【保存版】心臓リハビリの標準的な身体機能評価マニュアル|握力・SPPB・6MWTのカットオフ値と実践法

基礎・解剖整理
この記事の概要

本記事では、心リハ指導士が患者さんの予後や社会復帰を予測するための「標準的な評価バッテリー(握力、等尺性膝伸展筋力、SPPB、6MWTなど)」の実践方法とカットオフ値を分かりやすく解説します。

こ~だい
こ~だい

患者さんの身体機能評価って、いろんな種類があってどれを優先して測ればいいか迷うんだよね…。とりあえず歩行速度と握力だけ測ってるんだけど、これでいいのかな?

ゆ~き
ゆ~き

わかる!忙しい臨床の中だと『とりあえず測るだけ』になっちゃうこともあるよね。 でも、心リハにおける評価は、患者さんの社会復帰や寿命(予後)を予測する超重要なデータなんだよ!今回は、心リハで絶対に押さえておくべき『標準的な身体機能評価』について、エビデンスと実践方法をセットで解説していくね!

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✓ 3分でわかる!この記事のポイント
  • 心リハにおける身体機能評価の重要性(なぜ測るのか?)
  • サルコペニア評価(握力・膝伸展筋力)の実践と基準値
  • 転倒リスクと運動耐容能の評価(SPPB・6MWT)

はじめに

「身体機能評価」は、単に数値を測ってカルテに記載するだけの作業ではありません。患者さんの「社会復帰」「予後(寿命・再入院リスク)」を予測し、最適なリハビリプログラムを提供するための羅針盤です。

特に心不全などの循環器疾患では、筋力低下(サルコペニア)やバランス障害がそのまま再入院リスクに直結します。本稿では、心リハ指導士の視点から、「明日から使える標準的な評価バッテリー」を体系的に解説します。

身体機能評価の概要・方法

まずは基礎となる身体構成の評価です。

【測定項目】

  • 身長、体重、BMI
  • 体脂肪率、骨格筋量(InBodyなど)
  • 上腕・下腿周囲長(ふくらはぎの太さなど)
ゆ~きの一口メモ:Obesity Paradox(肥満のパラドックス)

一般的に肥満は健康リスクですが、心不全患者さんにおいては「痩せている人よりも、軽度肥満(ぽっちゃり)の方が予後が良い」という現象が報告されており、これを「Obesity Paradox」と呼びます。
逆に言えば、「痩せ(低体重・筋量減少)」は強力な予後不良因子となるため、意図しない体重減少には特に注意が必要です。

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筋力検査(サルコペニア評価)

筋力は「予後」を映す鏡です。以下の2つは必ず測定しましょう。

骨格筋量や体脂肪率は、「InBody(インボディ)」などで測定するのが一般的です。InBodyに関しては株式会社インボディ・ジャパンのYouTubeに測定方法などの解説がありますので、そちらもご参照ください。

握力

全身の筋力を反映する指標として、最も簡便で重要なテストです。心不全患者において、握力低下は心イベントリスクの増大(約4倍!)と関連することが分かっています。

サルコペニア診断基準(AWGS 2019:握力)
  • 👨 男性: 28kg 未満
  • 👩 女性: 18kg 未満

※これ以下の場合は「筋力低下あり」と判断します。

【測定のポイントとプロトコールの違い】

基本は左右2回ずつ測定し、最大値を採用します。 ジャマー型(座位)またはスメドレー型(立位・座位)を用いますが、施設内でプロトコール(姿勢)を統一することが重要です。

ジャマ―型油圧握力計(国際基準)
  • 姿勢: 端坐位で行う。
  • 関節角度: 肩内転0°・内外旋中間位、肘90°屈曲位、前腕回内外中間位、手関節背屈0-30°・尺屈0-15°
  • 測定: 握り幅は第2指のMP関節(中手指節関節)が直角になるように調整し、3秒間最大努力で握る。
スメドレー型(日本で一般的)
  • 姿勢: 立位(または端坐位)で行う。
  • 関節角度: 肘伸展位、腕を体側に自然に垂らして測定します。(※施設によってプロトコールが異なりますが、統一することが重要です)
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等尺性膝伸展筋力

歩行能力や「4METs(日常生活自立レベル)」獲得のために重要な指標です。高齢心疾患患者では、体重比 50%(0.50 kgf/kg)以上がひとつの目標値とされています。

HHD(ミュータスやモービィなど)の測定方法
  • 姿勢: 端坐位で行う。
  • 関節角度: 股関節・膝関節90°屈曲位。足部は床から浮かせ、大腿部を座面と平行にする(タオル等で調整)。
  • 代償動作の防止: 手で座面を押す、骨盤が後傾するなどの代償が入らないように注意する。
  • 測定: センサーを下腿遠位部に固定し、「蹴ってください」と指示して最大努力を引き出す。

バランス検査(転倒リスク)

転倒骨折は、心不全患者のADL(日常生活動作)を一気に低下させ、寝たきりリスクを高めるため、早期発見がカギです。

片脚立位検査(静的バランス)

  • 基準目安: 屋内歩行自立には5秒以上、靴下の着脱には20秒以上が必要と言われています。
  • 測定: 上限(60秒など)を決めて計測します。転倒に十分注意して介助できる位置に立ちましょう。

TUG(Timed Up and Go test)

「座る→立つ→3m歩く→ターンする→戻って座る」という一連の動作時間を測る、動的バランスの代表的な検査です。

  • カットオフ値: 13.5秒以上で転倒リスクが高いとされています(地域在住高齢者)。

SPPB(Short Physical Performance Battery)

「バランス」「歩行」「立ち上がり」の3つを組み合わせた、世界的に使用される評価バッテリーです。 12点満点で評価し、8点以下はサルコペニアやフレイルの可能性が高いと判断されます。

【SPPBの3項目】

  1. バランス検査: 閉脚立位 → セミタンデム → タンデム(各10秒)
  2. 4m歩行検査: 通常歩行速度(2回測定し速い方)
  3. 椅子5回立ち上がり: できるだけ速く5回繰り返すタイム

運動耐容能

6分間歩行試験(6MWT)

「6分間でどれだけ歩けるか」を測定します。Peak VO2と高い相関があり、予後予測に有用です。 心不全患者では、300m未満で予後不良リスクが高まると言われています。

【実施のポイント】

  • 30m以上の平坦な廊下を使用。
  • 1分ごとに「あと〇分です」と残り時間を伝えます(「頑張れ」などの励ましは行わないのがルールです)。
  • 終了直後のバイタル(HR, BP, SpO2, Borg)を必ず記録します。

心肺運動負荷試験(CPX)

より精密で科学的な運動耐容能・心不全の重症度評価を行うための「CPX」については、以下の記事で詳しく解説しています。

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さいごに

ゆ~き
ゆ~き

ここまでご覧いただきありがとうございます。

今回は、心リハにおける標準的な身体機能評価について、エビデンスと実践方法に関して解説しました。

身体機能評価は、単にデータを集めることが目的ではありません。 握力が低いなら「栄養指導も必要かな?」、TUGが遅いなら「転倒予防の環境調整がいるな」と、具体的な支援につなげるためのツールです。

ぜひ、これらの評価をルーチン化し、患者さんの小さな変化(フレイルの兆候など)を見逃さない、質の高いリハビリテーションを提供していきましょう!

ゆ~き
ゆ~き / 理学療法士・心リハ指導士

急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。

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参考文献

  • 高橋 哲也, 他:心不全患者の骨格筋評価の実際とエビデンス, 2020.
  • Sobieszek et al:Electrical Changes in Polish Patients with Chronic Heart Failure: Preliminary Observations, 2019.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31443168/
  • Izawa et al:Longitudinal Changes of Handgrip, Knee Extensor Muscle Strength, and the Disability of the Arm, Shoulder and Hand Score in Cardiac Patients During Phase II Cardiac Rehabilitation, 2019.https://www.mdpi.com/434382
  • Yamada et al:Frailty may be a risk marker for adverse outcome in patients with congestive heart failure, 2015.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28834671/
  • 渡辺 敏,他:高齢心血管疾患患者における日常生活活動の自立を判別する身体運動機能について, 2017.
  • A. R. Sousa-Santos et al:Differences in handgrip strength protocols to identify sarcopenia and frailty- a systematic review, 2017.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5644254/
  • Hirano et al:Validity and reliability of isometric knee extension muscle strength measurements using a belt-stabilized hand-held dynamometer: a comparison with the measurement using an isokinetic dynamometer in a sitting posture, 2020.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32158074/
  • 島田 裕之, 他:高齢者を対象とした地域保健活動におけるTimed Up&Go Testの有用性, 2006.
  • 佐竹 将宏, 他:6分間歩行試験について, 2019.

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