【心リハ指導士 試験対策④】CPXデータ解読!ATの判別方法(V-slope法)と9パネル模擬問題

心リハ指導士 試験対策・過去問
この記事の概要

心リハ指導士試験の最難関「CPX(心肺運動負荷試験)」のデータ解読!本記事では、AT(嫌気性代謝閾値)の判別方法(V-slope法・Trend法)から、VE vs VCO2 slopeや酸素脈などの各指標の読み方、Weber分類までを徹底解説。グラフを使ったオリジナル模擬問題(解答・解説付き)で9パネルへの苦手意識を克服しましょう!

ゆ~き
ゆ~き

今回は、心リハ指導士試験の最難関であり、多くの受験生が苦手とする『心肺運動負荷試験(CPX)のデータ解読(9パネルの読み方)』について解説します!ここをマスターすれば、合格はグッと近づきますよ!

スポンサーリンク
✓ 3分でわかる!この記事のポイント
  • AT(嫌気性代謝閾値)のメカニズムと5つの判定基準
  • V-slope法とTrend法によるグラフの読み方
  • 試験に出る!VE vs VCO2 slope等の基準値とWeber分類
  • グラフを使った「オリジナル模擬問題(2問)」

はじめに

この記事はCPX解説の【後編:データ解読編】です。CPXの禁忌やプロトコールなどの基礎知識については、先に【前編】をご覧ください。

👉 前回の記事はこちら:【前編】基礎・実施編へ

今回も引き続き、『2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』と、安達仁先生著の『CPX・運動療法ハンドブック』、公式テキスト『心臓リハビリテーション必携』をベースに、試験に出るポイントを抽出して解説します。

楽天ブックス
¥6,820 (2025/11/24 22:24時点 | 楽天市場調べ)

また他の参考書に手を出すよりも、この「必携」を徹底的に読み込むことが合格への近道です。

試験勉強に必須となるテキスト「心臓リハビリテーション必携」は、Amazon等の一般書店では取り扱われていません。 以下の学会公式サイトからのみ購入可能です。

👉 購入はこちら:日本心臓リハビリテーション学会 図書購入ページ

ATの判別方法

ここが試験の最大の山場です。「なんとなくグラフが折れ曲がっているところ」ではなく、理論でATを決定・判別できるようになりましょう。

嫌気性代謝閾値(AT)とは?

ATは、「有酸素代謝から無酸素代謝(嫌気性代謝)が加わり始める直前の運動強度」のことを指します。

AT(嫌気性代謝閾値)の生理的意義とエネルギー代謝の連関図
  • 運動強度が低いうちは、酸素供給が十分なため「有気的代謝(TCA回路)」のみでATPが産生されます。
  • 運動強度が高くなると有気的代謝だけではATP産生が不十分になり、筋肉内の「解糖系」が亢進し、無気的代謝(嫌気性代謝)が加わります。
  • この時、ピルビン酸の代謝産物として「乳酸」が産生されます。
  • 産生された乳酸は血液中の重炭酸イオン(HCO3-)によって中和(緩衝)され、その結果として過剰なCO2(二酸化炭素)が発生します。

この過剰なCO2を排出しようとして「換気が亢進(Hyperventilation)」するため、呼気ガスのVEやVCO2の挙動からATを判定することができるのです。

主要な5つの判定基準(V-slope法とTrend法)

ガス分析法によるAT決定には、以下のような判定基準が一般的に用いられています。

ATを決定する5つのポイント
  1. VO2に対する VCO2 の上昇点(折れ曲がり点)
  2. VO2に対する VE の上昇点
  3. 運動強度に対する R(ガス交換比) の上昇開始点
  4. VE/VCO2は増加しないが、VE/VO2 が増加(V字の底)する点
  5. PETCO2は増加しないが、PETO2 が増加(V字の底)する点
  • V-slope法: 上記の「1. VO2に対するVCO2の上昇点」のグラフ(Panel 5)を見て判定する方法です。
  • Trend法: 上記の項目を複合的に把握し、各項目の時間経過(トレンド)から総合的にATを判定する方法です。
スポンサーリンク

試験に頻出!その他の重要指標について

9パネルから得られる、疾患の鑑別や重症度評価に使う重要指標を整理します。

酸素摂取量 (VO₂)とPeak VO₂

  • VO₂: 単位時間当たりの酸素消費量で、運動負荷の増加とともに上昇します。
  • Peak VO₂: 運動中に達した最高酸素摂取量で、運動耐容能と心機能の最も重要な指標です。
Class 心不全の重症度 Peak VO2 (mL/kg/min)
A 軽症~正常 > 20
B 軽症~中等症 16 – 20
C 中等症~重症 10 – 16
D 重症 < 10

※心臓移植の適応基準としては、「Peak VO2 14 mL/kg/min以下(β遮断薬服用下では 12 mL/kg/min以下)」が重症例の目安として示されています。

換気効率(VE vs VCO2​slope​)

分時換気量(VE)と二酸化炭素排出量(VCO2)の関係(傾き)を示します。心不全患者さんの「労作時の息切れ感(呼吸困難)」や「予後」を強く反映します。

  • 基準値: 34(または35)以上は「予後不良」とされています(※試験頻出!)。

換気当量(VE/VO2、VE/VCO2)

酸素摂取量や二酸化炭素排出量1mL当たりに必要な分時換気量のことです。

  • VE/VO2: ATのポイントで最低値(V字の底)をとります。
  • minimum VE/VCO2: VE/VCO2の最低値で、28以下が正常とされます。

酸素脈:O2Pulse(VO2/HR)

酸素摂取量を心拍数で割った値で、「運動時の一回拍出量」の指標となります。
正常なら負荷の増加とともに上昇・プラトーになりますが、心不全や虚血(心筋虚血)があると平坦化(フラット)または減少(ノッチ)します。

終末呼気ガス分圧(PETCO2・PETO2)

  • PETCO2: 安静時は36〜42mmHg。運動開始時は指数関数的に増加し、その後プラトーが続きます。PETCO2が低値、または運動中に増加しない場合は、換気血流比不均衡や「心拍出量の低下」を示します。
  • maxETCO2: 運動中に記録されるPETCO2の最大値。

ガス交換比(RER、R)

R = VCO2 / VO2 で表され、運動強度(努力度)の指標です。
Peak VO2が信頼できる値(患者さんがしっかり本気を出した値)かどうかの判断基準として、「運動終了時のRが 1.10以上(できれば1.15以上)」であることが望ましいとされています。

臨床応用:心臓リハビリにおけるATの活用

心リハにおいて運動処方をする際は、「FITT(頻度、強度、時間、種類)」をもとに行います。

運動負荷試験に基づく強度の決定として、「ATレベルでの処方」が強く推奨されています(エビデンスレベルA)。

試験対策ポイント:AT処方のメリット

AT以下の運動強度には以下の特徴があり、医学的安全性が非常に高いことがわかります。

  • 乳酸の持続的上昇がない
  • 進行的な代謝性アシドーシスが起こらない
  • 血中カテコラミンの著明な上昇がない
  • 運動強度の増加に対する心拍応答が保たれている

これにより、不整脈の誘発、著明な頻脈への移行、過度な血圧上昇による循環機能の破綻を未然に防ぐことができます。

模擬問題に挑戦!(全2問)

実際の試験を想定した問題です。「解答と解説を見る」をタップして答え合わせをしましょう!

問題1:ATの判別

図の心肺運動負荷試験において、AT(mL/min)はどこか。最も当てはまるものを選びなさい。


  1. 500 mL/min
  2. 800 mL/min
  3. 1000 mL/min
  4. 1400 mL/min
  5. 1600 mL/min
👉 解答と解説を見る(タップで開閉)
正解:e
【解説】グラフ(Panel 5)のV-slopeにおいて、VO2に対してVCO2が急峻に立ち上がる「折れ曲がり点」のVO2の値を読み取ります。また、Trend法としてVE/VO2が最低値(V字の底)をとるポイントとも一致しているか確認します。
問題2:運動処方の決定

上図の心肺運動負荷試験のグラフにおける「運動処方」に関して、正しいものを選びなさい。

  1. 90 watts
  2. HR 105 bpm
  3. R 1.15
  4. 7.3 METs(体重55kgの場合)
  5. 誤っているものはない
👉 解答と解説を見る(タップで開閉)
正解:a
【解説】運動処方の強度は「ATレベル」で設定します。問題1で求めたATポイントの垂直線上にある各パラメータ(Watts、HRなど)を読み取ります。AT時のWattsが90Wであれば「a」が正解となります。R(ガス交換比)1.15はPeak時の努力度の指標であり、処方強度ではありません。
スポンサーリンク

さいごに

ゆ~き
ゆ~き

最後までご覧いただきありがとうございました。

今回は【後編】として、CPXデータの読み方と運動処方への応用を解説しました。

試験本番では、実際に9パネルのグラフが出題され、『ATはどこか?』『予後不良因子(VE vs VCO2 slopeの異常など)はどれか?』を問われるケースが非常に多いです。

『V-slope法で折れ曲がる場所』や『VE/VO2が上がる場所(底)』など、ATを決めるポイントを、教科書のグラフを何度も見て練習しておきましょう。

今日の学びが、明日の臨床と試験合格への一助になれば幸いです!引き続き一緒に頑張りましょう!

ゆ~き
ゆ~き / 理学療法士・心リハ指導士

急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。

X(旧Twitter)でも最新情報を発信中!

CPXや循環器リハビリ、医療×AIに関する情報など、明日からの臨床の疑問を解決するヒントを日々ポストしています。
ブログ『ゆ~きのリハラボ』の最新の更新情報も発信していますので、ぜひフォローして一緒に学びましょう!

ゆ~きのリハラボ(@rehaheartlab)をフォローする

参考文献

  • 日本心臓リハビリテーション学会(2022).「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版. p197ー214.
  • 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会(2021).「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」.https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.
スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました