【後編】閉塞性動脈硬化症(ASO)のリハビリと禁忌|運動処方(FITT)とフットケア

閉塞性動脈硬化症(ASO)のリハビリと禁忌|運動処方(FITT)とフットケア 心リハ・臨床実践
この記事の概要

閉塞性動脈硬化症(ASO)のリハビリを担当する理学療法士・医療スタッフへ。本記事(後編)では、Fontaine分類に基づく運動療法の適応と禁忌、FITT原則を用いた具体的な運動処方(トレッドミル・歩行訓練のプロトコール)、そしてフットケア・禁煙指導・生活指導の11項目について、心リハ指導士が分かりやすく解説します。

こ~だい
こ~だい

前回の解説でASOの重症度とか治療内容とかわかってよかったよ!ただいざリハビリテーションするってなった時に何を指標にすればいいのかわからないだよね..💦

ゆ~き
ゆ~き

確かに何に注意してどれを指標にどのように負荷量を漸増していけばいいのかわかりにくいよね。

なら今回は、ASOの「運動に関する禁忌」「具体的な運動処方(FITT)」「生活指導と運動制限の目安」について解説していくね!

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✓ 3分でわかる!この記事のポイント
  • 重症度に基づくリハビリの適応と局所的な禁忌
  • 暗記必須!運動療法におけるFITTとは?
  • 具体的な運動プログラムの流れについて
  • 生活指導と運動制限の11個の目安

はじめに

前回までに閉塞性動脈硬化症(ASO)の症状や重症度分類(Fontaine分類)、診断、重症度別の治療内容について体系的に解説しました。

👉 前回の記事はこちら:【前編】閉塞性動脈硬化症の症状・治療・重症度分類を心リハ指導士が徹底解説!

【前編】閉塞性動脈硬化症の症状・治療・重症度分類を心リハ指導士が徹底解説!
「歩くとふくらはぎが痛くなる…」それは閉塞性動脈硬化症(ASO)のサインかもしれません。本記事では、心リハ指導士がASOの症状と重症度を示す「Fontaine(フォンテイン)分類」から、ABI検査の見方、重症度別の治療内容、危険因子(LDLや血圧)の管理目標値までを分かりやすく解説します(前編)

今回は、ASOの運動療法とリスク管理について解説しようと思います。

※主に『2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン』等を参考に作成しています。

重症度に基づくリハビリの適応と禁忌

この疾患は全身の動脈硬化の部分症であり、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントリスクが非常に高いため、包括的なリスクファクターの管理が必須です。

重症度に基づく適応と禁忌のスクリーニング

Fontaine分類Ⅰ〜Ⅱは運動療法が推奨されていますが、Fontaine分類Ⅲ〜Ⅳは慎重な適応が推奨されます。

さらにFontaine分類Ⅳのうち、CLI(重症下肢虚血)や感染を合併した場合、急性動脈閉塞、不安定狭心症、非代償性心不全などを合併している場合は、運動療法が禁忌となります。

全身の合併症に関する絶対的禁忌

下肢に局所的な禁忌のみならず全身の合併症に関する絶対的な禁忌もあります。これは心疾患全体的に共通した項目でもあります。

絶対的禁忌(※絶対に運動を行わない)
  1. 過去3日以内における自覚症状の増悪
  2. 不安定狭心症または閾値の低い心筋虚血(2METs以下)
  3. 手術適応のある重症弁膜症(症候性大動脈弁狭窄症など)
  4. 重症の左室流出路狭窄
  5. コントロール不良の不整脈(心室細動,持続性心室頻拍)
  6. 活動性の心筋炎,心膜炎,心内膜炎
  7. 急性全身性疾患または発熱
  8. 運動療法が禁忌となるその他の疾患(急性大動脈解離,中等度以上の大動脈瘤,重症高血圧,血栓性静脈炎,2週間以内の塞栓症,重篤な他臓器障害など)

※加えてESC working groupの絶対的禁忌には、コントロール不良の糖尿病や新たに発症した心房細動などが含まれます。

ASOの運動処方(FITT)とプログラム

Fontaine分類Ⅰ〜Ⅱ度の軽症〜中等症ASOでは、運動療法と薬物療法が推奨されます。特に、監視下でのトレッドミル歩行(運動療法)は、推奨クラスA、かつエビデンスレベルⅠと強く推奨されています。

⚠️ 注意点: ASO患者の約半数は冠動脈疾患(狭心症など)を合併していると言われています。必ず事前に心肺運動負荷試験(CPX)等を行い、心電図や血圧をモニタリングしながら安全に実施してください。

項目 内容・目安
F(頻度) 週2~3回(できれば週3~6日)
I(強度) 傾斜12%,速度2.4 km/hから開始。
Borg指数 15~17(きつい~かなりきつい)まで歩く。
※CPXが可能なら「ATレベル」も考慮。
T(時間) 1回の歩行は3~5分。休憩を挟みながら、トータル30~60分程度。
T(種類) トレッドミル歩行(推奨)、トラック歩行、水中歩行など

具体的な運動プログラムの流れ(虚血プレコンディショニング)

ASOの歩行訓練の最大の特徴は、「あえて痛くなるまで歩き、休んでまた歩く」を繰り返す点にあります。これを繰り返すことで側副血行路(新しい細い血管)が発達し、歩行距離が延びていきます。

推奨される運動プログラム:有酸素運動
トレッドミル歩行訓練のステップ
  1. 【準備】 ウォーミングアップとして、ストレッチングを10分間実施する。
  2. 【歩行】 傾斜12%,速度2.4 km/hから開始。3~5分歩き、「かなりつらい」程度(Borg指数15~17)の下肢疼痛(跛行)が出現するまで歩き続ける。
  3. 【休憩】 痛みが完全に消失するまで休憩(1~5分程度)をとる。
  4. 【反復】 再び2の歩行を実施する。これを繰り返し、初回はトータル30分程度行う。
  5. 【漸増】 トレーニングごとに時間を5分ずつ延長し、最大60分までとする。
  6. 【終了】 クールダウン(整理体操)を行い終了する。

※歩行訓練が最も有用ですが、サイクリング、アームエルゴメーター、レジスタンストレーニングも補助的に有用と言われています。

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足を守る!生活指導とフットケア

ASO患者さんにとって、小さな足の傷が「潰瘍」や「壊死」に繋がり、最悪の場合「下肢切断」に至る可能性があります。日々のセルフケアが極めて重要です。

ASOの自己管理とケア

フットケア(足の自己管理)5原則

フットケアの5原則
① 毎日の観察

毎日靴下を脱ぎ、乾燥、ひび割れ、タコ、靴擦れ、変色がないか確認します。見えにくい場合は鏡を使うか家族に見てもらいます。

② 清潔と保湿

毎日足を洗い、しっかり乾燥させます。乾燥を防ぐための保湿と、深爪しない適切な爪のケアを行います。

③ 足の保護(裸足厳禁)

絶対に裸足で歩かないこと。また、感覚が鈍っていることがあるため、湯たんぽやヒーターの直接使用(低温火傷)を避けます。

④ 適切な靴の着用

足に合ったサイズの靴と清潔な靴下を着用します。潰瘍リスクが高い場合は、治療用サンダルや専用フットウェアを使用します。

⑤ 局所の運動

立位での踵上げ(ヒールリフト)、足首のポンプ運動、足の裏でテニスボールを転がすなどの血流改善運動を指導します。

全身の生活指導(禁煙と習慣化)と運動指導

全身の生活指導と運動習慣の定着

ASOの進行を防ぎ、心不全などの合併症を予防するために、日々の生活習慣の改善が不可欠です。

  • 完全禁煙の徹底
    喫煙はASOの最大の危険因子であり、禁煙は下肢切断リスクや死亡リスクを直接的に低下させます。受動喫煙も避け、必要であれば禁煙外来(パッチや内服薬など)の利用を強く勧めます。
  • 運動の記録と習慣化
    医療機関での監督下運動療法が難しい場合でも、歩数計や運動日誌を活用して毎日の歩数を記録します。「痛くても歩き、休んでまた歩く」を習慣化させることが重要です。
  • セルフモニタリング
    体重測定、家庭血圧の測定、自己検脈(脈拍の確認)を習慣づけ、合併しやすい心不全や不整脈の兆候を早期に発見できるようにします。
  • 食事と水分管理
    塩分制限(1日6g未満が基本)と、過度のアルコール・加工食品の制限を行います。重症心不全を合併している場合は、適切な水分制限も指導します。
  • 入浴と睡眠
    入浴は40〜41℃の適温で、10分程度にとどめます。心血管イベントの引き金となる高温のサウナは危険なため避けるよう指導します。また、十分な睡眠をとることも大切です。

最後に

ゆ~き
ゆ~き

ここまでご覧いただきありがとうございます。

今回は、閉塞性動脈硬化症(ASO)の運動療法の進め方と、絶対に忘れてはいけない生活指導(フットケア)について解説しました。

ASOのリハビリは、『痛みを我慢して歩く』という患者さんにとって辛いプログラムになります。だからこそ、私たちセラピストが『なぜ痛くなるまで歩く必要があるのか(血管を育てるため)』をしっかり説明し、モチベーションを維持できるように伴走することが大切です。

日々のフットケア指導も含め、多職種で連携して患者さんの『足』と『命』を守っていきましょう!

ゆ~き
ゆ~き / 理学療法士・心リハ指導士

急性期病院に勤務する現役理学療法士(臨床経験6年)。心臓リハビリテーション指導士の資格を活かし、若手セラピストが「明日からすぐ使える」実践的な知識を分かりやすく発信中!データ分析や医療AIにも関心があります。

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参考文献

  • 日本循環器学会 / 日本血管外科学会合同ガイドライン 2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン JCS/JSVS 2022 Guideline on the Management of Peripheral Arterial Disease.
  • 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会(2021).「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」.https://www.jacr.jp/cms/wp-content/uploads/2015/04/JCS2021_Makita2.pdf.
  • Harwood AE, et al. Exercise training for intermittent claudication: a narrative review and summary of guidelines for practitioners. BMJ Open Sport Exerc Med. 2020;6(1):e000897.
  • Treat-Jacobson D, et al. American Heart Association Council on Peripheral Vascular Disease; Council on Quality of Care and Outcomes Research; and Council on Cardiovascular and Stroke Nursing. Optimal Exercise Programs for Patients With Peripheral Artery Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2019;139(4):e10-e33.
  • McDermott MM. Exercise Rehabilitation for Peripheral Artery Disease: A REVIEW. J Cardiopulm Rehabil Prev. 2018;38(2):63-69. doi:10.1097/HCR.0000000000000343
  • Gornik HL, et al. 2024 ACC/AHA/AACVPR/APMA/ABC/SCAI/SVM/SVN/SVS/SIR/VESS Guideline for the Management of Lower Extremity Peripheral Artery Disease: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines. Circulation. 2024;149(24):e1313-e1410. doi:10.1161/CIR.0000000000001251 Erratum in: Circulation. 2025;151(14):e918.
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