
後輩や患者さんから『いざ、心リハって何をするんですか?』って聞かれると、うまく説明できなくて困るんだよな~。

そうだよね!『ただ自転車を漕ぐだけじゃない』ってことは分かっていても、言葉にするのは難しいよね。
今回は、明日からの臨床ですぐに役立つ『心臓リハビリテーションの全体像と基礎知識』について、簡単に分かりやすく解説していくよ!ぜひ参考にしてください!
- 心臓リハビリテーションの正式な「定義」
- ディコンディショニング是正など「3つの大きな目的」
- 運動療法だけじゃない「構成要素(教育・心理)」
- 急性期から維持期までの「時期的区分(Phase)」
心臓リハビリテーションの定義
心臓リハビリテーション(以下、心リハ)の定義に関しては、様々な文献や関連協会のホームページにて解説されています。
まずは、ベースとなる米国公衆衛生局の定義を見てみましょう。
「医学的な評価、運動処方、冠危険因子の是正、教育およびカウンセリングからなる長期的で包括的なプログラムである。これらのプログラムは、心臓病のもたらす生理学的および心理学的影響を抑制し、突然死や再梗塞のリスクを軽減し、心疾患に伴う症状をコントロールし、動脈硬化の過程を安定または退縮させ、対象とされる患者に対して心理社会的、職業的状態を高めるように計画されたものである。」
Wenger NK, et al. Cardiac Rehabilitation. Clinical Practice Guideline No. 17. 1995より引用
他にも、日本心臓リハビリテーション学会のホームページにて、一般の方向けに以下のように分かりやすく解説されています。
心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)とは、心臓病の患者さんが、体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することをめざしておこなう総合的活動プログラムのことです。内容として、運動療法と学習活動・生活指導・相談(カウンセリング)などを含みます。
日本心臓リハビリテーション学会. (2025). 「心臓病の基礎知識 – 心臓リハビリって何? Q.1 –」より引用

つまり心リハとは、単に体を動かすことだけではなく、『運動療法、生活指導、栄養・食事療法、禁煙指導、服薬指導、精神的サポート』などの包括的な介入により、最終的に患者さん自身が自己管理できるようになり、社会復帰していく過程そのものであることがわかります。
心臓リハビリテーションの目的
心リハの主な目的として、以下の3つが挙げられます。。
- 身体的および精神的ディコンディショニングの是正と早期社会復帰
- 冠危険因子の是正と二次予防
- QOLの向上
それぞれについて、詳しく解説していきます。
身体的・精神的ディコンディショニングの是正と早期社会復帰
心血管疾患を有する患者において、冠動脈疾患では運動誘発性心筋虚血、慢性心不全では心機能低下に伴う循環障害によりディコンディショニングが生じることが知られています。
加えて安静臥床が続くことで身体活動性の低下がみられ、よりディコンディショニングが進行することも報告されています。

心リハではこのディコンディショニングに対して有酸素運動などの運動療法などを行うことで早期介入に伴い虚血症状の軽減、心機能低下・身体機能の改善をもたらします。結果としてディコンディショニングが是正され、早期社会復帰につなげることが心リハの目的の一つとなります。
冠危険因子の是正と二次予防
心リハの実施は、冠危険因子(リスクファクター)の是正と、病気の再発を防ぐ二次予防に大きく寄与します。

冠危険因子とは、虚血性心疾患の要因となりうる「高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴、高コレステロール血症」などを指します。 血圧水準、血清総コレステロール値、喫煙本数は心筋梗塞の死亡率と正の相関を示すこと、そして「それらリスクが複数集積することで、循環器疾患での死亡の相対リスクがさらに跳ね上がる」ことがデータで示されています。
そのため、運動や生活指導を通して冠危険因子を是正し、冠動脈疾患の再発予防および心不全発症の予防をすることが極めて重要になります。
QOLの向上
運動療法を中心とした心リハは、身体機能の改善に伴い、患者さんのQOL(生活の質)を改善することも重要です。
「動くのが怖い」といった精神的ディコンディショニングの改善のためにも、運動療法のみならず、病気への理解を深める「教育」や、不安を取り除く「カウンセリング」を含めた包括的な心リハを提供することが求められます。
心臓リハビリテーションの構成要素
心リハは、主に以下の3つの要素で構成されています。
運動療法
運動療法は心リハの中核となる役割を担っており、画像に示すような様々な身体的な効果(運動耐容能の向上、冠動脈の血流改善、骨格筋の代謝改善など)をもたらすと言われています。

ただし、疾患、病態、身体機能、合併症の有無、重症度などは患者さん一人ひとりで大きく異なります。そのため、必ず事前の身体機能評価および運動負荷試験(CPXなど)を行い、それに基づいた個別のプログラム作成や「安全な運動処方」を行うことが何よりも重要です。
患者教育
ここでいう患者教育とは、栄養・食事指導、禁煙指導、服薬指導などを含めた包括的な意味合いを持ちます。

こうした患者教育と運動療法を併用することで、運動療法単独で行うよりも、血圧、脂質代謝、耐糖能の改善、喫煙率の減少などに大きな効果をもたらすと言われています。
加えて、体重・血圧管理を含む冠危険因子に対する患者指導は、各種ガイドラインにおいても【推奨クラスⅠ】・【エビデンスレベルA】と最も高く評価されており、臨床現場で積極的に実施すべき内容であるといえます。
カウンセリング
心疾患に「抑うつ状態」や「不安」などが合併すると、死亡率や心血管イベントの発生率などを上昇させるなど、心疾患患者の心理学的問題は独立した危険因子であることが知られています。
そのため、認知行動療法などを用いて生活習慣を是正するような行動変容をもたらす技法や、専門的なカウンセリング技法を組み合わせたメンタル面へのアプローチがとられることが多いです。
いつから始める?心臓リハビリテーションの時期的区分
心リハの時期的区分として、病期に合わせて以下の4つの段階(Phase)に分けられています。

急性期は、入院から基本動作およびBADL(基本的日常生活動作)が可能になるまでの期間を指します。イメージとしては、リハビリ室に移動して集団心リハを開始するまでの期間(ICUやCCUでの早期離床期間)といった方が分かりやすいかもしれません。
回復期は離床から社会復帰までの期間を指し、退院までが「前期」、退院後が「後期」に分かれます。
前期回復期は、退院に向けて予後リスクの評価や運動耐容能(CPXなど)の評価に基づき、患者教育、生活指導、運動療法を行います。社会復帰・復職に向けた個別的な目標を患者さんと共有し、一緒に取り組む重要な準備期間となります。
退院後の社会復帰・復職に向けて、外来リハビリなどで前期回復期に引き続き運動療法と二次予防のための生活管理を強化・継続していく期間です。個々のライフスタイルや職場の環境に応じて、目標や運動内容を適宜調整していくことが重要となります。
生涯にわたって快適な生活を維持し、再発を予防するために取り組む時期です。急性期および回復期で身につけた運動療法、生活指導をもとに、自己管理で健康を維持(生涯習慣化)していく期間です。
地域によっては、NPO法人などが運営する施設(メディカルフィットネスなど)で継続的な支援を行っているところもあります。
さいごに


ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回は、心臓リハビリテーションの概要について解説しました。
心リハは、各病期(急性期~維持期)に応じて目的や介入方法が変化し、それに伴ってリスク管理やプログラム作成、運動療法の強度が違ってくるということを理解していただけたら嬉しいです。
『心リハの概要』が掴めたら、次は『心リハの具体的な有効性やエビデンス』について学んでいきましょう。別の記事で詳しく解説しますね!
参考文献
- 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン, 2021.https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf
- Okayama A, Kadowaki T, Okamura T, Hayakawa T, Ueshima H; NIPPON DATA80 Research Group. Age-specific effects of systolic and diastolic blood pressures on mortality due to cardiovascular diseases among Japanese men (NIPPON DATA80). J Hypertens. 2006 Mar;24(3):459-62. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16467648/
- Okamura T, Tanaka H, Miyamatsu N, Hayakawa T, Kadowaki T, Kita Y, Nakamura Y, Okayama A, Ueshima H; NIPPON DATA80 Research Group. The relationship between serum total cholesterol and all-cause or cause-specific mortality in a 17.3-year study of a Japanese cohort. Atherosclerosis. 2007 Jan;190(1):216-23. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16529754/
- Nakamura Y, Yamamoto T, Okamura T, Kadowaki T, Hayakawa T, Kita Y, Saitoh S, Okayama A, Ueshima H; NIPPON DATA 80 Research Group. Combined cardiovascular risk factors and outcome: NIPPON DATA80, 1980-1994. Circ J. 2006 Aug;70(8):960-4.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16864925/
- Taylor RS, et al. Exercise-based rehabilitation for patients with coronary heart disease: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Med. 2004 May 15;116(10):682-92. doi: 10.1016/j.amjmed.2004.01.009.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15121495/
- Oldridge NB, Guyatt GH, Fischer ME, Rimm AA. Cardiac rehabilitation after myocardial infarction. Combined experience of randomized clinical trials. JAMA. 1988 Aug 19;260(7):945-50.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3398199/


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