
前回は心不全の仕組みがよく分かったよ。でも、実際に患者さんにはどんな症状が出るの?

良い質問だね。心不全の症状は大きく「水が溜まる(うっ血)」と「血液が足りない(低灌流)」の2つに分けられるんだ。今回は、その症状の見分け方と、最新の治療薬について解説するね!
はじめに
今回は、心リハ指導士の視点から心不全の症状や最新治療をわかりやすく実際の治療の流れに沿う形で解説したいと思います。前編では心不全の定義や原因、治療の全体像までを整理し、後編でリハビリの実践につなげていきます。
👉 前回の記事はこちら:【2025年版】心不全の基礎・病態・治療を完全網羅!心リハ指導士が教える全体像と最新治療
主に「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」等を参考に作成しました。
心不全の症状と他覚的所見
心不全には、病態の分類において急性心不全と慢性心不全の2つが存在することを前の項目で説明しました。ここでは、この2つに分類して解説したいと思います。

急性心不全
急性心不全は「症状が急激に悪化し、緊急対応が必要な心不全」の状態を指します。
急性心不全の症状・所見には、以下の「うっ血(水が溜まる)」と「低心拍出(血液が足りない)」の2つに分類されます。
肺うっ血(左心不全)
| 肺静脈のうっ血症状・所見 |
|---|
| ・症状:呼吸困難(頻呼吸)、起坐呼吸、動悸など ・所見:ピンク状の泡沫状痰、喘鳴(wheeze)、湿性ラ音など |
体うっ血(右心不全)
| 体静脈のうっ血症状 |
|---|
| ・症状:右季肋部痛、嘔気、食思不振、腹部膨満、便秘など ・所見:肝頸静脈逆流、頸静脈怒張、肝腫大など |
低心拍出(循環不全)
| 低心拍出の症状 |
|---|
| ・症状:脱力感、易疲労性、記名力低下、集中力低下、睡眠障害など ・所見:乏尿・無尿、四肢冷感、低血圧、冷汗など |
慢性心不全
慢性心不全は「比較的安定期にあるが心機能低下を基盤とする持続的な心不全」と定義されています。
慢性心不全は、長期的に心機能が低下して、断続的に症状・所見がみられる心不全といえます。
慢性心不全の症状・所見は急性心不全と同様に、以下の「うっ血(水が溜まる)」と「低心拍出(血液が足りない)」の2つに分類されます。詳しい症状・所見については、「急性心不全の項目」をご覧ください。
心不全の診断と評価
診断には「Framingham基準」などが用いられますが、臨床では以下を組み合わせて総合的に判断します。
- 自覚症状・身体所見: 上記のうっ血・低灌流所見の有無。
- 血液検査: BNP / NT-proBNP(心臓の負担を表す数値)の上昇。
- 画像検査: 胸部X線(心拡大・肺うっ血)、心エコー検査(EFや弁の評価)。
心不全の治療方針・治療内容
心不全に対する治療介入には薬物療法と非薬物療法の2つに分類されます。

薬物療法
治療の基本は、心臓の負担を減らし「長生き(予後改善)」を目指すことです。
特にHFrEF(収縮不全)に対しては、以下の「ファンタスティックフォー(Fantastic Four)」と呼ばれる4剤併用療法が標準となっています。
| 心不全治療の4本柱 |
|---|
| 1.β遮断薬(β-blockers) |
| 2.アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI), ACE阻害薬・ARB |
| 3.ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA) |
| 4.SGLT2阻害薬 |
これら4薬はHFrEFにおける心不全死亡・再入院を有意に減少させることが大規模臨床試験で示されています。急性・慢性心不全診療ガイドラインでも推奨クラスⅠと有効性および有用性が強く示されています。
非薬物療法
心不全のおける非薬物療法には、以下の治療内容があります。
- ペースメーカー、植込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法(CRT)
- 運動療法
- 手術療法
- 和温療法
- 心臓移植
運動療法は、慢性心不全患者さんの運動機能の改善のみならず生命予後やQOLの改善、入院減少に寄与するため非常に重要な項目となっています。
運動療法については次回以降解説していきますので楽しみにしてください。
さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は、心不全の「症状」と「治療」について解説しました。
「うっ血」と「低灌流」のサインを見逃さないこと、そして「ファンタスティックフォー」などの薬が心臓を守っていることを理解しておきましょう。
次回の【後編】では、いよいよ私たちセラピストの出番である「心不全のリハビリテーション(運動療法・生活指導)」について、実践的な内容を解説していきます。
今日の学びが、明日の臨床の一助になれば幸いです。
👉 次回の記事はこちら:【保存版】心不全リハビリの運動療法ガイド|禁忌から実践、注意点まで解説
参考文献
- 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン, 2021.
- 「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版, p104-118, 2022.


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