない。
「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版より引用.
実際にはそれぞれのシステムが複雑に同時進行しています。スイッチが切り替わるように「ここからが無酸素、ここからが有酸素」と明確に区別することはできません。
また、「有酸素運動」の定義にも注意が必要です。
有酸素運動とは、一般的には、乳酸が蓄積せずに長時間持続できる範囲の運動強度を指し、嫌気性代謝閾値以下の運動がその運動強度とみなされる。
「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版より引用.
「生理学的な有気的代謝」と、運動処方における「有酸素運動」は、文脈によって定義が使い分けられる場合があるため注意しましょう。
さいごに

最後までご覧いただきありがとうございます。
今回は、苦手意識を持つ方が多い「エネルギー代謝」について解説しました。
最後に、暗記のためのキーワードを整理します。
- ATP-PCr系 = 酸素不要、爆発的パワー(数秒)
- 解糖系 = 細胞質、ピルビン酸の分岐点(乳酸 or ミトコンドリア)
- 有気的代謝 = ミトコンドリア、大量のATP、持久力
この代謝の仕組み(特に解糖系と乳酸の関係)を理解しておくと、心肺運動負荷試験(CPX)における「AT(嫌気性代謝閾値)」の意味が、丸暗記ではなく論理的に理解できるようになります。
ぜひこの記事をブックマークして、試験勉強の合間に見返してくださいね!
参考文献
- 日本心臓リハビリテーション学会(2022).「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版.p2-22.
- 石川 朗, 他 (2017): 内部障害理学療法学 循環・代謝(15レクチャーシリーズ理学療法テキスト), p24-37.


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