【後編】PM・ICD植え込み後のリハビリ実践|離床基準・運動処方・生活指導まで

PMI・ICD植込み後のリハビリテーション 心リハ・臨床実践
この記事の概要

PM・ICDを植込んだ患者さんに対して、「いつから動かしていいのか」「どのくらいの強度で運動させればいいのか」と悩む療法士は少なくありません。 本記事では、早期離床のタイミング・運動処方(FITT)・運動療法における注意点・植込み後の生活制限(スポーツ・就労)まで、 現場で使える知識を心リハ指導士がわかりやすく解説します。

こ~だい
こ~だい

前回、PM・ICD植え込みの基礎知識について解説してくれたからわからない部分が解決して助かったよ!

ただ今度は、どれくらいの時間、どの程度の強度で運動すればいいか悩んできたんだよね…。

ゆ~き
ゆ~き

基礎知識についてわかってくれてよかったよ!

PM・ICDの設定によってどうやって運動負荷量を調整すればいいか迷っちゃうしわからないよね。

なら今回は、PM・ICDの植込み後のリハビリテーションに関する離床基準・運動処方・生活指導まで解説していくね。

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✓ 3分でわかる!この記事のポイント
  • 創部・心不全・不整脈の状態を確認できれば早期離床は可能
  • 運動処方はCPX評価+心不全に準じたFITTで設定
  • ペーシング依存患者は変時性応答不全に注意
  • スポーツ・就労は植込み側の上肢制限と種類別の許容度を確認

はじめに

前回解説しましたPM・ICD植え込みの基礎知識を前提に、今回はPM・ICDの植込み後のリハビリテーションに関する離床基準・運動処方・生活指導まで解説しようと思います。

👉 前回の記事はこちら:【前編】PM・ICD植え込みの基礎知識|適応・種類・合併症を心リハ指導士が解説

【前編】PM・ICD植え込みの基礎知識|適応・種類・合併症を心リハ指導士が解説
現場で関わる機会が増えている「ペースメーカー(PM)」「植込み型除細動器(ICD)」。本記事では、PM・ICDの適応疾患、構造と植込み位置、ICHDコードによるモードの読み方、植込み直後に起こりうる合併症まで、心リハ指導士が現場目線でわかりやすく解説します。

なお、今回も主に「ポケット版 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版/2021年フォーカスアップデート版)」等を参考に作成しました。

早期離床のタイミングと基準

早期離床のタイミングと基準に関しては日本心臓リハビリテーション学会が具体的な内容を示していたため紹介します。

デバイス植込み後いつから運動を開始するかについて統一的な見解はないが,血腫や出血など創部の状態やリード位置を確認しつつ,心不全のコントロールやVT,VFなどリスクの高い心室不整脈のコントロールができていれば運動を開始してもよいと考えられ,しばらく心電図監視下で不整脈の確認をしながら進める。

2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインより引用

つまり、有害事象がなければ基本的には心電図をモニタリング下で積極的な離床が可能であるとされています。

離床を進める際は、以下の3点を順番に確認すると整理しやすくなります。

  1. 創部の状態(血腫・出血・腫脹の有無、リード位置)
  2. 心不全のコントロール状況(うっ血所見・体重変化など)
  3. 致死性不整脈(VT・VF)のコントロール状況
📌 このセクションのまとめ
  • 離床開始の統一基準はないが、「創部」「心不全」「致死性不整脈」の3点が落ち着いていれば開始可能
  • 開始後も心電図モニタリング下で不整脈の出現を確認しながら進める

運動処方(FITT)

運動療法は、CPXにおける評価を実施し、心不全患者における運動療法に準じて行うことが示されています。

項目設定の考え方
F(Frequency:頻度)週3〜5回を目安に、
心不全に準じた頻度で設定
I(Intensity:強度)CPX:AT(嫌気性代謝閾値)レベル
心拍応答が得られない場合:Borg指数を優先
T(Time:時間)1回5~10分程度から開始し、
徐々に20〜30分程度まで延長する
T(Type:種類)有酸素運動(歩行・エルゴメーターなど)
レジスタンストレーニング

心不全に関するレジスタンストレーニングや有酸素運動の具体的な運動処方について過去のブログで解説しているので参考にしてください。

【後編】心不全リハビリの実践マニュアル�|運動療法の禁忌・中止基準からFITT・食事指導まで

【後編】心不全リハビリの実践マニュアル|運動療法の禁忌・中止基準からFITT・食事指導まで
心不全の運動療法、リスク管理や負荷設定に自信を持てていますか?本記事では、心リハ指導士が最新ガイドラインに基づく「運動の禁忌・中止基準」から、有酸素運動・筋トレの具体的なFITT、3段階のロードマップ、食事療法までを網羅的に解説。臨床現場ですぐに使える実践的なマニュアルです。
📌 このセクションのまとめ
  • PM・ICD植込み患者の運動処方は「心不全に準じたFITT」が基本
  • 強度設定はCPXのAT、またはBorg指数を優先(次のセクションで詳しく解説)

運動療法における注意点

ペースメーカーは洞不全症候群や房室ブロックなどの徐脈性不整脈に対して植え込まれますが、ペーシングに高頻度に依存している患者では、運動耐容能が低下しやすいことが知られています。

その主な原因は2つです。

  1. 心室内の非生理的収縮:通常、心室は刺激伝導系を介して効率よく収縮しますが、右室心尖部などへのペーシングではこの伝導が乱れ、収縮効率が低下します。
  2. 変時性応答不全:運動量に合わせて心拍数が適切に上昇しない状態です。特にペーシング依存度が高い患者ほど起こりやすいとされています。

レートレスポンス機能とセンサーの種類

この変時性応答不全を補う仕組みとして、レートレスポンス(RR)機能があります(NBGコード4文字目の「R」に相当)。これは活動量に応じて自動的にペーシングレートを増減させる機能で、センサーが身体の状態を感知して心拍数を調整します。

センサーの種類は主に以下の3つです。

センサーの種類感知する内容搭載デバイスの例
加速度センサー体の振動・動きICD・CRT-P/CRT-D の多くに搭載
分時換気量(VE)センサー呼吸の変化一部のPMに搭載
心内インピーダンスセンサー心臓内の電気的変化一部のデバイスに搭載

ここで臨床上の重要な注意点があります。ICD・CRT-P/CRT-Dに多く搭載されている加速度センサーは、自転車エルゴメーターの動きに反応しにくいという特性があります。

エルゴメーター使用時に「なぜか心拍数が上がらない」と感じた場合は、このセンサー特性を疑いましょう。運動耐容能の評価や運動療法には、トレッドミルや歩行負荷を選択するとより適切です。

運動強度の管理:心拍数だけに頼らない

心不全を合併している患者では、もともと変時性応答不全が起こりやすい傾向があります。さらにβ遮断薬や抗不整脈薬を使用している場合は、薬の影響で心拍数がより一層上がりにくくなります。

そのため、PM・ICD患者の運動強度の管理は、心拍数だけを指標にするのは危険です。

Borg指数は心拍応答に左右されないため、変時性応答不全がある患者でも安全に運動強度を評価できます。目安はBorg 11〜13(楽である〜ややきつい)です。

📌 このセクションのまとめ
  • ペーシング依存患者は変時性応答不全により運動耐容能が低下しやすい
  • 加速度センサー搭載機ではエルゴメーターでセンサーが反応しにくいため歩行・トレッドミルを検討
  • HRだけでなくBorg指数を併用して運動強度を評価する

植え込み後の生活制限

生活指導において気を付ける点はいくつかあります。ここではペースメーカーとICDの植込み後に分けて解説していきます。

PMの植込み術後の生活制限

リハビリの場面では、植込み側の肩関節は術後一定期間、過度な挙上・外転運動を避ける必要があります。リード脱落のリスクがあるためで、術後早期の可動域訓練では特に注意が必要です。

ペースメーカー植込み術後の肩関節運動で注意すること

ただ、基礎疾患を有しない場合は、競技・レクリエーションスポーツともに中等度の運動は可能であるとされています。

この時の注意点としては、以下の3点が挙げられます。

  • コンタクトスポーツや皮膚を損傷する可能性があるスポーツ(ラグビー、格闘技など)の実施は控えること
  • サッカー、バスケットボール、野球などは適切なプロテクターで保護をすれば可能。
  • 患側の腕を大きく動かすようなスポーツ(テニス、バレーボール、野球)はリード線が安定する術後6週間まで実施を避けること。

つまり、再開についてはROMや運動耐容能、スポーツの種類、運動強度などを踏まえて主治医や理学療法士などの多職種と協議することが重要になってくると考えられます。

ICDの植込み術後の生活制限

ICDにおいても、PMと同様の上肢制限が必要であることが知られています。

これに加えて、ICD植込み患者は、重症不整脈の発生リスクが高いため一般的に競技の実施は推奨されていないことも知られています。

スポーツ実施時の主な注意点としては、以下の3点が挙げられます。

  • PMと同様にコンタクトスポーツの実施を控えること。
  • レクリエーションスポーツに関しても、実施中の安全性について確立された十分なエビデンスがないため中等度以下に控えること。
  • スポーツ実施時に除細動の作動があった場合は、スポーツを中止して心室性不整脈が発生したときから6か月間はスポーツの実施を避けること。

就労に関しても、除細動の作動により危険性が生じるような作業は基本的に禁忌とされています。

ICD患者の就労については一般社団法人 日本不整脈心電学会が指針を示しているためそちらの方をご参照ください。

ペースメーカ,ICD,CRTを受けた患者の社会復帰・就学・就労に関するガイドライン(2013年改訂版)https://plaza.umin.ac.jp/~jscvs/wordpress/wp-content/uploads/2020/06/JCS2013_okumura_h.pdf

PM・ICDのその他生活制限

その他植込み術後の職業制限・制限の注意点については過去のブログ内容を参考にしてください。

【徹底解説】心リハ患者の社会復帰支援|スポーツ・復職の許容基準と指導の実際

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「仕事に戻っていい?」と聞かれたらどう答える?心リハにおける復職・社会復帰の判断基準を徹底解説。METsや作業強度の評価、静的労作の注意点、自動車運転や農業などの具体的指導まで、臨床ですぐ使える実践マニュアルです。
📌 このセクションのまとめ
  • PM:術後6週間は患側上肢を大きく使うスポーツを避ける、コンタクトスポーツは基本NG
  • ICD:上肢制限に加え、競技スポーツは原則非推奨。ショック作動後は6か月間スポーツを中止
  • 再開判断は主治医・PTなど多職種で協議することが前提

よくある質問(FAQ)

Q1. PM・ICD植込み後、心拍数だけを見て運動強度を決めてはいけないのはなぜですか?

A. ペーシング依存の患者やβ遮断薬使用中の患者では、運動時に心拍数が正常に上昇しない「変時性応答不全」が起こりやすいためです。心拍数だけに頼ると運動強度を過小・過大評価してしまうため、Borg指数(自覚的運動強度)を併用することが推奨されます。

Q2. 自転車エルゴメーターでの運動時に注意することはありますか?

A. 加速度センサーを搭載したレートレスポンス機能付きデバイスの場合、エルゴメーターの動きでは心拍応答用のセンサーが反応しにくいことがあります。運動耐容能を正確に評価したい場合は、トレッドミルや歩行負荷を検討しましょう。

Q3. ICDが作動(ショック)した場合、運動はどうすればいいですか?

A. 作動の原因となった心室性不整脈が発生した時点から6か月間はスポーツの実施を避けるのが基本です。再開の判断は必ず主治医に確認してください。

さいごに

ゆ~き
ゆ~き

ここまでご覧いただきありがとうございます。

今回は、PM・ICDの植込み後のリハビリテーションに関する離床基準・運動処方・生活指導まで解説しました。

今日学んだ知識が明日の心臓リハビリテーションに活用できれば幸いです。

ゆ~き
ゆ~き / 理学療法士・心リハ指導士

急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。

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参考文献

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