心不全の基礎を心リハ指導士が徹底解説します。HFrEF/HFpEFなどの分類、RAAS活性化やリモデリングといった病態メカニズム、AHA/NYHA分類までを網羅。リハビリ職が知っておくべき心不全の全体像をわかりやすくまとめました。

なんか心不全の患者さんって最近すごく多い気がしない?この前の入院患者さんも、心不全で再入院してたよね。

そうだね。高齢化の影響もあって、心不全は「現代の国民病」とも言われてるくらいだしね。しかも再入院率が高いから、リハビリの関わり方が本当に大事になってくるよ。

そうなんだ。でも、心不全って病態が複雑で…。治療とか分類とかもいろいろあるし、正直ちょっと苦手なんだよね。

わかる。でも実は、基本を整理すればそんなに難しくないよ。今回は、心不全の全体像を前編としてまとめてみたから、一緒に復習していこうか。
- 心不全の正確な「定義」と病態
- EF(駆出率)や病態部位による「3つの分類」
- 代償機構の破綻(負のスパイラル)のメカニズム
- 進行度を示すAHAステージとNYHA分類
はじめに
今回は、心リハ指導士の視点から心不全の基礎と治療の全体像を整理し、今後のリハビリの理解につなげていただくことを目的として解説します。
【前編】では心不全の定義や原因、病態の全体像までを整理し、【中編・後編】で具体的な治療やリハビリの実践につなげていきます。
主に「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」等を参考に作成しました。
心不全とは
一言でいうと、「心臓の状態が悪化して、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなる病気」です。
心不全とは、「心臓の構造的または機能的な異常により、うっ血や心内圧上昇、または心拍出量低下や組織低灌流をきたし、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状や運動耐容能低下を伴う臨床症候群」と定義されます。
つまり、ポンプ機能が破綻することで、全身に血液を送れなくなったり(低心拍出)、肺や体に水が溜まったり(うっ血)する状態を指します。
心不全の3分類

心不全は様々な切り口で分類されます。リハビリにおいては特に「EF(駆出率)」による分類が重要です。
左室収縮能(EF)による分類
心臓が「収縮する力」がどれくらい残っているかで分けます。
| 分類名 | EFの基準 | 特徴 |
|---|---|---|
| HFrEF(ヘフレフ) | EF < 40% | 左室駆出率が低下した心不全(収縮不全)。ポンプの押し出す力が弱い状態。 |
| HFmrEF(ミッドレンジ) | 40 ≦ EF < 50% | 左室駆出率が軽度低下した心不全。中間的な状態。 |
| HFpEF(ヘフペフ) | EF ≧ 50% | 左室駆出率が保たれた心不全(拡張不全)。押し出す力はあるが、心臓が硬く広がりにくい状態。 |
※近年は、EFが保たれているのに心不全症状が出る「HFpEF」が急増しており、高齢者に多いのが特徴です。
病態による分類
- 急性心不全: 急激に発症・悪化し、緊急治療が必要な状態。
- 慢性心不全: 状態は安定しているが、心機能低下が続いている状態。
病態部位による分類
- 左心不全: 肺に水が溜まる(呼吸困難など)。
- 右心不全: 全身に水が溜まる(足のむくみ、腹水など)。
- 両心不全: 両方が合併した状態。
心不全のメカニズム
心不全が進行する背景には、体が良かれと思って行う「代償機構の破綻」があります。

心筋梗塞などにより心収縮力が低下し、心拍出量が減少します。その結果、「全身に酸素が行き渡らない(低灌流)」と、「血液が戻れずに渋滞する(うっ血)」という2つの問題が生じます。
血圧を維持するため、体は交感神経やRAAS(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)を活性化させ、「血管を収縮」させ、「水分を体内に留める」という指令を出します。
一時的に血圧は保たれますが、血管が狭くなることで「心臓が血液を送り出す抵抗(後負荷)」が増え、水分が溜まることで「心臓に戻る血液量(前負荷)」が増えすぎてパンクします。
過労状態が続いた心臓は、分厚くなったり(肥大)、薄く伸びきったり(拡大)して形を変え、さらに機能が落ちていきます。
この「負のスパイラル」を薬でブロックし、運動で断ち切るのが、後述する治療や心臓リハビリテーションの役割です。
心不全のステージ分類
心不全は「発作性の疾患」ではなく、慢性的かつ進行性の疾患です。特に症状のない段階でも心筋構造の変化は進行しており、放置すれば悪化していく疾患です。
心不全の病期の進行については、ACC/AHAの心不全ステージ分類が用いられることが多いです。New York Heart Association(NYHA)分類で経過を把握することもあります。
AHA/ACCステージ分類
進行度に応じた分類として、以下のように定義されています。
| ステージ | 病態 |
|---|---|
| A | 心不全の危険因子あり(高血圧、糖尿病など)、構造的異常なし |
| B | 構造的心疾患あり、症状なし |
| C | 構造的心疾患あり、症状あり |
| D | 難治性心不全、入退院を繰り返す |
NYHA分類(自覚症状の程度)
NYHA分類は日常生活における機能制限の程度を基準とした分類であり、AHAステージ分類とは補完的な関係にあります。
| NYHA分類 | 症状の程度 |
|---|---|
| Ⅰ | 身体活動に制限なし |
| Ⅱ | 日常生活で軽度の制限あり |
| Ⅲ | 日常生活に著しい制限がある |
| Ⅳ | 安静時にも症状あり、活動不能 |
心不全の進行は「波状的」です。一時的に改善しても再発・再入院を繰り返すことが多く、退院後の継続的な管理(心リハ含む)が極めて重要です。
心不全の原因疾患
心不全はそれ自体が独立した病気というより、他の病気の結果として引き起こされる「状態」です。主な原因疾患として以下の5つが考えられます。
- 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症、微小循環障害など)
- 高血圧
- 弁膜症(大動脈弁・僧帽弁狭窄症、大動脈弁・僧帽弁閉鎖不全症など)
- 心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症など)
- 不整脈(心房細動、心房頻拍など)
- その他(免疫疾患、妊娠、感染性など)
さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回の【前編】では、心不全の「病態・分類・メカニズム」について整理しました。
心臓が良かれと思ってやっている代償機構が、結果的に自分の首を絞めている(負のスパイラル)という機序を理解することが、リハビリのリスク管理において非常に重要です。
次回【中編】では、実際の臨床で最重要となる『症状の見分け方(うっ血 vs 低灌流)』や、最新の標準治療薬である『ファンタスティック・フォー』について詳しく解説します!
急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。
CPXや循環器リハビリ、医療×AIに関する情報など、明日からの臨床の疑問を解決するヒントを日々ポストしています。
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👉 次回の記事はこちら:【中編】心不全の症状と最新治療|うっ血所見と「ファンタスティックフォー」を心リハ指導士が解説
参考文献
- 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン, 2021.
- 「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版, p104-118, 2022.



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