
虚血性心疾患の二次予防はたくさんあって何をすればいいかわからないですよね。今回はそんな二次予防についてまるっと解説しようと思います!
はじめに

虚血性心疾患の心臓リハビリテーション(心リハ)において重要な目的が2つあります。それは「症状の軽減・除去によるQOLの改善」と「心事故発生の予防による長期予後の改善」です。
虚血性心疾患の患者さんは、発症の原因となる「冠危険因子(リスクファクター)」を複数有していることが少なくありません。そのため、再発(新規病変の出現)を防ぐためには、これらの冠危険因子を徹底的に管理・改善する「二次予防」が極めて重要になってきます。
今回は、再発予防や生命予後改善のために必須となる「二次予防」について、心リハ指導士であるゆ~きがまるっと解説していきたいと思います。
ちなみに本投稿は、主に「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」等を参考に作成しました。
二次予防を行うタイミング
虚血性心疾患の心リハは、以下の3つの時期的区分に分かれています。
①急性期、②回復期(前期回復期、後期回復期)、③維持期
「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」において、本格的な二次予防の開始時期は「後期回復期以降」とされています。これは急性期・前期回復期は入院中の治療期間であり、まずは退院・家庭復帰への身体機能回復が優先されるためです。
退院後の生活が始まってからこそ、本当の意味での二次予防(生活習慣の修正)がスタートします。
冠危険因子について
冠危険因子には「内因的・遺伝的なもの(年齢、性別、家族歴など)」と「外因的なもの(生活習慣など)」があります。 心リハの主な対象は、努力によって改善可能な「外因的な冠危険因子」です。
- 肥満
- 高血圧
- 脂質異常症
- 糖尿病・耐糖能異常
- 喫煙
- 運動不足
- 飲酒
- 精神的負担(ストレス)
- 腎不全の既往など
二次予防の種類・内容
ここからは、具体的にどのような目標値で管理し、どのような指導を行えばいいのか深堀りしていきます。
血圧管理
通常は「診察室血圧<140/90mmHg」「家庭血圧<135/85mmHg」とされています。 しかし、心筋梗塞・腎不全の既往や糖尿病、脂質異常症、喫煙などの危険因子が複数ある患者さんでは、より厳格な管理が求められます。
- 75歳未満(高リスク): 診察室血圧<130/80mmHg、家庭血圧<125/75mmHg
- 75歳以上(高リスク): 診察室血圧<140/90mmHg、家庭血圧<135/85mmHg
また、起床時の血圧が高い(モーニングサージ)と脳心血管疾患の発症リスクが高まることが知られています。睡眠時無呼吸症候群(SAS)がある場合は、交感神経系が活性化されて血圧が上昇しやすいとされています。 そのため、血圧は「起床時」と「就寝前」に測定・記録するよう指導し、変動を確認することが重要です。
脂質管理
脂質異常症を合併した冠動脈疾患患者さんに対し心リハを行うことで、各種コレステロール値が改善することが示されています。
- LDLコレステロール(悪玉):
- 通常目標:<100mg/dL
- 冠動脈疾患の既往あり(二次予防):<70mg/dL
- (※さらにリスクが高い場合は<55mg/dLを目指す場合もあります)
- HDLコレステロール(善玉): ≧40mg/dL
- トリグリセリド(TG): <150mg/dL
- non-HDLコレステロール:
- 通常目標:<130mg/dL
- 冠動脈疾患の既往あり:<100mg/dL
血糖管理
血糖管理では、HbA1c<7.0%を目標として管理します。
心リハ(運動療法)は、空腹時血糖の改善やインスリン抵抗性の改善をもたらすことが報告されています。
禁煙指導
喫煙は、循環器疾患の最大のリスク因子の一つです。受動喫煙も有害であるため、患者本人だけでなく家族や職場に対しても理解を求める必要があります。
我々セラピストも、喫煙者に対しては禁煙のメリットを説明し、必要に応じて禁煙外来を勧めるなど、多職種と連携して支援を行います。
体重管理(肥満・メタボリックシンドローム)
目標BMI: 18.5~24.9 kg/m²
肥満患者の場合: 3~6ヶ月間で現体重の3%以上の減量を目指します。
食事指導
適切な食事は二次予防の要です。以下の栄養素について指導を行います。
蛋白質
1日標準体重当たり1.0~1.5g(総エネルギーの15~20%)を目安にします。
脂肪の多い肉を控え、大豆製品や魚を選択することを推奨します。
脂質
- 飽和脂肪酸: 総エネルギーの4.5~7%未満に抑える(肉の脂身、乳脂肪などを避ける)。
- ω-3系不飽和脂肪酸: 積極的に摂取する(えごま油、アマニ油、青魚のDHA/EPAなど)。
- トランス脂肪酸: 避ける(マーガリン、ショートニングを使った菓子類など)。
- コレステロール: 1日200mg未満に抑える(卵、レバーなどを控える)。
炭水化物
総エネルギーの50~60%に調整します。
食物繊維を増やし、精製された砂糖を避けるため、主食は玄米、雑穀、全粒粉パンなどを選び、野菜・海藻・きのこ類を毎食取り入れます。
塩分
目標:1日6g未満
減塩で食欲が落ちないよう、だし(昆布・かつお)、酸味(酢・柑橘類)、香辛料(カレー粉・胡椒)、香味野菜(生姜・ネギ)などを活用して味にメリハリをつける工夫を指導します。
アルコール
目標:純アルコール換算で1日20~25g以下
【目安量】
- ビール:500ml以下
- 日本酒:1合(180ml)以下
- ワイン:グラス1杯(120ml)以下
※計算式:飲酒量(ml) × アルコール度数(%) × 0.8(比重) ≒ 純アルコール量(g) (例:度数5%のビールの場合、25g ÷ (0.05 × 0.8) = 625ml が上限の目安となります)
運動療法
虚血性心疾患の二次予防における運動療法については以前解説した記事をご参照ください。
外来通院期間(約2~5ヶ月)は監視下で安全に行い、最終的には維持期に向けて「自分一人でも適切な運動ができる(自己管理)」状態を目指して指導を行います。
その他
その他には、精神サポートや患者教育、地域連携などがあります。
うつや不安は心疾患の予後を悪化させることが知られています。 必要に応じて、循環器医、心療内科医、臨床心理士などと連携し、認知行動療法やカウンセリング、薬物療法などの精神的サポートを提供します。
さいごに
最後までご覧いただきありがとうございます。
本稿では、虚血性心疾患の患者さまに対し、症状改善だけでなく「長期的な再発予防(二次予防)」の視点から、血圧・脂質・血糖・食事・運動など包括的なマネジメントの重要性を解説しました。
退院後の生活こそが、心臓を守るための本番です。 この記事が、皆さまの臨床実践におけるガイドとなり、患者さん一人ひとりが豊かな日常を取り戻し、維持していく一助となれば幸いです。
二次予防の指導に自信がない方へ
今回解説した「血圧・脂質・食事・運動」の管理目標は多岐にわたるため、全て暗記するのは大変です。 私が普段、患者さんへの指導内容に迷った時や、最新の基準を確認したい時に使っているのがこちらの本です。
資格取得も目指せて一石二鳥
虚血性心疾患の管理は、イコール心不全予防です。この本はコメディカル向けに分かりやすくまとまっているので、指導の虎の巻として使えます。
白衣のポケットにこの一冊
患者さんに質問されて「えっと…」と言葉に詰まりたくないなら、これを持っておくと安心です。数値目標がパッと出せます。
参考文献
- 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン, 2021.
- 「-指導士資格認定試験準拠- 心臓リハビリテーション必携」増補改訂版, pp168-177, 321-334, 2022.
- 高血圧治療ガイドライン2019, 2019.
- Gang wu et al:The Effect of Cardiac Rehabilitation on Lipid Levels in Patients with Coronary Heart Disease. A Systematic Review and Meta-Analysis, 2022.
- 樋口 進, 他:健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル, 2003.



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