TAVI後の患者さんに対して、「いつから離床していいのか」「どのくらいの強度で運動させればいいのか」「高齢でフレイルもあるけど大丈夫か」と悩む療法士は少なくありません。 本記事では、早期離床の基準・運動処方(FITT)・フレイル合併患者への配慮・退院指導まで、現場ですぐ使える知識を心リハ指導士がわかりやすく解説します。

前回、TAVIの基礎知識やSAVRとの違いを解説してくれたおかげで、担当患者さんのカルテがだいぶ読めるようになったよ!
ただ、いざリハビリを進めるとなると、どこまで動かしていいのか、運動強度をどう設定すればいいのか、まだ自信が持てなくて…。

基礎知識が身についたなら、あとは実践だね!
TAVIは低侵襲で早期離床しやすい反面、患者さんは高齢でフレイルを合併していることも多いから、そこへの配慮がカギになるよ。今回は【後編】として、離床基準・運動処方・退院指導まで、実践的に解説していくね!

TAVIに対するリハビリの実践編、よろしくお願いします!
- TAVIは低侵襲のため術後翌日からの早期離床が基本
- 離床時は穿刺部・房室ブロック・自覚症状を確認
- 運動処方は心不全に準じ、フレイル合併に配慮する
- 退院後は外来心リハ・再入院予防のための多職種連携が重要
はじめに
前回解説しましたTAVIの基礎知識を前提に、今回はTAVI後のリハビリテーションに関する離床基準・運動処方・退院指導まで解説しようと思います。
👉 前回の記事はこちら:【前編】TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)とは?大動脈弁狭窄症の病態・適応・SAVRとの違いを心リハ指導士が解説

※主に『2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』等を参考に作成しています。
早期離床のタイミングと基準
TAVIは開胸を伴わない低侵襲な治療であるため、SAVR(外科的弁置換術)と比べて早期離床を進めやすいという特徴があります。合併症がなければ、術後翌日から離床を開始できることが多いです。
ただし「低侵襲だから安心」と考えるのではなく、離床を進める際は以下の3点を確認すると整理しやすくなります。

- 穿刺部・創部の状態(経大腿動脈アプローチでは鼠径部の血腫・出血の有無、経心尖アプローチでは創部痛や呼吸への影響)
- 不整脈のコントロール状況(房室ブロックの出現に注意し、心電図モニターを確認する)
- 自覚症状・全身状態(息切れ・胸痛・めまいなどの有無、バイタルサインの安定)
特に前編でも解説したとおり、TAVIでは弁の解剖学的位置の関係から房室ブロックが生じやすく、術後にペースメーカー植え込みが必要になる場合もあります。離床開始後も、心電図モニタリング下で不整脈の出現を確認しながら進めることが大切です。
- TAVIは低侵襲のため術後翌日からの早期離床が基本
- 離床時は「穿刺部・不整脈・自覚症状」の3点を確認
- 房室ブロックの出現に注意し、心電図モニタリング下で進める
運動処方(FITT)
TAVI後の運動療法は、CPXによる評価を実施し、心不全患者における運動療法に準じて行うことが基本となります。
| 項目 | 設定の考え方 |
|---|---|
| F(Frequency:頻度) | 週3〜5回を目安に、 心不全に準じた頻度で設定 |
| I(Intensity:強度) | CPX:AT(嫌気性代謝閾値)レベル 心拍応答が得られない場合:Borg指数(11〜13)を優先 |
| T(Time:時間) | 1回5〜10分程度から開始し、 徐々に20〜30分程度まで延長する |
| T(Type:種類) | 有酸素運動(歩行・エルゴメーターなど) +レジスタンストレーニング |
なお、術後に房室ブロックでペースメーカーが植え込まれた患者さんの場合は、レートレスポンス機能の有無などデバイス設定を踏まえた運動処方が必要になります。詳しくは以下の記事も参考にしてください。
▼ 【後編】PM・ICD植え込み後のリハビリ実践|離床基準・運動処方・生活指導まで

また、心不全に準じたレジスタンストレーニングや有酸素運動の具体的な処方については、以下の記事で詳しく解説しています。
▼ 【後編】心不全リハビリの実践マニュアル|運動療法の禁忌・中止基準からFITT・食事指導まで

- 運動処方は「心不全に準じたFITT」が基本
- 強度設定はCPXのAT、または「Borg指数(11〜13)を活用
- PM植え込み例ではデバイス設定を踏まえた処方が必要
フレイル・サルコペニア合併患者への配慮
TAVIの対象患者は高齢者が中心であり、フレイルやサルコペニアを合併している割合が高いことが大きな特徴です。フレイルはTAVI後の予後にも影響することが知られており、リハビリを進める上で見逃せない要素です。
そのため、TAVI後のリハビリでは、術前からの身体機能評価と、術後の適切な運動負荷設定がとても重要になります。
- 身体機能評価:握力、SPPB(簡易身体機能バッテリー)、歩行速度、6分間歩行距離などで術前後の変化を把握する
- レジスタンストレーニング:低負荷・高頻度から開始し、転倒リスクに配慮しながら下肢筋力を強化する
- 栄養との連携:低栄養はサルコペニアを助長するため、管理栄養士と連携し運動と栄養を両輪で進める
フレイル・サルコペニアの評価方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
▼ 【関連記事】フレイル・サルコペニアの評価と心リハでの運動処方

- TAVI患者はフレイル・サルコペニア合併が多く予後にも影響
- 握力・SPPB・歩行速度などで術前後の機能変化を把握
- P運動と栄養を両輪で進め、転倒リスクに配慮する
退院指導と外来心リハ
TAVIは在院日数が短いため、入院中に十分な運動療法の時間を確保しにくいという課題があります。そのため、退院後の生活指導と外来心リハへの継続が、再入院予防や身体機能維持の観点から非常に重要になります。
退院時に確認・指導したいポイント
- 自宅での活動量の目安(Borg指数を用いた自己モニタリングの指導)
- 心不全症状の再燃サイン(体重増加・息切れ・浮腫など)のセルフチェック方法
- 服薬アドヒアランス(抗血栓薬の継続など、多職種での確認)
- 転倒予防(高齢者が多いため、自宅環境の調整も含めて指導)
外来心リハの意義
外来心リハは、運動耐容能の改善だけでなく、患者さんの状態を定期的にモニタリングし、異変を早期に発見する場としても機能します。特にTAVI後の高齢患者では、退院後にフレイルが進行するリスクもあるため、外来心リハへの参加を積極的に促すことが望まれます。
社会復帰・生活指導の全体像については、以下の記事もあわせてご覧ください。
▼ 【徹底解説】心リハ患者の社会復帰支援|スポーツ・復職の許容基準と指導の実際

- TAVIは在院日数が短く、退院後の継続支援がカギ
- 退院指導では活動量の目安・心不全サイン・転倒予防を確認
- 外来心リハは機能改善と異変の早期発見の場として重要
よくある質問(FAQ)
Q1. TAVI後はいつから離床できますか?
A. TAVIは低侵襲な治療のため、合併症がなければ術後翌日から離床を開始できることが多いです。ただし、穿刺部の出血・房室ブロックの出現・自覚症状の有無を確認しながら、心電図モニタリング下で慎重に進めることが大切です。
Q2. TAVI後の運動強度はどう設定すればいいですか?
A. 心不全患者に準じ、CPXのAT(嫌気性代謝閾値)レベルを基本とします。高齢で心拍応答が得られにくい場合や、術後にペースメーカーが植え込まれた場合は、Borg指数(11〜13)を併用して評価しましょう。
Q3. TAVI患者のリハビリで最も気をつけることは何ですか?
A. 対象患者が高齢でフレイル・サルコペニアを合併していることが多い点です。転倒リスクに配慮しながら、術前からの身体機能評価をもとに、運動と栄養を両輪で進めることが重要になります。
さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回は、TAVI後のリハビリテーションに関する離床基準・運動処方・フレイルへの配慮・退院指導まで解説しました。
要点をまとめると、
- TAVIは低侵襲のため、合併症がなければ術後翌日から早期離床が可能
- 離床時は「穿刺部・房室ブロック・自覚症状」を確認し、心電図モニタリング下で進める
- 運動処方は心不全に準じたFITTを基本とし、フレイル・サルコペニア合併に配慮する
- 在院日数が短いため、退院指導と外来心リハによる継続支援が再入院予防のカギとなる
TAVI患者のリハビリは、「低侵襲だからこそ、高齢・フレイルという背景に目を向ける」ことが何より大切です。今日学んだ知識が、明日の心臓リハビリテーションに活かせれば幸いです。
急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。
CPXや循環器リハビリ、医療×AIに関する情報など、明日からの臨床の疑問を解決するヒントを日々ポストしています。
ブログ『ゆ~きのリハラボ』の最新の更新情報も発信していますので、ぜひフォローして一緒に学びましょう!
参考文献
- 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会.2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.
- 日本循環器学会/日本胸部外科学会. 2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン.
※本記事の数値・基準は記事公開時点の情報です。実際の臨床判断にあたっては、最新のガイドラインおよび主治医・施設の方針を必ずご確認ください。

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