【前編】心房細動(Af)の心臓リハガイド|病態・心電図・合併症をわかりやすく解説

【前編】心房細動とは?病態・心電図・合併症・発症予防を心リハ指導士が徹底解説 心リハ・臨床実践
この記事の概要

心房細動(Af)は心リハの現場で最もよく出会う不整脈の一つです。本記事では、病態・心電図・合併症・発症予防を心リハ指導士がわかりやすく解説します。後編では、具体的な運動処方・リスク管理・中止基準を解説します。

こ~だい
こ~だい

心房細動って心不全でも開心術後でもよく見るけど、動くときに動悸とか息切れとかしてどの程度まで動かせばいいかわからないんだよね。病態もちょっとあいまいなところもあるんだよね。

ゆ~き
ゆ~き

そうだよね。自覚症状が強くてセラピストとしてはついつい怖くてなんとなく制限かけがちだよね。病態もわかりにくいところがあるのもわかるよ。

なら今回は、心房細動に対する病態や自覚症状、心電図、合併症を踏まえて解説していくね。

こ~だい
こ~だい

ちょうど気になっていたから助かります。よろしくお願いします!

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✓ 3分でわかる!この記事のポイント
  • 心房細動のわかりやすい定義とは
  • 心房細動の病態と分類について
  • こんな危険性があるの?心房細動の合併症の詳細
  • 心房細動にならないための発症予防策について

はじめに

心房細動(Af, Atrial fibrillation)は、心臓リハビリテーション(心リハ)を行っていれば、心不全や心筋症、開心術後などに合併してよく見られると思います。

ただその病態の理解や自覚症状、リスク管理について十分に把握している方はあまり多くないと思います。そこで今回は心房細動の病態や自覚症状、心電図、合併症について解説していきます。リスク管理・運動処方・中止基準については後編で詳しく解説します。

今回も、主に「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」等を参考に作成しました。

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心房細動とは

まず心房細動とはどのように定義された不整脈なのかわかりやすく説明します。日本循環器協会が以下のように示しています。

正常な洞調律時の洞結節の役割が、企業における社長で、業務命令(電気刺激)を受け取る心室が社員であるとするなら、心房に偽物の社長が出現し、不規則で多量の業務命令がくることで社員の仕事量が増え混乱を生むのが心房細動です。

日本循環器協会より引用

一般の方にもわかりやすくすると、やや砕けた説明になりますね。

もう少し専門的な言葉で解説すると、

2023年のACC/AHA/ACCP/HRSガイドラインでは、心房細動を 「不協調な心房興奮と無効な心房収縮を特徴とする上室性頻脈性不整脈」 と定義している

Joglar et al., 2024, p.279[筆者訳]

つまり、心房で無秩序に電気的な興奮が出現することで、特徴的な心電図を示す不整脈であることが知られています。

心房細動の分類

心房細動は持続性によって以下の4種類に分類されます。

分類名 持続期間・特徴
発作性AF 7日以内に自然停止または介入で洞調律に復帰するもの
持続性AF 7日を超えて持続するが、除細動により洞調律に復帰可能なもの
長期持続性AF 1年以上持続し、リズムコントロールを試みる方針のもの
永続性AF 洞調律回復を断念し、レートコントロールのみを行う方針のもの

※出典:2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for Diagnosis and Management of AF

心房細動の病態

心房の異常興奮、器質的な変化によりリエントリーが発生することでみられる不整脈です。

心房内で300〜500回/分程度の速く不規則な電気的興奮が生じ、洞結節から始まる正常な心房興奮が失われます。その結果、心房は有効に収縮できず、心房内、特に左心耳で血液停滞を起こしやすくなります。

不整脈基質の形成には、①危険因子②心房細動による心房リモデリングの2つが関与しています。加えて心房リモデリングには、①電気的リモデリングと、②構造的リモデリングから構成されます。

そして心房リモデリングには、高血圧や、肥満、糖尿病、睡眠呼吸障害の合併が重要になるとされています。

構造的リモデリング

肥満、高血圧、睡眠時呼吸障害からの直接的な要因や、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAS)の活性化、自律神経活動による心房虚血が関与しているといわれています。

その他外的ストレス、心房の炎症性疾患、心房細動自身により、結合組織の増加、心筋肥大やアミロイド沈着などが認められることで、リエントリーを来たしやすくなることも言われています。

電気的リモデリング

睡眠呼吸障害や糖尿病、肥満、高血圧による伝導障害と、睡眠呼吸障害、副交感神経の活性化による不応期短縮が関与しているといわれています。

次にこの電気的リモデリングが心電図としてどのようにみられるのか解説します。

心房細動の心電図

  • P波が消失
  • f波(細かい基線の揺れ)がみられる
  • RR間隔が不規則でnarrow QRSが不規則に出現する上室性不整脈

頻脈であることが多いことから、拡張時間が短縮し、心房収縮消失(atrial kick消失)がみられることも特徴的です。

この結果、心拍出量が不安定になり、運動時に症状が出やすくなります。

なぜ運動で苦しくなる?

ここまではAfのメカニズム、他覚的所見としての心電図について解説しました。

では自覚症状はどのようなものがあるでしょうか。

Afでは運動時に心拍数が過剰に上昇しやすく、さらに心拍出量が不安定になるため、

  • 息切れ
  • 動悸
  • 易疲労感
  • めまい・立ちくらみ・失神
  • 胸部不快感

が出現しやすいとされています。

▶ 後編では、この特性を踏まえた具体的な運動処方・FITT・中止基準を解説しています。

ただ一方で自覚症状には個人差が大きく、無症状である方も多いことも知られています。

心房細動の合併症

ここでは、しばしば臨床で見かける合併症について解説していきます。

心原性脳塞栓症

心房細動で最も重要な合併症の一つが心原性脳塞栓症です。

AFでは左心房内、とくに左心耳で血栓が形成されやすく、有効な心房収縮が失われ、左房・左心耳内の血流が停滞します。これに、左房リモデリング、内皮障害、凝固亢進などが加わることで血栓が形成され、血栓が脳動脈へ飛ぶと心原性脳塞栓症を発症します。

特に非弁膜症性心房細動では、心内血栓の主な形成部位は左心耳とされます。いくつかのレビュー論文では、しばしば90%前後以上が左心耳由来と報告されています。左心耳は袋状構造で血液がよどみやすく、心房収縮が低下すると血栓形成の温床になるとされています。

心房細動の合併症:心原性脳塞栓症
左心耳は袋状構造で血液がよどみやすく、血栓形成の温床になりやすい

心不全

Afと心不全は高頻度で合併するとされています。Afが続くと心拍出量が低下し、息切れや浮腫などの心不全症状を悪化・増悪させることが知られており、心房細動と左室収縮機能障害を併発している場合、器質的心疾患が存在することが多い。

心房細動が心不全を悪化させる主な機序は、

  1. 心房収縮の消失による左室充満の低下
  2. 頻脈による拡張時間の短縮
  3. RR間隔不整による一回拍出量の変動
  4. 交感神経・神経体液性因子の活性化
  5. 長期的な心房・心室リモデリング

以上の5つが関係するとされています。

頻脈性心筋症(TIC)

頻脈誘発性心筋症は、持続する頻拍や高頻度の頻脈性不整脈によって左室収縮機能が低下し、心不全を呈する病態です。

心房細動は頻脈誘発性心筋症の最も一般的な原因であるとされています。心房細動による左室収縮機能障害は、心房細動患者全体の20〜30%に認められることが報告されています。

心房細動の発症予防

AF発症リスク因子:高血圧・肥満・糖尿病・睡眠呼吸障害・喫煙・飲酒など(2024 ESCガイドライン)

ここまでで解説した内容からお分かりいただけるように生活習慣要因や、遺伝的素因などが強く関係しており、その管理の重要性が注目されています。

心不全や、冠動脈疾患、弁膜症などの心疾患に加えて、高血圧、肥満、糖尿病、睡眠呼吸障害、年齢、喫煙、アルコール消費などを評価することがガイドラインにおいて推奨されています。

これらに対して早期評価・診断を行い薬物療法、カテーテルアブレーションや植込み型心臓電気デバイス(CIED)、電気的除細動のような非薬物療法が必要になります。

2024年ESCガイドラインでは、これら要因を包括的に管理することでAf発症リスクを下げられる可能性があり、最適な血圧維持、正常体重維持、週150〜300分の中等度有酸素運動、過度な飲酒の回避がAfの一次予防として推奨されています。

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さいごに

ゆ~き
ゆ~き

ここまでご覧いただきありがとうございます。

今回は、心房細動に対する病態や自覚症状、心電図、合併症について解説させていただきました。

心房細動は、心房に無秩序に電気的興奮が発生して、特徴的な心電図を示す不整脈であることがわかりました。病態は複雑ですが、危険因子によるものとリモデリングによるものの2つがあり、その要因を包括的に管理することで発症リスクを下げられることを理解し、指導することが重要になります。

次回は心房細動の運動療法を中心とした心臓リハビリテーションについて解説しようと思います。

今日学んだ知識が明日の心臓リハビリテーションに活用できれば幸いです。

ゆ~き
ゆ~き / 理学療法士・心リハ指導士

急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。

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参考文献

  • Joglar JA, et al. ; Peer Review Committee Members. 2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for the Diagnosis and Management of Atrial Fibrillation: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines. Circulation. 2024 Jan 2;149(1):e1-e156. doi: 10.1161/CIR.0000000000001193. Epub 2023 Nov 30. Erratum in: Circulation. 2024 Jan 2;149(1):e167. doi: 10.1161/CIR.0000000000001207. Erratum in: Circulation. 2024 Feb 27;149(9):e936. doi: 10.1161/CIR.0000000000001218. Erratum in: Circulation. 2024 Jun 11;149(24):e1413. doi: 10.1161/CIR.0000000000001263. PMID: 38033089; PMCID: PMC11095842.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38033089/
  • Jaber J, et al. Correlation between heart rate control during exercise and exercise capacity in patients with chronic atrial fibrillation. Clin Cardiol. 2011 Sep;34(9):533-6. doi: 10.1002/clc.20948. PMID: 21905041; PMCID: PMC6652739.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21905041/
  • 日本循環器学会,日本不整脈心電学会.2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン.2020: 42-43, 75.
  • 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会.2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.
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