
なんか心不全の患者さんって最近すごく多い気がしない?この前の入院患者さんも、心不全で再入院してたよね。

そうだね。高齢化の影響もあって、心不全は現代の国民病とも言われてるくらいだしね。しかも再入院率が高いから、リハビリの関わり方が本当に大事になってくるよ。

そうなんだ。でも、心不全って病態が複雑で…。治療や分類とかもいろいろあるし、正直ちょっと苦手なんだよね。

わかる。でも実は、基本を整理すればそんなに難しくないよ。今回は、心不全の全体像を前編としてまとめてみたから、一緒に復習していこうか。
はじめに
今回は、心リハ指導士の視点から心不全の基礎と治療の全体像を整理し、今後のリハビリの理解につなげていただくことを目的として解説したいと思います。前編では心不全の定義や原因、治療の全体像までを整理し、後編でリハビリの実践につなげていきます。
主に「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」等を参考に作成しました。
心不全とは
心不全とは、「心臓の構造的または機能的な異常により、うっ血や心内圧上昇、または心拍出量低下や組織低灌流をきたし、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状や運動耐容能低下を伴う臨床症候群」と定義されます。
わかりやすく表現すると、「心臓の状態が悪化して様々な症状が出現する状態」と言えます。
心不全の全体像に触れたところで今度は心不全の分類などについて説明したいと思います。
心不全の分類
心不全には様々な分類があります。病態による分類や病態部位による分類、左室収縮能による分類があります。左室収縮能の分類には検査施行時の分類以外にも、経時的変化による分類があります。
病態による分類
1.急性心不全 2.慢性心不全の急性増悪 3.慢性心不全
病態部位による分類
1.左室不全 2.両室不全 3.右室不全
左室収縮能(EF)による分類
1.HFrEF(EF<40%) 2.HFmrEF(40≦EF<50%) 3.HFpEF(EF≧50%)
心不全の病態
心不全が進行する病態として、1.交感神経系の亢進、2.レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性化、3.心筋リモデリングのような代償が生じることが知られています。
交感神経系の亢進・RAASの活性化
心拍出量が低下すると、末梢血流が減少して血圧が低下します。これに対して交感神経を亢進させて、末梢血管の収縮と心収縮力の増加することで血圧を上昇しようとする代償機構が作用します。
加えて、心拍出量の低下に伴って腎血流量が低下すると、RAASが活性化されるため全身血管が収縮されます。
ただ、交感神経系の亢進・RAASの活性化が生じると心負荷が増大して心筋酸素摂取量が増加してしまいます。そしてアンギオテンシンⅡがナトリウムと水分の再吸収を行うことで循環血液量が増加を引き起こします。
以上から前負荷・後負荷の増加により左室拡張末期圧が上昇し、これが心筋ストレスを高めることでさらに心筋酸素消費量が増大するという負のスパイラルをもたらしてしまいます。
これが長期的に持続すると循環動態・代償機序が破綻して心不全の発症に至ります。
心筋リモデリング
交感神経系の亢進やRAASの活性などに伴う体液貯留と血管収縮の持続により、左心室拡大と硬化、心室壁のリモデリングが進行し、心機能の低下や心不全の発症を高める結果となることが分かっています。
心不全の経過と進展
心不全は「発作性の疾患」ではなく、慢性的かつ進行性の疾患です。特に症状のない段階でも心筋構造の変化は進行しており、放置すれば悪化していく疾患です。
心不全の病期の進行については、ACC/AHAの心不全ステージ分類が用いられることが多いです。New York Heart Association(NYHA)分類で経過を把握することもあります。
【表:AHA/ACCステージ分類】
進行度に応じた分類として、以下のように定義されています。
| ステージ | 病態 |
|---|---|
| A | 心不全の危険因子あり(高血圧、糖尿病など)、構造的異常なし |
| B | 構造的心疾患あり、症状なし |
| C | 構造的心疾患あり、症状あり |
| D | 難治性心不全、入退院を繰り返す |
【表:NYHA分類】
NYHA分類は日常生活における機能制限の程度を基準とした分類であり、AHAステージ分類とは補完的な関係にあります。
| NYHA分類 | 症状の程度 |
|---|---|
| Ⅰ | 身体活動に制限なし |
| Ⅱ | 日常生活で軽度の制限あり |
| Ⅲ | 日常生活に著しい制限がある |
| Ⅳ | 安静時にも症状あり、活動不能 |
心不全の進行は「波状的」です。一時的に改善しても再発・再入院を繰り返すことが多く、退院後の継続的な管理(心リハ含む)が極めて重要です。
心不全の原因疾患
心不全の原因疾患として、主に以下の5つが考えられます。
- 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症、微小循環障害など)
- 高血圧
- 弁膜症(大動脈弁・僧帽弁狭窄症、大動脈弁・僧帽弁閉鎖不全症など)
- 心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症など)
- 不整脈(心房細動、心房頻拍など)
- その他(免疫疾患、妊娠、感染性など)
心不全には、虚血性心疾患などの心筋の異常による直接的な障害を受けて発症する場合や、高血圧や弁膜症など血行動態の異常により長期間負荷を受けて発症する場合、不整脈により循環動態悪化して発症する場合などがある。
心不全の症状と他覚的所見
心不全には、病態の分類において急性心不全と慢性心不全の2つが存在することを前の項目で説明しました。ここでは、この2つに分類して解説したいと思います。
急性心不全
急性心不全は「症状が急激に悪化し、緊急対応が必要な心不全」の状態を指します。
急性心不全の症状・所見には、1.肺静脈および体静脈のうっ血症状・所見と、2.低心拍出の症状・所見の2つに分類されます。
肺静脈のうっ血症状・所見
- 症状:呼吸困難(頻呼吸)、起坐呼吸、動悸など
- 所見:ピンク状の泡沫状痰、喘鳴(wheeze)、湿性ラ音など
体静脈のうっ血症状
- 症状:右季肋部痛、嘔気、食思不振、腹部膨満、便秘など
- 所見:肝頸静脈逆流、頸静脈怒張、肝腫大など
低心拍出の症状
- 症状:脱力感、易疲労性、記名力低下、集中力低下、睡眠障害など
- 所見:乏尿・無尿、四肢冷感、低血圧、冷汗など
慢性心不全
慢性心不全は「比較的安定期にあるが心機能低下を基盤とする持続的な心不全」と定義されています。
慢性心不全は、長期的に心機能が低下して、断続的に症状・所見がみられる心不全といえます。
慢性心不全の症状・所見は急性心不全と同様に、1.肺静脈および体静脈のうっ血症状・所見と、2.低心拍出の症状・所見の2つに分類されます。詳しい症状・所見については、「急性心不全の項目」をご覧ください。
心不全の診断
心不全を診断する際は、うっ血性心不全の診断基準である「Framinghamの基準」をもとに評価を行うとされています。
このFraminghamの基準は、症状・病態を大項目、小項目に分割して、9つの大項目と7つの小項目、大項目あるいは小項目として判断可能な1つの項目のうち、大項目を2項目、または大項目1つおよび小項目2つに該当した場合、心不全と診断する評価基準となっています。
急性心不全の診断手順としては、急性・慢性心不全の診療ガイドラインによると、自覚症状や他覚的所見を把握してKilip分類や、Nohria Stevenson分類、クリニカルシナリオ(CS)分類、心エコー検査などの検査・評価を行い、重症度評価を行い治療法を選択することが重要であると示しています。
慢性心不全の診断手順では、急性・慢性心不全の診療ガイドラインによると、症状や身体所見、心電図、患者背景などを把握し、慢性心不全が疑われた場合、血中BNP/NT-pro BNPを測定して異常値を示した際は、聴診所見、心エコー検査などを実施して診断を進めていくとされています。
心不全の治療方針・治療内容
心不全に対する治療介入には薬物療法と非薬物療法の2つに分類されます。
薬物療法
HFrEFに対する薬物治療はある程度確立されており、「ファンタスティックフォー(Fantastic Four)」を中心として処方されます。
この「ファンタスティックフォー」とは、予後改善効果が強く科学的根拠のある4種類の基礎薬剤群を指す言葉です。以下の4つの薬剤が該当します。
- β遮断薬(β-blockers)
- アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)またはACE阻害薬・ARB
- ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)
- SGLT2阻害薬
これら4薬はHFrEFにおける心不全死亡・再入院を有意に減少させることが大規模臨床試験で示されています。急性・慢性心不全診療ガイドラインでも推奨クラスⅠと有効性および有用性が強く示されています。
非薬物療法
心不全のおける非薬物療法には、1.ペースメーカー、植込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法(CRT)、2.運動療法、3.手術療法、4.和温療法、5.心臓移植があります。
運動療法は、慢性心不全患者さんの運動機能の改善のみならず生命予後やQOLの改善、入院減少に寄与するため非常に重要な項目となっています。
運動療法については次回以降解説していきますので楽しみにしてください。
さいごに
ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回の前編では、心不全そのものについてわかりやすく解説しました。次回の後編では、実際にどんなリハビリが行われるのか、その効果やポイントについてさらに詳しくご紹介していきます。心不全と向き合うすべての方へ、少しでも安心と前向きな気持ちを届けられる記事になれば幸いです。
参考文献
- 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン, 2021.
- 「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版, p104-118, 2022.


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