【前編】PM・ICD植え込みの基礎知識|適応・種類・合併症を心リハ指導士が解説

PM・ICDの基礎知識 心リハ・臨床実践
この記事の概要

心臓リハビリの現場で関わる機会が増えている「ペースメーカー(PM)」「植込み型除細動器(ICD)」。 本記事では、PM・ICDの適応疾患、構造と植込み位置、NBGコードによるモードの読み方、植込み直後に起こりうる合併症まで、 心リハ指導士が現場目線でわかりやすく解説します。

こ~だい
こ~だい

最近、デバイス治療をする患者さんが多いんだけど、ペースメーカーって設定とかしくみとかってどうなっているかわからないんだよね…。

ゆ~き
ゆ~き

いろんなモードがあったり、いろんな種類のデバイスがあったりわかりにくいよね。

じゃあ今回は、ペースメーカーの基礎知識について解説していくね。

こ~だい
こ~だい

ありがとう!

これ見ればペースメーカーについてちょっとイメージしやすくなるかもしれないね。

スポンサーリンク
✓ 3分でわかる!この記事のポイント
  • ペースメーカーの適応と要点
  • PMの構造・植込み位置
  • PMの種類とNBG(旧ICHD)コード
  • 植え込み直後の合併症

はじめに

ペースメーカー(PM)とは、

植込み型心臓電気デバイス(CIED)のうちの一つであり、Ⅲ度(完全)房室ブロックや洞不全症候群などの条件を満たした徐脈性不整脈に対して、電極リードを介して心臓に電気的な刺激を入れる装置のことを指すとされています。

今回は、このペースメーカーについて、適応・種類・合併症などの基礎知識を解説しようと思います。

なお、主に「ポケット版 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版/2021年フォーカスアップデート版)」等を参考に作成しました。

なぜPMが必要なのか?

PMは一定の適応のあるものに対してその症状を改善するために行うものとして知られています。

疾患代表的な病態・症状Class分類
洞不全症候群(Sick Sinus Syndrome)洞徐脈、洞停止、徐脈頻脈症候群による失神・めまい・易疲労感Class I
変時性不全(Chronotropic Incompetence)運動時に十分な心拍数増加が得られないClass I
完全房室ブロック(Ⅲ度房室ブロック)心房と心室が完全に解離し著しい徐脈を呈するClass I
高度房室ブロック2:1房室ブロックなど高度な伝導障害Class I
II度房室ブロック(Mobitz II型)突然QRS波が脱落する進行性伝導障害Class I
心房細動に伴う徐脈徐脈による失神や心不全症状を認めるClass I
頸動脈洞症候群頸動脈洞反射による失神発作を繰り返すClass I〜IIa
神経調節性失神(反射性失神)心停止を伴う反復性失神Class IIa

▼ 覚えておきたいポイント

臨床で遭遇するペースメーカー植込み患者の多くは、以下の4疾患に該当します。

  • 洞不全症候群
  • Mobitz II型房室ブロック
  • 高度房室ブロック
  • 完全房室ブロック

特に「症候性の洞不全症候群」「高度房室ブロック・完全房室ブロック」は、ペースメーカー植込みの代表的な適応であるといえます。

以上の内容をまとめると、PMの適応の条件は2種類に分類されます。

  • 失神等の症状のある場合で、心抑制のあるもの(最大RR>3秒あるいは心拍数<35~45拍/毎分)
  • 症状がない場合で、極度の心抑制があるもの(最大RR>5秒あるいは心拍数<30~35拍/毎分)
📌 このセクションのまとめ
  • PMの適応は「症候性の徐脈」が大原則
  • 代表的な適応は洞不全症候群高度〜完全房室ブロック
  • 無症状でも極度の心抑制(最大RR>5秒など)があれば適応となりうる

PMの構造・植込み位置

ペースメーカーにはジェネレーター(本体)とリードがあります。リードは電気刺激を送るための装置を指します。

ペースメーカーの構造と植込み位置

ジェネレーターは通常、利き手と反対側(多くは左前胸部)の鎖骨下に皮下ポケットを作成し植込まれます。

リードは鎖骨下静脈や腋窩静脈からアプローチし、右心房・右心室の心内膜に固定されます。DDDモードなど心房・心室両方にペーシングを行う場合は、リードが2本(デュアルチャンバー)留置されます。

また近年は、リードレスペースメーカー(Micra™など)も普及しています。カプセル型の本体を大腿静脈からカテーテルで右心室内に直接留置するため、前胸部の皮下ポケットもリードも存在しません。日本では2017年に保険適用となり、2021年からは房室同期ペーシング機能を持つMicra AVも使用可能になっています。

リードレスPMの患者では従来のような植込み側肩関節の運動制限が不要である一方、術直後は穿刺部(鼠径部)の安静・出血管理が中心になる、という違いを押さえておきましょう。

📌 このセクションのまとめ
  • 構造はジェネレーター(本体)+リード。本体は左前胸部の皮下が多い
  • 術後早期は植込み側肩の過度な挙上・外転を避ける(リード脱落予防)
  • リードレスPMは鼠径部から留置 → 肩の運動制限が不要

PMとICDの違い

植込み型除細動器(ICD)は、名前の通り、心室細動や血行動態の不良な心室頻拍などの致死性不整脈に対して直流除細動を行う装置のことを指します。

PMは前述したとおりジェネレーターとリードを挿入して一定の電気刺激を入れている装置であり、致死性不整脈に対する除細動を行うものではありません。

PMとICDの違い

ここが明らかな差であることがわかります。

余談ですが、皮下植込み型除細動器(subcutaneous implantable cardioverter defibrillator:S-ICD)が臨床で使用可能となっています。

静脈アクセスがないので、リード挿入困難患者、リードに問題が生じやすい若年患者、易感染性の患者、デバイス抜去後患者に適しているとされています。

📌 このセクションのまとめ
  • PM=徐脈を補う装置ICD=致死性不整脈を電気ショックで止める装置
  • S-ICDは静脈内リードを使わない新しい選択肢

PMの種類とNBG(旧ICHD)コード

ペースメーカーの機能設定は、かつてICHD(Inter-Society Commission for Heart Disease Resources)コードと呼ばれる3文字のコードで表記されていました。

現在は、これにレートレスポンス機能などを加えて拡張したNBGコード(NASPE/BPEG Generic Code)が国際標準として使用されています。臨床では「ペースメーカーコード」「ICHDコード」と呼ばれることもありますが、内容は同じものと考えて差し支えありません。

(※表は横にスクロールできます)

文字位置意味選択肢説明
1 文字目ペーシング部位A: 心房 (Atrium)
V: 心室 (Ventricle)
D: 心房+心室 (Dual)
O: なし (None)
電気刺激をどこに出すか
2 文字目センシング部位A: 心房
V: 心室
D: 心房+心室
O: なし
心臓の自己電気を検知する場所
3 文字目作動モードI: 抑制 (Inhibit)
T: 同期 (Trigger)
D: 抑制+同期 (Dual)
O: 反応なし
センシング結果に基づく反応
4 文字目心拍応答機能R: Rate Response (あり)
なし: 機能なし
活動度に応じて心拍数を調整

なお、正式なNBGコードには5文字目(マルチサイトペーシングの有無)もありますが、臨床で目にするのはほとんどが4文字目までです。

例えば、「VVIモード」の場合は、ペーシングがV:心室、センシングがV:心室、作動モードがI:抑制を表しています。

モード意味特徴
VVI心室ペーシング・心室センシング・抑制モード最も基本的なモード、心室のみ刺激
AAI心房ペーシング・心房センシング・抑制モード心房のみ刺激、房室伝導が保たれている場合に用いる
DDD心房+心室ペーシング・両センシング・抑制+同期生理的ペーシング、房室順次ペーシングが可能
VVIRVVI + 心拍応答機能体動などの活動量に応じて心拍数を増減させる

抑制は、自己心拍を感知したとき、ペースメーカーからの電気刺激を出さずに抑制する機能で、

同期は、自己心拍を感知したとき、別の部位に電気刺激を同期して出す機能を意味します。

📌 このセクションのまとめ
  • 現在の国際標準はNBGコード(ICHDコードは旧称)
  • 読み方は「ペーシング部位 → センシング部位 → 反応様式 → レートレスポンス」の順
  • 4文字目にRがあれば、運動時に心拍数を上げてくれるモード(リハビリで重要!)

植え込み直後の合併症

日本におけるペースメーカ植込み術後の院内合併症の全体的な発生率は2.5%と報告されています。

ペースメーカー植込み術後の主な院内合併症

日本のDPCデータベースを用いた全国規模の研究では、ペースメーカー植込み術後の院内合併症発生率は2.5%と報告されています。

合併症発生率概要
ポケット感染1.0%植込み部位の感染。最も頻度の高い合併症
デバイス・リード関連トラブル0.5%リード不全、デバイス機能不全など
ポケットトラブル0.4%血腫、血管損傷、創部離開など
敗血症0.3%全身性の重症感染症
気胸0.2%鎖骨下静脈穿刺時に肺を損傷
リード穿孔0.1%リードが心筋を穿通する状態
デバイス移動(Migration)0.5%ジェネレータの位置異常
リード脱落(Dislodgment)移動例の73.7%ペーシング不全や再手術の原因

合併症の主な要因

2種類あります。

  1. デバイス(ジェネレーターとリード)に起因するもの
  2. 植込み手技に起因するもの

加えてデバイスに起因するものには、ジェネレーターの合併症リードの合併症があります。

ジェネレーターの合併症には不具合や電磁干渉によるリセットがあり、リードの合併症にはリコールによる不具合、リードの離脱や経年劣化、閾値の上昇などがあります。

植込み手技に起因するものには感染、リードの挿入手技による気胸、断線や被覆損傷、穿孔があります。

臨床で特に注意すべきハイリスク患者

以下の患者では合併症発生率が高く、術後管理を慎重に行う必要があります。

  • 透析患者
  • 抗凝固薬・抗血小板薬内服患者
  • 一時的ペースメーカー留置中の患者
  • 低BMI患者(BMI<18.5)
  • デバイス交換・リード追加症例
  • 高齢女性患者
📌 このセクションのまとめ
  • 合併症は「デバイス由来」と「手技由来」の2系統で整理する
  • 術後リハビリでは感染徴候・気胸・リード脱落のサインに注意

よくある質問(FAQ)

Q1. ペースメーカー植込み後、いつから肩を動かしていいですか?

A. 施設のプロトコルによりますが、術後早期は植込み側肩関節の過度な挙上・外転を避けるのが一般的です。リード固定が安定するまでの期間は主治医の指示に従い、段階的に可動域を拡大していきます。詳しくは後編で解説します。

Q2. PMが入っている患者さんに運動負荷をかけても大丈夫ですか?

A. 適切な設定がされていれば運動療法は可能です。ただし、レートレスポンス機能(NBGコード4文字目のR)の有無によって運動時の心拍応答が大きく変わるため、設定モードの確認が運動処方の前提になります。

Q3. PMとICDはどちらも「ペースメーカー」と呼んでいいのですか?

A. 厳密には別物です。PMは徐脈を補う装置、ICDは致死性不整脈に電気ショックを行う装置です。ICDの多くはペーシング機能も内蔵していますが、目的が異なるため区別して理解しましょう。

さいごに

ゆ~き
ゆ~き

ここまでご覧いただきありがとうございます。

今回は、ペースメーカーの適応疾患の要点や、PMの種類とNBGコード、植込み直後の合併症などの基礎知識について解説しました。

PMは洞不全症候群や房室ブロックなどの症状を示す徐脈性不整脈に対して適応となり、各疾患の電気的な反応に応じたモードを使用することで電気刺激を調整するものであり、症状を軽減・改善するための装置であることが学べたかと思います。

次回は、「【後編】PM・ICD植え込み後のリハビリ実践|離床基準・運動処方・生活指導まで」の解説したいと思います。

今日学んだ知識が明日の心臓リハビリテーションに活用できれば幸いです。

ゆ~き
ゆ~き / 理学療法士・心リハ指導士

急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。

X(旧Twitter)でも最新情報を発信中!

CPXや循環器リハビリ、医療×AIに関する情報など、明日からの臨床の疑問を解決するヒントを日々ポストしています。
ブログ『ゆ~きのリハラボ』の最新の更新情報も発信していますので、ぜひフォローして一緒に学びましょう!

ゆ~きのリハラボ(@rehaheartlab)をフォローする

参考文献

  • 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会.2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.
  • 吉村 学, 国沢 卓之, 心臓ペースメーカーの原理,適応,モード選択, 日本臨床麻酔学会誌, 2012, 32 巻, 3 号, p. 448-460.Online ISSN 1349-9149, Print ISSN 0285-4945, https://doi.org/10.2199/jjsca.32.448, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/32/3/32_448/_article/-char/ja.
  • 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 不整脈非薬物治療ガイドライン 2018年改訂版および 2021年 JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈非薬物治療.https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Takase.pdf.
  • Kusumoto FM, Schoenfeld MH, Barrett C, et al. 2018 ACC/AHA/HRS Guideline on the Evaluation and Management of Patients With Bradycardia and Cardiac Conduction Delay: Executive Summary: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines, and the Heart Rhythm Society. J Am Coll Cardiol. 2019 Aug 20;74(7):932-987. doi: 10.1016/j.jacc.2018.10.043. Epub 2018 Nov 6. Erratum in: J Am Coll Cardiol. 2019 Aug 20;74(7):1014-1016. doi: 10.1016/j.jacc.2019.06.046. PMID: 30412710.
  • Michael Glikson, Jens Cosedis Nielsen, Mads Brix Kronborg, et al, ESC Scientific Document Group , 2021 ESC Guidelines on cardiac pacing and cardiac resynchronization therapy: Developed by the Task Force on cardiac pacing and cardiac resynchronization therapy of the European Society of Cardiology (ESC) With the special contribution of the European Heart Rhythm Association (EHRA), European Heart Journal, Volume 42, Issue 35, 14 September 2021, Pages 3427–3520, https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehab364
  • Shakya S, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H:In-hospital complications after implantation of cardiac implantable electronic devices:Analysis of a national inpatient database in Japan. J Cardiol 2017;70:405ー410.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28434707/
  • Nakajima H, Taki M:Incidence of cardiac implantable electronic device infections and migrations in Japan:Results from a 129 institute survey. J Arrhythm 2016;32:303ー307.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27588154/
スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました