心房細動(Af)の運動療法は「どこまで動かしていいかわからない」と感じやすい領域です。 本記事では、リスク管理・CPXの活用・運動強度の決め方・中止基準・運動療法のエビデンスまで、 現場で使える知識を心リハ指導士がわかりやすく解説します。

前回、心房細動の病態とか合併症について解説してくれたから何に不安を感じていたかなんとかなくわかったよ!
ただ今度は、どれくらいの時間、どの程度の強度で運動すればいいか悩んできたんだよね…。

病態とか合併症についてわかってくれてよかったよ!
心房細動の運動強度の設定ってどうすればいいか迷っちゃうし不安だよね。
なら今回は、心房細動のリハビリと運動療法について心拍数管理・運動強度・中止基準まで解説していくね。
- AFでも運動療法は有効であること
- HRだけで管理しない
- HRでの強度調整だけでなくBorgが重要
- 安静時HR >110/minは注意が必要
はじめに
心房細動(Af, Atrial fibrillation)では、「どこまで動かしていい?」「心拍数はいくつまで?」「動悸があるけど続けていい?」など、臨床で迷う場面が非常に多いと思います。
そこで本記事では、ガイドラインや研究報告を踏まえて、”現場で使えるAFのリスク管理と運動療法”について解説します。
今回も、主に「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」等を参考に作成しました。
なぜAf患者で運動療法が難しいのか?
なぜAf患者では運動療法が難しいと感じてしまうのか。
それは、「運動が悪いから難しい」のではなく、運動処方の基準にしやすい心拍数・症状・運動耐容能が不安定になりやすいから難しいと思います。
通常の心リハでは、運動強度を決めるときに心拍数、心拍予備能、ATレベル、Borgスケールなどを使います。しかし心房細動では、RR間隔が不規則で、心室応答も一拍ごとにばらつくため、心拍数が運動強度を正確に反映しにくいです。
📊 通常の心リハ と AF心リハ の違い
※ 図はゆ~きのリハラボ作成
加えて、AF患者は頻脈だけでなく、徐脈や心拍応答不全も問題になります。β遮断薬やレートコントロール薬が強く効いている場合、運動しても心拍数が十分に上がらず、必要な心拍出量を確保できません。
この場合、患者は「心拍数は安全そうに見える」のに、実際にはだるい、足が重い、息が切れる、運動強度を上げられないという状態になります。
ゆえに、心拍数・症状が不安定で、リスク管理や運動強度の設定・調整が難しいと感じてしまうのだと思っています。
そこで、以上の不安を払しょくするためにリスク管理、心肺運動負荷試験(CPX)、運動強度の決定についてできるだけわかりやすく解説していこうと思います!
Af患者でBorgスケールが重要な理由
AFでは心拍数が運動強度を正確に反映しにくいため、Borgスケール(自覚的運動強度)が強度管理の中心的な指標になります。
目標強度の目安はBorg 11〜13(「楽」〜「ややきつい」)です。心不全を合併している場合や高齢者では11〜12を上限とし、症状を見ながら慎重に調整します。
📋 Borgスケール早見表(AF患者の臨床活用)
Borg GA. Perceived exertion and pain scales. 1998 より作成
「心拍数は安全そうに見えるのに患者がしんどそう」「心拍数が上がらないのに患者は苦しそう」という場面でこそ、Borgスケールが臨床判断を助けてくれます。
Af患者のリスク管理
Af患者に対する運動療法時のリスク管理として重要な点が5点あります。
- 心不全の有無と、心不全の自覚症状と他覚的所見の増悪について評価する
- 運動負荷時のrate/rhythm control、自覚症状の出現・増悪、Peak METsなどから運動療法導入可能か判断する
- CPXによる負荷量の決定
- CPX非実施/AT検出が困難な場合は、Peak VO2を評価して、Borg scaleから運動強度を決定する
- 運動療法導入後に、血圧、心拍数(HR)、自覚症状を見て、不十分であった場合は適宜、負荷強度を見直しする
🔀 AF患者 運動療法開始までの意思決定フロー
→ 低強度から慎重に開始
2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン をもとに作成
心不全を有している場合は、まず心不全コントロールを優先して積極的な運動療法は控えて、実施する場合は低強度から開始します。
心不全の症状や病態の注意点に関しては以前解説した記事がありますのでご参照下さい。
▼ 【後編】心不全リハビリの実践マニュアル|運動療法の禁忌・中止基準からFITT・食事指導まで

その後、心不全コントロールがつき、安静時から心拍数が落ち着いていることを確認出来てから積極的に心臓リハビリテーション(心リハ)を開始していきます。
Af患者の運動負荷試験
心房細動(Af)に対する心肺運動負荷試験(CPX/CPET)は、
「運動耐容能を測る検査」だけでなく、AF患者で問題になりやすい心拍応答、血圧反応、不整脈、心不全徴候、換気効率、運動処方強度を総合的に評価する検査
です。
特にAfでは、前項でも解説した通り、運動中の心拍数が不規則かつ変動しやすく、心拍数だけで運動強度を決めにくいため、CPXでAT、peak VO₂、VE/VCO₂ slope、O₂ pulse、血圧、症状、心電図変化を確認する意義が大きいです。
🔬 AF患者のCPXで特に注目する評価項目
2021年改訂版ガイドラインをもとに作成
2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインでも、Afやペースメーカー患者では、心拍応答や至適プログラム決定、血圧・不整脈・身体活動中の反応、治療効果判定のためにCPXを考慮するとされています。
Af患者の運動処方
リスク管理の観点や運動負荷試験の結果から運動療法を開始・継続しても問題ないことが判断できたら、血圧、HR、自覚症状をみつつ、各目標に応じた運動強度を目指して適宜調整していく。
特に安静時心拍数110/min以下、運動時の最高心拍数150/min以下を指標として、超過する場合は運動を中止、または漸減、もしくは時間短縮を検討した介入プログラムを提供する必要があります。
中止・中断基準
2021年改訂版 心血管疾患リハビリテーションガイドラインをもとに作成
加えて自覚症状や他覚的所見の出現や増悪がみられる場合は、心不全の発症・増悪を考慮します。そして主治医と相談して今後の心リハが継続可能なのか、加療が必要なのか検討することが重要になります。
運動療法の有効性
実は、現時点においてAf患者に対する運動療法を推奨したガイドラインについてまだありませんが、年々、有用性を示すエビデンスは蓄積してきています。
ここでは、そんな運動療法によるAfの効果や方法について解説します。
📚 AF患者に対する運動療法エビデンス まとめ
| 著者・年 | 対象 | 介入 | 🏆 主な結果 |
|---|---|---|---|
| Risom 2016 |
アブレーション後AF 210例 |
有酸素+筋トレ 週3回・12ヶ月 |
peak VO₂ 有意改善 (24.3 vs 20.7 ml/min/kg) |
| Kato 2019 |
持続性AF アブレーション後 31例 |
有酸素+レジスタンス 週3回・6ヶ月 |
6MWT・下肢筋力・EF 改善 |
| Luo 2017 |
AF合併HFrEF 193例 |
監視下+非監視下 計2年 |
運動耐容能・QOL 改善 |
| Mishima 2021 |
メタ解析 約146万人 |
身体活動量と AF発症リスク解析 |
推奨活動量でAFリスク低下 〜1900 MET-min/週まで効果 |
各論文より作成(詳細は本文中の引用を参照)
Risomらは210例のAf患者に対してカテーテルアブレーションを行った後、1か月してから週3回、12か月の筋力トレーニングと有酸素運動を行った介入研究において、運動群で運動耐容能の有意な改善(24.3対20.7ml/min/kg)を認めたと報告しています。
加えて、
Katoらは持続性Afに対してカテーテルアブレーションを行い洞調律に復帰した31症例において、週3回、6か月間の有酸素運動とレジスタンストレーニングの心リハを行ったところ、対照群と比較して6分間歩行試験、下肢筋力、左室駆出率(EF)などの改善が得られたことが報告しています。
そして
Luoらは193例のAfを合併したHFrEF患者に対して、週3回、計36回、有酸素運動とレジスタンストレーニングの監視下運動療法を実施した後、2年間、非監視下運動療法を実施した介入研究において、運動群では運動耐容能やQOLの改善効果が得られたと報告されています。
また、
Mishimaらのメタ解析では、15研究・約146万人を対象に、身体活動量とAF発症リスクを解析していますが、推奨する身体活動量を満たす人は、満たさない人と比べてAF発症リスクが有意に低く、また身体活動量は約1900 MET-min/週まではAFリスク低下と関連していると報告されています。
以上から、“運動療法+運動習慣”はAf管理の重要な柱といえます。
また、一般成人では、
運動不足 → 肥満・高血圧・糖尿病・睡眠時無呼吸・炎症 → 心房リモデリング → AF発症
という流れを防ぐ意味で、運動習慣はAF予防に有利と考えられます。
🔄 運動不足がAf発症につながる悪循環と、運動習慣による予防効果
リスク低下
Mishima RS, et al. Heart Rhythm. 2021 などをもとに作成
さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回は、心房細動のリハビリと運動療法について心拍数管理・運動強度・中止基準まで解説しました。
Afは運動処方の基準にしやすい心拍数・症状・運動耐容能が不安定になりやすいから難しいと感じやすく、どのようにリスク管理を行えばいいかわからないことが多いかと思います。
しかし、リスク管理として重要な点を理解し、心肺運動負荷試験などの客観的で再現性の高い指標を活用して運動療法に応用することで、運動耐容能や自覚症状の改善、ひいてはQOLの改善につながることがわかっていただけたかと思います。
今日学んだ知識が明日の心臓リハビリテーションに活用できれば幸いです。
急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。
CPXや循環器リハビリ、医療×AIに関する情報など、明日からの臨床の疑問を解決するヒントを日々ポストしています。
ブログ『ゆ~きのリハラボ』の最新の更新情報も発信していますので、ぜひフォローして一緒に学びましょう!
参考文献
- 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会.2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.
- Risom SS, et al. Cardiac rehabilitation versus usual care for patients treated with catheter ablation for atrial fibrillation: Results of the randomized CopenHeartRFA trial. Am Heart J. 2016 Nov;181:120-129. doi: 10.1016/j.ahj.2016.08.013. Epub 2016 Aug 31. PMID: 27823683.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27823683/
- Kato M, et al. Exercise-based cardiac rehabilitation for patients with catheter ablation for persistent atrial fibrillation: A randomized controlled clinical trial. Eur J Prev Cardiol. 2019 Dec;26(18):1931-1940. doi: 10.1177/2047487319859974. Epub 2019 Jul 5. PMID: 31272205.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31272205/
- Luo N, et al. Exercise Training in Patients With Chronic Heart Failure and Atrial Fibrillation. J Am Coll Cardiol. 2017 Apr 4;69(13):1683-1691. doi: 10.1016/j.jacc.2017.01.032. PMID: 28359513; PMCID: PMC5380238.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28359513/
- Mishima RS, et al. Self-reported physical activity and atrial fibrillation risk: A systematic review and meta-analysis. Heart Rhythm. 2021 Apr;18(4):520-528. doi: 10.1016/j.hrthm.2020.12.017. Epub 2020 Dec 19. PMID: 33348059.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33348059/

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