【保存版】これで安心！急性心筋梗塞のリハビリは怖くない｜内容と進め方をやさしく解説

はじめに

急性心筋梗塞って何？どうしてリハビリが必要なの？

急性心筋梗塞はどんな病気か

心筋梗塞（しんきんこうそく）とは、心臓に酸素や栄養を届ける「冠動脈（かんどうみゃく）」という血管が、突然つまってしまう病気です。この詰まりは、血管の内側にできた「かさぶた（血栓）」が原因です。

血管がふさがれると、その先にある心臓の筋肉（心筋）に血液が届かなくなり、筋肉の一部が壊れてしまう（壊死：えし）ことがあります。

このように突然起こるタイプを「急性心筋梗塞」と呼び、命にかかわることもあるため、早期の対応がとても大切です。

治療後の体はどうなっている？

心臓の働きや体力が低下しており、合併症や再発リスクも残っています。

合併症には、不整脈や心臓の壁が破れる（心破裂）、弁や筋肉の障害などがあります。

これらの合併症は、心筋梗塞が起きたあと2～3日以内に起こりやすいといわれています。そのため、この期間は無理に体を動かさず、医療スタッフの判断に従って慎重に体を動かす（離床）ことがとても大切です。

リハビリの目的

再発を防ぎ、日常生活の不安や制限を減らすため、運動だけでなく、食事・薬・生活習慣を整える総合的なプログラムを実施します。

リハビリの流れ：無理のないステップで進めよう

入院中のリハビリ

心筋梗塞を起こした直後は、まず半日から1日ほどしっかり体を休める必要があります。その間に、合併症（他の症状）が起きていないかをチェックしつつ、長く寝たきりになることで体力が落ちないように注意します。

この時期は、集中治療室（ICU）に入っていることが多いですが、安全を確認しながら、できるだけ早くベッドから起きて動き始めることが大切です。目標は、日常生活で必要な動き（着替えやトイレなど）や、病室の中を歩けるようになることです。

たとえば、国立循環器病センターでは、症状の重さに応じて2週間のリハビリプランを立てて、少しずつ日常の生活に戻れるようサポートしています。

退院後の外来リハビリ

ここでは、患者さんの心臓の状態や体力、再発の危険度などをチェックしながら、

• 運動の内容
• 禁煙や食事、薬の使い方
• 生活のアドバイス

などを一人ひとりに合わせて指導していきます。仕事や家庭に復帰できるように、生活の目標を一緒に考える時期でもあります。

目安としては、心臓に負担がない状態で200mほど歩けるようになったら、体力アップを目的とした運動に進むことがすすめられています。

また、どれくらいの運動が体にちょうどよいかを詳しく調べる検査（心肺運動負荷試験：CPX）を行うことで、無理のない運動メニューを組むことができます。

さらに、欧州のガイドラインでも、退院後の外来でのリハビリは強くすすめられている方法です。これは効果も科学的に証明されていて、退院後のリハビリを続けることで再発の予防や生活の質の向上が期待できます。

自宅での継続

仕事や家庭生活に戻ってからも、心臓の健康を守るためにリハビリで学んだことをこれからの生活に取り入れて続けていくことが必要です。

この時期には、

• 家の近くでできる運動（ウォーキングや体操など）
• 食事の工夫や薬の管理
• 定期的な病院受診や体のチェック

などを、自分の生活に合わせて無理なく続けていきます。

最近では、地域のスポーツジムと連携していたり、心臓病の患者さんを支える団体（NPO）に参加したりして、仲間と一緒に運動を楽しめる場所も増えています。続けることで、心臓への負担を減らし、安心して暮らしていけるサポートにつながります。

どんな内容をするの？ポイントをかんたんに

有酸素運動のやり方（ウォーキングや自転車こぎなど）

• どのくらいの頻度で？
  　週に3〜5回くらいが理想です。
• どのくらいの強さで？
  　少し息が上がるけれど、おしゃべりできるくらいの強さが目安です。
  　運動中に「ちょっとキツいけど頑張れる」と感じるくらいがちょうどいいです。
• どのくらいの時間やる？
  　最初は1回10分未満でもOKです。慣れてきたら少しずつ時間を延ばして、最終的に1回20〜60分を目指しましょう。
• どんな運動をするの？
  　ウォーキングやエアロバイク（自転車こぎ）が代表的です。日常生活の延長でできる動きが取り入れやすいです。

筋トレのやり方（体を支える筋肉を鍛える運動）

• どのくらいの頻度で？
  　週に2～3回、1日おきくらいが理想です。
• どのくらいの強さで？
  　軽めの重さで、「少しキツいな」と感じる程度を目安にします。無理なく、続けられる強さで行いましょう。
• どのくらいの回数や時間やる？
  　大きな筋肉（脚・胸・背中など）を中心に、8〜10種類の運動を1回につき8～12回ずつ行います。1～3セット、全部で30～45分を目安に、セットの合間にはしっかり休憩を取りましょう。
• どんな運動をするの？
  　自分の体重を使った運動（スクワットなど）や、マシン・ゴムチューブ・軽いダンベルを使った運動がおすすめです。自宅でも簡単にできる運動もたくさんあります。

その他リハビリ

ストレッチと呼吸法：筋肉をほぐしてケガを防ぎ、リラックス効果もあります。

生活習慣のアドバイス：食事の工夫、禁煙、飲酒を控えるなど、再発予防に欠かせないポイントを伝えます。

心のケア：心臓病後は不安や落ち込みが起こりやすいため、スタッフや同じ境遇の人と話して気持ちを共有することも大切です。

リハビリで得られるメリット

リハビリで得られるメリットは身体機能の改善以外にも気分が改善したり心臓の状態が良くなったりとさまざまあります。以下に、主に得られるメリットを挙げてみたのでご参照ください。

• 心臓の血流が良くなったり血管が固くなるのを防いだり血管の働きが良くなったりする
• 体力が戻り、疲れにくくなる
• 再発のリスクが下がる
• 血圧やコレステロール値の管理がしやすくなる
• 自律神経の働きが良くなる
• 気持ちが前向きになり、生活の質が上がる
• 家族や仕事への復帰がスムーズになる

さいごに

ここまでご覧いただきありがとうございます。

心臓リハビリは、病気を経験した方が、また普通の生活を楽しむためのサポートです。運動が苦手でも構まわないです。あなたのペースで少しずつ進めば、必ず変化を感じられると思います。不安なことはいつでもスタッフに相談してください。一緒に一歩ずつ前に進んでいきましょう！

参考文献

• 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン, 2021.