【前編】TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)とは?大動脈弁狭窄症の病態・適応・SAVRとの違いを心リハ指導士が解説

心リハ・臨床実践
この記事の概要

「TAVIの患者さんを担当することになったけど、SAVR(外科的弁置換術)と何が違うの?」「カルテに書いてあるアプローチって何のこと?」 本記事では、TAVIの病態理解から適応基準、SAVRとの違い、植え込み直後に起こりうる合併症まで、リハビリを安全に進めるための基礎知識を心リハ指導士がわかりやすく解説します。

こ~だい
こ~だい

最近、TAVIを受けた患者さんを担当することになったんだけど、SAVR(外科的な弁置換術)と何が違うのかよくわかってなくて…。

カルテにも「経大腿アプローチ」とか書いてあるけど、それが何を意味するのかもピンと来てないんだよね。

ゆ~き
ゆ~き

TAVIは高齢の患者さんが増えている分、これから担当する機会もどんどん増えていくと思うよ。

SAVRとの違いやアプローチ方法を理解しておくと、離床の進め方や注意すべきポイントが見えてくるから、今回は【前編】としてTAVIの基礎知識を整理していくね!

こ~だい
こ~だい

TAVIの基礎知識の伝授、よろしくお願いします!

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✓ 3分でわかる!この記事のポイント
  • 大動脈弁狭窄症の病態と「ASの3主徴」
  • TAVIとSAVR、何がどう違うのか一目でわかる比較
  • アプローチ方法(TF・TA)でリハビリの注意点が変わる理由
  • 術直後に起こりうる合併症

はじめに

TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)は、開胸を伴わない低侵襲な治療として急速に普及しており、これまで手術が難しいとされてきた高齢・ハイリスクの患者さんにも適応が広がっています。

一方で、対象となる患者さんは高齢でフレイルを合併していることも多く、SAVR(外科的大動脈弁置換術)とはリハビリの進め方や観察すべきポイントが異なります。今回は【前編】として、TAVIの基礎知識と知っておくべき合併症について解説します。

※主に『2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』等を参考に作成しています。

大動脈弁狭窄症とは?

大動脈弁狭窄症(AS)は、加齢や動脈硬化などにより大動脈弁が石灰化して硬くなり、弁の開きが悪くなることで血液の流れが妨げられる疾患です。進行すると、心臓に大きな負担がかかり続けることになります。

代表的な自覚症状として、以下の3つが知られており、臨床では「ASの3主徴」として整理されます。

症状特徴
労作時息切れ心拍出量が増加できず、運動時に息切れが出現する
狭心痛心筋の肥大により酸素需要が増大し、相対的な虚血が生じる
失神運動時に末梢血管が拡張しても心拍出量が増やせず、脳血流が低下する

失神は予後不良のサインとされており、リハビリを進める上でも見逃せない自覚症状の一つです。

📌 このセクションのまとめ
  • ASは弁の石灰化により左室への後負荷が増大する疾患
  • 「労作時息切れ・狭心痛・失神」のASの3主徴は要チェック

TAVIとSAVRの違い

大動脈弁狭窄症の根本治療は弁の入れ替えですが、そのアプローチには大きく分けて「TAVI」と「SAVR」の2つがあります。

項目TAVISAVR(外科的弁置換術)
アプローチカテーテルを用いた低侵襲治療(経大腿動脈など)開胸・人工心肺を使用した外科手術
主な対象高齢者、手術リスクが高い患者比較的若年で手術リスクの低い患者
身体への負担比較的小さい大きい
離床開始の目安術後翌日~術後数日後~(開胸術後管理に準じる)

このように、TAVIは身体への負担が小さい分、早期離床を進めやすいという特徴がありますが、適応となる患者さんは高齢・フレイル合併が多いため、「侵襲が小さいから安心」と単純に考えるのではなく、個々の予備能力を踏まえたリハビリが必要になります。

TAVIの適応基準

TAVIとSAVRのどちらを選択するかは、年齢だけでなく、手術リスクスコアや解剖学的な条件、患者さんご本人の希望なども含めてハートチームで総合的に判断されます。

近年はTAVIの治療成績が向上したことで、これまでSAVRが選択されていた比較的若年・低リスクの患者さんにも適応が広がってきている点は、カルテを確認する際に押さえておきたいポイントです。

📌 このセクションのまとめ
  • TAVIは低侵襲だが、対象は高齢・ハイリスク患者が中心
  • 適応拡大により比較的若年層への施行も増加している

アプローチ方法の種類

TAVIにはいくつかのアプローチ方法があり、カルテに記載された術式を確認することで、リハビリ時に注意すべき部位がわかります。

  • 経大腿動脈アプローチ(TF:Transfemoral):太ももの付け根(鼠径部)の血管からカテーテルを挿入する方法。最も多く選択されるアプローチで、低侵襲性が高い。
  • 経心尖アプローチ(TA:Transapical):肋骨の間を小さく切開し、心臓の先端(心尖部)からアプローチする方法。TFが解剖学的に困難な場合に選択される。

経大腿動脈アプローチの場合は穿刺部位(鼠径部)の血腫・出血リスク、経心尖アプローチの場合は創部の疼痛や呼吸への影響など、アプローチ方法によって離床時に確認すべきポイントが異なります。具体的な離床基準については、次回の【後編】で詳しく解説します。

📌 このセクションのまとめ
  • アプローチは経大腿動脈(TF)が主流、困難例では経心尖(TA)を選択
  • アプローチ部位によって離床時に確認すべき創部・穿刺部が異なる

植え込み直後に起こりうる合併症

TAVIは低侵襲な治療ではありますが、リハビリを進める上で知っておくべき合併症がいくつかあります。

房室ブロック

大動脈弁の近くには心臓の刺激伝導系が走行しているため、弁を留置する際にこの部分が圧迫・損傷され、房室ブロックが生じることがあります。重度の場合はペースメーカーの植え込みが必要になることもあるため、心電図モニターの確認は欠かせません。ペースメーカー植え込み後のリハビリについては、以下の記事もあわせてご確認ください。

▼ 【前編】PM・ICD植え込みの基礎知識|適応・種類・合併症を心リハ指導士が解説

【前編】PM・ICD植え込みの基礎知識|適応・種類・合併症を心リハ指導士が解説
現場で関わる機会が増えている「ペースメーカー(PM)」「植込み型除細動器(ICD)」。本記事では、PM・ICDの適応疾患、構造と植込み位置、ICHDコードによるモードの読み方、植込み直後に起こりうる合併症まで、心リハ指導士が現場目線でわかりやすく解説します。

弁周囲逆流

留置した人工弁と自己弁の間に隙間が生じ、血液が逆流する状態です。程度によっては心不全症状の増悪につながるため、リハビリ時の自覚症状(息切れ・倦怠感)の変化に注意が必要です。

血管損傷・出血

特に経大腿動脈アプローチでは、穿刺部位の血管損傷や出血のリスクがあります。離床時は穿刺部の腫脹・血腫の有無を必ず確認しましょう。

脳梗塞

カテーテル操作や弁留置の際に、石灰化片などが血流に乗って脳血管を塞栓する可能性があります。離床時には神経学的所見(麻痺・意識レベルの変化)の確認も重要です。

📌 このセクションのまとめ
  • 房室ブロックは弁の解剖学的位置から起こりやすい合併症
  • 離床時は穿刺部の状態・自覚症状・神経学的所見を必ずチェック

さいごに

ゆ~き
ゆ~き

ここまでご覧いただきありがとうございます。

今回は、TAVIの病態理解からSAVRとの違い、アプローチ方法、植え込み直後の合併症について解説しました。

「この患者さんはTF(経大腿動脈)アプローチなのか、TA(経心尖)アプローチなのか?」カルテでここを確認するだけで、離床時に注意すべき創部や、想定すべきリスクが明確になります。

次回は【後編】として、TAVI後の具体的な『離床基準・運動処方(FITT)・退院指導』について解説します!

ゆ~き
ゆ~き / 理学療法士・心リハ指導士

急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。

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参考文献

  • 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会.2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.
  • 日本循環器学会/日本胸部外科学会. 2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン.

※本記事の数値・基準は記事公開時点の情報です。実際の臨床判断にあたっては、最新のガイドラインおよび主治医・施設の方針を必ずご確認ください。

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