【保存版】これで安心 — 心リハ指導士が教える急性心筋梗塞(AMI)のリハビリテーション

心リハ
ゆ~き
ゆ~き

急性心筋梗塞の心リハのポイントについて入院から退院後を含めて解説したいと思います!

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はじめに

急性心筋梗塞(AMI)後の心臓リハビリテーション(心リハ)は、患者の生命予後を決定づける最重要治療プロセスです。しかし、LVEF(左室駆出率)や運動誘発性虚血のリスクを抱えるAMI患者に対し、「安全かつ効果的な運動処方」を決定することは、医療従事者にとって最も高い専門性が求められる壁となります。

本記事は、日本心臓リハビリテーション学会などの最新ガイドラインに基づき、曖昧な知識や「経験と勘」を排した実践的なアルゴリズムを提供していきます。AMI患者を「低リスク」と「高リスク」に層別化する基準から、一人ひとりに適した運動強度(RPE・HRR)の設定、そして運動中に直ちに中止すべき基準に至るまで、臨床ですぐに使える手順を徹底解説します。

心臓リハビリ専門職を目指す学生も、現場で安全管理に悩む現役従事者も、「AMI心リハにおける運動処方と実践の決定版」として、自信を持って治療を推進するためにご活用ください。

急性心筋梗塞の診断・初期対応

定義と病態生理

心筋梗塞(myocardial infarction:MI)とは、冠動脈粥腫の破綻とそれに伴う血栓の急速な形成により冠動脈の閉塞が生じ心筋が壊死に至る病態です。

急性に起こる場合急性心筋梗塞といいます。

急性期の検査の流れ

AMIは、臨床的所見と心電図変化、血液検査の異常値を認めた場合に診断します。

急性期の診断・治療の進め方の違いからST上昇型心筋梗塞(STEMI)非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に分類されます。不安定狭心症(UA)とAMIは梗塞の有無、臨床的には多くの場合は心筋バイオマーカーの上昇の有無によって区別されます。

UAとNSTEMIは初診時は区別できない場合が多く、両者を合わせて非上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)としてあらわされる時があります。

血液検査では、クレアチンキナーゼ(CK)、クレアチンキナーゼMB分画(CK-MB)などの心筋逸脱酵素や心筋構造蛋白が測定されるが、心筋トロポニンが健常人の99%値を超える一過性の上昇・下降を示すことをもって心筋梗塞と診断するとされてます。

治療概要と合併症への注意

治療概要

一般的治療として、①酸素吸入、②ニトログリセリンの舌下投与、③鎮痛剤の投与、④アスピリンの咀嚼服用、⑤再灌流療法などが挙げられます。

再灌流療法には①経皮的冠動脈インターベンション(PCI)②血栓溶解療法(組織プラスミノーゲンアクチベーター:tPA静脈投与)があります。

発症12時間以内で心電図上、ST上昇を認める場合は、速やかに冠動脈造影検査(CAG)を行い、適用があればPCIを施行します。PCIには、①POBA(percutaneous old ballon angioplasty)②冠動脈ステント留置術(CS)があります。

よくみられる合併症と対象法

これら合併症は心筋壊死の程度や部位によってみられます。特に機械的合併症は発症後2~3日以内に発症しやすいため、バイタルサインや自覚症状を観察しながらこれら合併症に注意して心臓リハビリを行っていきます。

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心臓リハビリテーションの展開とステージ分類

AMIの心リハの時期別区分はリスク管理や治療内容によって4つの病期に分類されます。

リハビリの段階(急性期・回復期早期・回復期後期・維持期)

急性期

約12~24時間以内の絶対安静と臥床状態を経て、合併症の予防、早期発見を行いつつ、deconditioningを起こさないことが重要であるとされています。

急性期では、集中治療室(ICU)から心リハを開始するが、安全かつ迅速に離床してBADL自立や病棟内歩行まで拡大させていくことを目標に進めていきます。

国立循環器病センターでは、Killip分類とCK最高値に応じて急性心筋梗塞症14日間クリニカルパスを利用して心リハを行っています。

前期回復期

病棟内歩行から退院までの時期であり、左室機能や心不全の有無、心筋虚血の有無、予後リスクの評価、運動耐容能の評価をもとに運動療法や禁煙指導・服薬管理・食事療法などの患者教育・生活指導を行い、社会復帰・復職に向けたプロセスの設定やプログラムの作成などを行います。

基本的に心筋虚血がなく200m歩行可能となれば持久力トレーニングに移行することが推奨されています。

2017年のESCのSTEMIガイドラインによると、「外来心臓リハビリテーションを行うこと」は「推奨レベルA」かつ「エビデンスレベルⅠ」であり、後期回復期から維持期に向けて外来心臓リハビリを勧めることが重要となってます。

後期回復期

退院から社会復帰・復職までの時期であり、外来心リハの中で運動療法や教育・生活指導などの二次予防を行っていきます。早期回復期よりも心リハを強化して継続を促します。この時期は運動耐容能の改善が最も期待できる時期とされているため維持期に向けて継続が必要となってきます。

維持期

社会復帰・復職後から生涯にわたって行われる時期となります。

回復期で行われてきた運動療法と二次予防は引き続き継続が必要になってきます。場所によっては、地域のスポーツジムとの提携、NPO法人への参加を通じて心リハを実施しているところもあります。

エビデンス:AMI後の心リハ効果

運動療法運動耐容の改善、生活の質の向上(QOL)、および死亡率と罹病率の低下に大きく貢献することが、さまざまな研究結果から支持されています。

加えてPCI後に運動療法を行った症例では、6~12ヶ月の短期間で全原因入院を大幅に減少させ、入院率が有意に低かったことが示されています。

そして同様にPCI後に運動療法を行った症例では、QOLを有意に向上させ、再狭窄率自体は変わらないものの心血管イベント発生率と再入院率を著しく低下させることが示されています。

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心リハにおける運動処方・実践ポイント

運動処方の基本(FITT原則)

運動療法は、FITTまたはFITT-VPといった考えに基づいて処方されます。

F(frequency)は頻度I(intensty)は強度T(Type)は種類T(Time)は時間を意味します。またV(volume)は運動量P(progress)は漸増もしくは改訂を意味します。通常、FITTまたはFITT-VPの項目に当てはめて調整をしていきます。

次にFITTに基づいて運動負荷がどう決定されていくかを以下にまとめていきます。

具体的なプログラム例

持久力トレーニング

強度においてCPXを実施している患者には、AT-1分前のワット数を指標することもあるかと思いますが、ガイドライン上では、心拍数またはRPEを指標すべきとされていますね。実臨床でも、CPXを実施していない場合は、心肺予備能から推定したHRやKarvonen法によるtarget HRを指標し、CPXを実施している場合は、AT-1分前のワット数も参考にしますが最終的にはATHRで負荷量を調整することが多いです。

レジスタンストレーニング

レジスタンストレーニングの運動の種類に関しては、ウエイトマシンやダンベルを使用できない高齢者の場合は、ゴムチューブを使用することで比較的安全に行うことができます。頻度は毎日行わず、日を空けて行うことが望ましいとされています。

安全管理・禁忌・注意点

対象となる症例が心リハの絶対・相対禁忌に該当するか否かを確認・判断して、該当しない場合は、心リハを開始していくこととなります。

運動療法に関しては、【運動療法のリスク分類】がありますので、クラスB・Cに該当する患者は適応となります。運動療法を行い場合は、主治医と相談のもと安全性が担保される方法を用いて個別的にプログラムを選択して実施する必要があります。

心リハの強度や進行のステップアップには、【急性心筋梗塞患者に対する心臓リハビリテーションのステージアップの判定基準】をもとに調整します。判定基準に該当する場合は、負荷強度が強く運動耐容能が追い付いていないことを意味しますので、負荷強度を落とすことも検討します。該当しない場合は、主治医と相談して早期に次の段階に移行する場合もあります。

【急性心筋梗塞患者に対する心臓リハビリテーションのステージアップの判定基準】
1.胸痛、呼吸困難、動悸などの自覚症状が出現しないこと
2.心拍数≧120bpmにならないこと、または≧40bpm増加しないこと
3.危険な不整脈が出現しないこと
4.心電図上1mm以上の虚血性ST低下、または著明なST上昇がないこと
5.室内トイレ使用時までは収縮期血圧≧20mmHg、≦20mmHgとならないこと(ただし2週間以上経過した場合は血圧に関する基準は設けない)

合併症・リスク管理に対しての対応

通常、心室性期外収縮(PAC)や心房性期外収縮(PVC)が散発性にみられる場合は経過観察で良いですが、増加する場合は心室頻拍(VT)心房細動(Af)に移行する恐れがあるため運動療法の中断・休憩を検討すべきです。運動開始前から新規の心室頻拍(VT)心房細動(Af)がみられる場合は、運動療法は実施すべきでないとされています。

また運動療法中に心室頻拍MobizⅡ型以上の房室ブロック心房粗動(AF)心房細動が新たに生じた場合は、運動療法を中断する必要があります。そして心室細動(VF)心停止(Asystole)無脈性電気活動(PEA)がみられた場合は直ちに救命活動を開始することが重要です。

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さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。

今回は急性心筋梗塞発症から診断・治療・合併症管理を経て、心リハの理論と運動処方のポイントを、指導士・理学療法士の視点から整理しました。

私たちが担うべきは「単に歩行を再開させる」ことではなく、「心臓・血管・筋骨格・生活習慣・心理・社会参加を包括的に捉え、回帰・予後へつなげる支援」です。急性期から維持期までの流れを理解し、運動処方を個別化しつつ、多職種連携と継続可能な体制構築を意識することが、再発予防・生命予後改善に直結します。

この内容が明日の心リハに活用出来たら幸いです。

参考文献

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