
心肺運動負荷試験(CPX)の結果をもとに運動療法を実施しているんだけど、軽症で若くて元気な患者さんだからすごい軽そうに漕ぐんだよね。負荷を増やす上で良い方法はあるかな?

確かに、従来のMICT(中等度持続的トレーニング)を続けても良いけど、軽症で若くて元気な患者さんには『HIIT(ヒット、高強度インターバルトレーニング)』もお勧めだよ。

HIITって心リハでも使えるの?概要や、具体的な運動療法の内容について教えてほしいな!

了解!それじゃあ今回は、心リハ指導士の視点からHIITの概要、具体的な運動療法(FITT)、そして必須となるリスク管理について解説していくね。
はじめに
今回は、HIIT(ヒット、高強度インターバルトレーニング)について、その定義や具体的な運動療法のFITT、有効性、リスク管理について解説していきます。
HIITとは?
皆さんはHIIT(ヒット)と聞いて、どのような運動をイメージしますか?フィットネス業界では有名ですが、心臓リハビリテーションの分野ではまだ聞きなじみがない方もいるかもしれません。
HIIT(高強度インターバルトレーニング:High-Intensity Interval Training)とは、短い時間の非常に強度の高い運動と、休息または低強度の運動(回復期)を交互に繰り返すトレーニング方法です。

高強度運動の基準
数分間(3〜4分)持続することもあれば、10秒〜30秒未満の非常に短い時間で行われることもあり、設定する強度によって異なります。
CPXから、最高酸素摂取量(Peak VO2)や最高心拍数(HRpeak/HRmax)の80〜100%(多くは85〜95%程度)に達する高い負荷、あるいは嫌気性代謝閾値(AT)以上の負荷で行われることが一般的です。
自覚的運動強度(Borg scale)において「きつい」から「かなりきつい」(Borg scale15以上)と感じるレベルに設定されます
低強度運動(休息)の基準
高強度運動の合間には、数分間の完全な休息、あるいは低強度での身体活動(アクティブリカバリー)を挟みます。
アクティブリカバリーの場合、Peak VO2の45%未満や最高心拍数の80%未満といった低い強度で行われることが多いです。
MICTとの決定的な違い
従来から心血管疾患のリハビリテーション等で推奨されてきた「中強度持続トレーニング(MICT:一定の中等度負荷を持続する運動)」と比較して、HIITは短時間で完了するという時間効率の良さが大きな特徴です。
適応となる患者層
HIITの適応となる疾患には、HFrEF、HFpEF、冠動脈疾患など多岐にわたります。加えて、以下の項目に該当する方が主な適応となります。
- 症状が落ち着いていて小康状態である方
- 年齢が比較的若い方
- 心血管疾患の発症・増悪リスクが低い方
- 身体機能が高い、または入院前もしくは病前に定期的に身体強度が高い運動を行っていた方

それぞれの疾患の特徴をとらえて、それに対するリスク管理を行うことが重要になってきます。
代表的なプロトコル
臨床研究で最も一般的に用いられているのが、ノルウェーなどで開発された「スカンジナビアンプロトコル(4×4モデル)」です。
- 高強度運動: 4分間 目標強度:HRpeak/HRmaxの85〜95%
- 回復期: 3分間 目標強度:HRpeak/HRmaxでのアクティブリカバリー
- セット数: これを交互に4セット繰り返します
心肺機能や心臓のリモデリング改善に対して非常に高い効果が示されていますが、身体への負担が大きいため、特に高齢の患者や体力のない患者にとっては目標強度を4分間維持することが難しく、息切れが生じやすいという課題も指摘されています。
冠動脈疾患におけるHIITの一例
CAD患者において最も効果的なHIITの条件は、「週2回以上(できれば3回以上)」、「1回35分以上」、「12週間以上(総セッション数36回以上)」 の継続的な実施です。
強度は高強度(PeakHR 85-95%)と動的休息(PeakVO2 40%以上)を組み合わせ、総トレーニング量を確保することが重要になってきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| F(頻度) | 週3~4回、8~12週間(またはそれ以上) |
| I(強度) | 【メイン】 目標心拍数PeakHRの85~95% 【リカバリー】 PeakVO2の40~60% |
| T(時間) | 【ウォーミングアップ】 5~10分 【メイン】 3~4分間の高強度運動×4~6セット 【リカバリー】 2~3分間の低強度運動×セット間 【クールダウン】 5分 |
| T(種類) | トレッドミル、自転車エルゴメーターなど |
心不全におけるHIITの一例
心不全患者におけるHIITの至適条件は、「週3回以上」の頻度で、「1回35分以上」のセッションを「12週間以上」継続することです。特にHFrEF患者ではLVEFの改善も期待できますが、患者の状態(BMIや年齢、病型)に応じた個別の調整と、SpO2や自覚症状の慎重なモニタリングが重要になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| F(頻度) | 週3回、12週間 |
| I(強度) | 【メイン】 目標心拍数PeakHRの80~90% 【リカバリー】 PeakVO2の40%以下 |
| T(時間) | 【ウォーミングアップ】 10分 【メイン】 2~4分間の高強度運動×4~5セット 【リカバリー】 2~3分間の低強度運動×セット間 【クールダウン】 5~10分 |
| T(種類) | トレッドミル、自転車エルゴメーターなど |
安全性とリスク管理
結論から言うと、HIITは適切な評価のもとで行えば安全性の高い運動療法とされています。
ある大規模なシステマティックレビュー(17,083回のHIITセッション、合計11,333時間を分析)において、HIITに関連した重大な心血管イベントはわずか1件でした。つまり、重大なイベントの発生率は約17,000セッションに1回という非常に低い確率です。

ただし、この安全性を担保するためには、開始前に「症候限界性心肺運動負荷試験(CPX)」による評価が必須です。以下の基準を満たすか必ず確認しましょう。
- 運動時に重篤な不整脈の出現がないこと
- 不整脈の増加により自覚症状および他覚的所見の悪化がないこと
- 負荷量の増加に伴う著しい血圧上昇、または血圧低下がないこと
- SpO2<90%の低下がみられないこと
- 息切れや胸痛、動悸などの自覚症状の出現および増強がみられないこと
運動中に以上の項目を満たした患者様に対して提供することで、非常に高い安全性を維持しながらHIITを実施することができます。
※CPX(心肺運動負荷試験)の基本的な見方や、AT(嫌気性代謝閾値)の評価方法についておさらいしたい方は、ぜひこちらの記事も参考にしてください。
▼CPXの概要・禁忌、実施プロトコールなどの入門はこちら
▼AT(嫌気性代謝閾値)の詳しい決定方法はこちら
さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回は、HIITの概要から具体的な運動療法、リスク管理について解説しました。
HIITは非常に安全性が高く、有効性が十分に示された運動療法です。ただ、その安全性や有効性を担保するためには、必ずCPXを行い、有害事象がなく身体機能が高いことが確認されたうえで提供することが大前提になります。
今回の記事が明日の臨床の糧となれば幸いです。
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参考文献
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- Costache, A.D et al. High-Intensity Interval Training vs. Medium-Intensity Continuous Training in Cardiac Rehabilitation Programs: A Narrative Review. Medicina 2024, 60, 1875.https://www.mdpi.com/3043658
- Yue T et al. Effects of High-Intensity Interval vs. Moderate-Intensity Continuous Training on Cardiac Rehabilitation in Patients With Cardiovascular Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Cardiovasc Med. 2022 Feb 23;9:845225.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35282360/
- Wu Y, et al. Optimal doses of high-intensity interval training in patients with coronary artery disease and heart failure: a systematic review and meta-analysis. Front Cardiovasc Med. 2026 Jan 2;12:1698310.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12829331/
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- Wewege MA, et al. High-Intensity Interval Training for Patients With Cardiovascular Disease-Is It Safe? A Systematic Review. J Am Heart Assoc. 2018 Nov 6;7(21):e009305.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30376749/




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