【保存版】無気的代謝と有気的代謝の違いとは?ATP産生の仕組みとエネルギー供給システムを解説

基礎知識
ゆ~き
ゆ~き

今回は、無気的代謝と有気的代謝の違いについて、理学療法士・心リハ指導士の視点から解説していきます。

はじめに

運動時のエネルギー代謝機能は、複雑でわかりにくい部分が多く、なかなか理解が追いつかないことがあるかと思います。 今回は、大事な部分を重点的に、図解を併せてできるだけわかりやすくまとめましたので、ぜひ見てください。

今回、主に参考にした図書は、「内部障害理学療法学 循環・代謝(15レクチャーシリーズ理学療法テキスト)」と、日本心臓リハビリテーション学会が出版している「-指導士認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携 増補改訂版」です。

心臓リハビリテーション必携 - JACR日本心臓リハビリテーション学会

無気的代謝・有気的代謝

エネルギー代謝
・無気的代謝
 酸素を使わないでATPを産生する過程のこと
 ATP-PCr系、解糖系
・有気的代謝
 酸素を使用してATPを産生する過程のこと
 TCA回路(クエン酸回路)、電子伝達系

1. ATP-PCr系(運動開始~数秒)

運動開始時、または短時間の運動実施時は、有気的代謝によるATP産生が間に合わないため、主にATP-PCr系によるエネルギー供給システムが働きます。

筋線維の細胞質にあるクレアチンリン酸(PCr)が、クレアチンキナーゼ(CK)の作用でクレアチンとリン酸(Pi)に分解されます。この時に発生するエネルギーを使ってATPが再合成されます。 酸素を必要とせず瞬時にパワーを出せますが、エネルギー供給時間が7~8秒程度しかないため、長時間の運動には不向きです。

2. 解糖系(数十秒~)

運動が続いて30秒近くになると、ATP-PCr系では足りなくなり、解糖系が主役になります。

解糖系では、グルコース(糖)が分解されることでATPが産生され、その代謝産物として「ピルビン酸」が作られます。 この際、グルコース1分子あたり正味2分子のATPが生成されます。

  • 運動強度が低い場合(酸素が十分にある): ピルビン酸はミトコンドリア内に入り、後述する「有酸素系(TCA回路)」に取り込まれて大量のATPになります。
  • 運動強度が高い場合(酸素供給が追いつかない): 溢れたピルビン酸はミトコンドリアに入れず、細胞質で乳酸に変換されます。乳酸は血中に入って肝臓へ運ばれ、再びピルビン酸やグルコースに変換されます(コリ回路)。

つまり、解糖系は独立したシステムではなく、「有酸素系への燃料供給ルート(前段階)」でもあり、「処理しきれない時のバイパスルート(乳酸生成)」でもあるという二面性を持っています。

3. 有気的代謝(長時間)

さらに運動時間が長くなると、有気的代謝が優位になり、主にここからエネルギー供給が行われるようになります。

解糖系で生成されたピルビン酸は、ミトコンドリア内で脱炭酸されたのち、TCA回路(クエン酸回路)から電子伝達系を経て、最終的に水と二酸化炭素に分解されます。 有気的代謝では、グルコース1分子の分解で最大38分子のATP(※諸説あり)が生じるため、非常にエネルギー産生効率が良いのが特徴です。

さらに運動が長時間に及ぶと、糖質だけでなく脂肪(脂肪酸)が有気的に使われる比率が高くなり、枯渇しにくい持続的なエネルギー供給源となります。

【重要】臨床や試験における注意点

以上が基本の解説ですが、心リハ指導士試験や臨床で重要なのは以下の視点です。

実際の運動に関しては、無気的代謝と有気的代謝が密接に関連しており、純粋な無酸素運動や有酸素運動は存在しない。

「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版より引用.

実際にはそれぞれのシステムが複雑に同時進行しています。スイッチが切り替わるように「ここからが無酸素、ここからが有酸素」と明確に区別することはできません。

また、「有酸素運動」の定義にも注意が必要です。

有酸素運動とは、一般的には、乳酸が蓄積せずに長時間持続できる範囲の運動強度を指し、嫌気性代謝閾値以下の運動がその運動強度とみなされる。

「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版より引用.

「生理学的な有気的代謝」と、運動処方における「有酸素運動」は、文脈によって定義が使い分けられる場合があるため注意しましょう。

さいごに

最後までご覧いただきありがとうございます。

今回は、苦手意識を持つ方が多い「エネルギー代謝」について解説しました。 「ATP-PCr系は瞬発力」「解糖系はつなぎ役」「有気的代謝はスタミナ」とイメージしつつ、それぞれのATP生成数や、ピルビン酸・乳酸の流れを整理しておくと、試験問題にも対応しやすくなります。

この代謝の仕組みを理解しておくと、心肺運動負荷試験(CPX)でなぜ「AT(嫌気性代謝閾値)」が重要なのか、その意味がより深く理解できるようになりますよ。 ぜひ何度も読み返して、基礎を固めていきましょう!

参考文献

  • 日本心臓リハビリテーション学会(2022).「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版.p2-22.
  • 石川 朗, 他 (2017): 内部障害理学療法学 循環・代謝(15レクチャーシリーズ理学療法テキスト), p24-37.

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました